短篇:魔女の家(1)
ある場所をノスタルジーになる理由はそこに思い出があるからだと思う。子供の頃はなんのことない景色、匂い、音全てに不思議な感情を抱くことも多い。これはそんな話である。
とある日常と魔女
街の風景にはなんとなくノスタルジックにさせるものがある。具体的にというのは難しいが、それでもなぜかこころを複雑な気持ちにさせる妙な感覚になる。
そんなことは誰にでもあるし、それは人それぞれ違う場所で感じるだろう。私はそれがなんの変哲もないただの街であるというだけである。ただ私は「その場所」を特別なものと感じているのである。
私は小さい頃からこの街の住宅街に住んでいた。私の家は普通の家で、近くに一通りのお店が揃っていた。
そんな私の家の近くには一つ、古美術展と書かれた家が建てたれている。その家の周りには蔦が這っていて、玄関前の石畳の間には雑草が生えていた。それゆえに子供の間では「魔女の家」と言われていたほどの怪しさと妖しさがあった。
もちろん私もその話を知っていた。子供の頃、友達と魔女に会いたいという一心で興味本位で入ったことがある。その中は、窓から差し込む眩しい光や奇妙奇天烈な置物があった。それは子供でもかんじるほど神秘的だった。
その光景に見惚れた僕らはしばらくの間その場を動かなかった。その時、奥から足音が聞こえるとふと我に返る。それと同時に僕らは驚き、友達は全員、急いで外に出ようとした。しかし、私だけは頭が働かずその場で立ち止まっていた。その足音は徐々に私の方まで向かってきていた。
私はその場を動かず、足音の本体がこちらまで来るのを待ってしまっていた。足音の正体。魔女の正体は女性であった。
短篇:魔女の家(1)