お餅を食べた数

三題話

お題
「数える」
「七輪」
「もらう」

　ばあちゃが白くて長いものをお皿に乗せてやってきた。それはお皿の上で渦巻き状になっている。
「それじゃあ焼こうかねぇ」
「ばあちゃ、これを焼くの？」
「そうそう。お餅だよ、お餅」
　熱い炭が入った七輪の網の上に、細長い餅を手でちぎって乗せてゆく。
「ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ――」
　ほどかれてゆく渦巻き。にょろにょろとなる様子がヘビのようにも見えた。
　ちぎった餅を八個乗せたところで網の上はいっぱいになってしまった。
　細長い餅は半分以下になったが、まだ渦を巻いて残っている。
　じりじりと焼ける音がする。
　ばあちゃは時々餅をひっくり返して、全体に焼き色を付けてゆく。
「ほら、お食べ」
　熱々のお餅が、砂糖が混ざったきな粉の上に乗せられる。箸で転がすときな粉色に染まった。
　僕の大好きな、甘くておいしいきな粉餅。
　ぱくりと一口で食べる。
「はふ、おいしい」
　冷たい麦茶ののど越しも爽快。
「まだあるからもっとお食べ」
　ばあちゃは焼けたお餅を次々ときな粉の上に乗せ、ころころと転がして甘い衣をまとわせてゆく。
「ばあちゃも食べなよ。焼き立てが一番おいしいんだからさ」
「それじゃあたしも一つもらうとしようかねぇ」
　僕は一口で、ばあちゃは二口で食べる。
「次は僕が焼くよ」
　空いた網の上に、お餅をちぎって乗せてゆく。
「いち、に、さん、し……っと」
　今回でお餅は全部。網の上にはまだ隙間がある。
　じりじりと焼いてゆく様が、なんだか面白い。
「あれ、これはばあちゃのだよ」
　まだきな粉の上にお餅が一個残っている。
「半分ずっこで、僕はもう食べたから」
「いいから。あんたが食べなさいな」
「う、うん。ありがとう」
　そうこうしているうちに焼き色が付いたお餅を網の上から下ろして、たっぷりときな粉をまとわせる。
　ぱくぱく。もぐもぐ。
　ぱくぱく。もぐもぐ。
　そしてまた一つ残ったきな粉餅。
「さっき僕が多く食べたから、これはばあちゃのね」
「そんなこと気にしなくていいから。あんたがお食べ」
「でもこれで僕は八個目だよ？」
「あたしゃもう五個も食べたから満足だ」
　最終的に、僕が八個目となるお餅を食べたのだった。