あの日のさようなら

電車の窓に顔をくっ付けて、
発車のベルがなっているよ。

君のひとみに、この町のお城が見える。
そしてまた、あの日のように、流れ落ちている。

瑠璃山から、眺めた五重の塔が、
今日も見えるだろう。
今度、戻ることがあれば、
もう一度いけるだろう?

さようなら
僕の町。
さようなら
君。

でも、君はもう何処にもいない。
校庭のはずれから登れる小径を
いつか教えてくれると言っていた。

探すよ。
君がいるどこか。

それから、約束した時間を登り始めたよ。
あの小径に隠れて、君の影が、
昔のように、僕を見つけてくれる。

なのに、ふと記憶が途切れると、
君と、もう一人、
あの風景を見ていた誰かが、
僕の隣で眠っているようだ。

さようなら
僕の町。
さようなら
君。

あの日のさようなら

あの日のさようなら

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-06-21

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