うんこ大王とおしっこ王子(大王街に行く編)(6)
六 うどん竜の出現
その頃、お腹の中では、
「王子。うどんが流れてきました」
「出汁も一緒です」
「よし、固体班はうどんを粉々にしろ。リキッド班は出汁を吸収しろ」
「アイアイサー」一同が元気よく答える。大王に変わって、王子が消化活動の指揮をしていた。固体班はスコップやツルハシを持ち、リキッド班はホースを持って、うどんに向かっていった。
「それ」固体班の隊員が流れてきたうどんを消化しやすいように切り刻もうとした瞬間、横腹に何かが当たって来た。
「ひゃあ」隊員たちは壁に叩きつけられた。
「折角、こうして長いまま流れてきたんだ。お前らに切り刻まれてたまるか」
うどんが立ち上がっていた。異変を感じた王子が駆けつけた。
「おまえは誰だ」目の前の巨大なうどんに挑む。
「俺か。俺はうどん竜だ。久しぶりに竜になれたんだ。お前らに切り刻まれてたまるもんか。少し暴れさせてもらうぞ」うどん竜は尻尾(?)を思い切り振った。
「わーああ」隊員たちがなぎ倒されていく。
「負けるものか」固体班の隊員がノコギリを持って、うどん竜の体に刃を当てた。ゴリゴリ。うどん竜の体は傷つかずに、ノコギリの歯だけがちびた。
「はっはっはっはっ。どうだ、俺の体は。普通のうどんとは違うぞ。コシが違うだろう。全身が筋肉化しているんだ」
うどん竜が自慢そうに高笑いをする。
「どすこい。どすこい」うどん竜が相撲取りのようにシコを踏む。その振動で、王子たちは全員地面?にひっくり返った。
「なんとしても、消化するんだ」
王子たちは立ち上がると、一斉にうどん竜に飛び掛かる。
「俺を消化できるのか」
うどん竜が体をくねらせる。鞭のような動きだ。
「わー」その体に当たって、王子をはじめ、隊員たちは次々と跳ね飛ばされた。
「まだまだだ」今度はうどん竜が回転しだした。風が巻き起こる。竜巻だ。
「みんな。伏せろ」王子が叫んだ。だが、隊員たちの多くは壁にまで吹き飛ばされた。王子たちも風の勢いが強くて、立ち上がれない。とてもじゃないが、うどん竜には近づけそうにない。
「何だか、おかしいなあ」僕はお腹を触る。
「どうかしたか」大王が尋ねてきた。
「ううん。大丈夫だよ」僕は無理やり笑顔を作った。
「そうか」大王はじっと僕の体の様子を伺った。
「どうだこれでも俺を消化できるのか」
回転を止めたうどん竜が勝ち誇ったように胸を張る。
「王子。どうしましょうか」
固体班の隊長とリキッド班の隊長が這いずりながら王子の下に来た。
「うーん」寝転んだまま腕を組んで唸るしかない王子。
「大王に助けを求めましょう」
「だけど、大王は外の世界だよ。どうやって連絡するんだ」
「主がトイレに行けば、私たちが外の世界に行って、大王と話をすることができます」
「主が上手い具合にトイレに行くかなあ」
「トイレに行くように仕向けましょう」
「どうやって」
「こうです」
固体班とリキッド班の隊員たちは、シャベルやツルハシ、ホースを持って、お腹の壁を叩き始めた。
「うわはっはっはっは。俺にかなわなくて、とうとう自分の体を傷つけ始めたのか」うどん竜が高笑いをしだした。
うんこ大王とおしっこ王子(大王街に行く編)(6)