チョコレートサンデーとフライドポテト

 双子がいる。
 男の子と女の子の、双子である。
 ファミリーレストランの窓際、四人掛けの席に二人はいる。男の子の方はチョコレートサンデーを食べていて、女の子の方はフライドポテトを食べている。男の子の方は髪が短くて、女の子の方は髪が長いのだが、男の子の方はスカートを穿いていて、女の子の方はズボンを穿いているので、男の子の方がほんとうに男の子で、女の子の方がほんとうに女の子なのか、疑わしく思えてくる。男の子の方が実は女の子かもしれないし、女の子の方が実は男の子かもしれない。
 ぼくはきょうもまかないでオムライスを食べた。陰でオムライス星人と呼ばれていることを、ぼくは知っている。アルバイトの女の子たちに。
 双子の男の子と思われる方が、女の子と思われる方が食べているフライドポテトに手をのばす。女の子と思われる方は男の子と思われる方をにらみつけ、あとすこしでフライドポテトに届きそうな白い手をぴしゃっと叩いた。女の子と思われる方の手も白かったが、白さでは男の子と思われる方が勝っていた。しかし爪は、女の子と思われる方が長く、ぴかぴかもしていた。ファミリーレストランは煩わしくない程度のにぎわいが続いている。木曜の午後、二時三十分。
 忙しくもなく、暇でもない。
 オムライスを食べたあと、とは、何故、こうも、目がまわるのか。
 ぼくだけに見える現象であるようだが、たとえば店内にいるはずのない雪虫がひゅんひゅん飛び回っていたり、ひとりでうどんを食べているおばあさんの背後に人影を見たり、する。背後は壁であるというのに。
 三番テーブルの呼び出し音が鳴る。
 双子のテーブルである。
 ぼくのことをオムライス星人と陰で呼んでいる女の子のひとりが、ぼくに目配せをする。行けよ、と。女の子は面倒くさそうに白玉ぜんざいの白玉を、ぽとぽと器に盛っている。厨房から、ステーキの焼ける匂いが漂ってくる。果たして今焼いているステーキは誰かの昼食なのか、それとも夕食なのか。双子のテーブルに向かう途中、小人とすれちがった。小人は三人で、誰かが落としたチェリーの茎を三人で担いで歩いていた。赤と、黄と、緑の帽子をそれぞれ被っていたが、彼らにも名前があるのだろうか。小人の名前。一郎、二郎、三郎とかだったらおもしろいのになァと思いながら、双子のテーブルの傍らに立った。
「お待たせしました」
「「注文をお願いします」」
 双子だ、と、ぼくは改めて思った。
 ぼくから見て左にいるのが男の子と思われる方で、右にいるのが女の子と思われる方だが、重なった声色から性別は判然としなかった。
「チョコレートサンデーひとつ」と、女の子と思われる方が言う。
「フライドポテトひとつ、バーベキューソースで」と、男の子と思われる方が言う。
 かしこまりました、と、ぼくは、注文の品をピッピッと入力していく。
 双子のテーブルの上をいつの間にか、さっきの小人たちが走り回っている。
 赤い帽子の小人はチェリーの茎を引きずり、黄色い帽子の小人はストローの白い袋を踏みつけ、緑の帽子の小人はくしゃくしゃに丸まっていた紙ナプキンの上にダイブする。
「「お願いします」」
と双子が、同時にぴっと右手を挙げる。木曜の午後。外はポップコーンの雨が降っている。

チョコレートサンデーとフライドポテト

チョコレートサンデーとフライドポテト

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-09-08

CC BY-NC-ND
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