御機嫌伺などせんで良し!

私の祖母の名言である。

これは祖母の名言である。

祖母はかくしゃくとした78歳のご婦人で、いつだってなんだって一人で乗り越えてきたという感が深く、きりっとしていてかっこいい。
今でも朝から家の前を掃除し、「どうせならうちの前まで掃いてくれればいいのに」という嫌味を言われた家の前はきっちりと掃かず、好き嫌いもはっきりとしている。

私は一度この人が癌になって弱気になったのを見て、長らく御機嫌伺を立てて電話をかけてきたが、祖母曰く、「そんなことはせんで良し!」。

祖母にはそんな柔な扱いは必要ないのだ。
いつもきりっと一丁前。誰にも厳しく、自分には特に厳しくて、案外お金は使うようだが明るくてハイカラだ。
パーマを欠かさず、化粧も怠らない。

そんな祖母にも、長く苦難の歴史あり。それを一人で乗り越えたからこそ、今があるのだ。
そんな祖母の元には、いつも人が長い列を作って教えを請いに来る。

私はそんな祖母の孫に生まれ、なんだか鼻高く、自分も見習わねばと暑い中歩きに出かける。

やれやれ、今日も頑張ったぞ。

動き癖をつけること。
それが祖母に教わった一番の良い癖だ。

人生いつでも、頑張らねば。

そう祖母に背中を押され、今の私があるという訳です。

御機嫌伺などせんで良し!

本来の人。

御機嫌伺などせんで良し!

私の祖母は、厳しい人だ。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-25

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