お地蔵様
私は仏教の事を知っているわけではないが、お地蔵様は優しい顔をしているから子供の時から好きだった。大人になってからも旅などした際によくお地蔵様に会った。なかには色褪せた赤帽子と涎掛けをし、痩身で猫背の薄ら笑い(ほほえみ?)をうかべた珍しいお地蔵様もあったが、殆どは優しいお顔で、その前に立って慈愛に満ちた表情と雰囲気を楽しんだ。お地蔵様と一緒になって安らいだ気持になる。妻とあれこれ言いながらの楽しいひと時だ。
「いろんなお顔があるものだね、作った人の気持が現れているのかな」
「そうかも知れないわね」
「君が作ったら、どんな顔のお地蔵様になるかなぁ」
「やさしく、おだやかな顔になるに決まっているでしょ」
と、大抵作者の話題になる。私は、お地蔵様のような柔和な風貌と心を持った人を想像して、名も知らぬ作者に敬愛の情をいだく。
私には可愛い孫娘がいる。幼いにもかかわらず、病気の私をとても心配して、お風呂で背中を流してくれたり、着替えを手伝ってくれたり、私が咳き込むと誰よりも早くコップに水を入れて持ってきてくれたり、いろいろ助けてくれる。
ハグもして、小さな手で背中をパタパタしてくれる。私も「いい子、いい子、大好き、大好き」と言ってハグする。
この子の成長をずっと見守りたいが、私の命がもうすぐ尽きるのが残念だ。
私の家の居間には親から貰ったお地蔵様がある。三十センチばかりの小さな石像で、とても気にいっている。私はこのお地蔵様に望みを託してから逝きたい。
「どうか、この子をお守りください。世界中の子供達をお守りください。」
2016年6月2日
お地蔵様