Mind and memory 〜edelweis〜

As this story will receive in their…

登場人物の紹介

・No.9 EWELIDES
12歳の少年。戦闘戦力派遣社の戦闘員No.9。
幼少期を島の研究所で過ごし、この年に一人立ちとして社に入った。正義感が強く、好奇心旺盛な優しい少年。蹴りや体術に長けている。

~戦闘戦力派遣社~
・No.8 REGRET
戦闘員No.8。背が高く、No.9を「チビ」と馬鹿にするのが口癖。大剣を巧みに操って戦う。

・No.7
戦闘員No.7。任務には忠実だが、少し性格が悪い。悪戯が趣味。

・No.6
戦闘員No.6。常にヘラヘラとしており、主に任務よりも情報課で仕事をしている。サボリ魔。

・No.5


・No.4


・No.3


・No.2


・No.1
戦闘員No.1。戦闘課のまとめ役で、真面目な性格。

・No.0
戦闘戦力派遣社社長。姿を見る事が少ない。

第1話 約束

波の音と、潮の匂い。
「約束だよ」
少女はそう言って笑った。

「起きろ。No.9。」
上から声が聞こえる。まだ眠いのに。
「うるせー…寝かせろおお…」
「起きろチビ」
ガバッと音を立てて飛び起き、同時に蹴りを放つ。
それをぱしっ、と音を立てて受け止めると、No.8は上から言い放つ。
「時間だ。そろそろ任務に行くぞ。」
「けっ…了解」
まだ寝ボケる頭を無理やり動かし、布団から這い出る。窓から朝日が差し込み、部屋を舞う埃がちらちらと光る。
それをぼーっと見ながら、着慣れた上着に腕を通して荷物を担ぎ、泣き顔の見慣れた白い面を首にかける。
「…よし!行くか!」

ここは戦闘戦力派遣社。ここでは、世界中に溢れる凶暴化した化物や犯罪者などを、力を持たない人達の代わりに退治(駆除、または捕獲など)することを仕事としている。(非戦闘員は主に情報課で化物の情報収集や依頼の取扱などを行う。)
戦闘員は10人。それぞれ0から9の番号を持っている。

左右の壁を鏡に覆われた長い廊下で、二人分の足音が響く。
「今日は何て奴だっけ?標的」
ジロリと睨みつけたあと、No.8は答える。
「凶暴化したビッグバイソンだ。」
「バイソン?って事は、森?」
「そうだ。…元々群れの中でも一番大きかったうえに、凶暴化して全く手がつけられない状態らしい。…吹っ飛ばされるなよ。」
「…それチビって言ってんのか」
ぎろりと睨むが、No.8は素知らぬ顔で廊下を進む。

広間では他の社員も集まっていた。
「はよーっす」
まだ見慣れない仲間の顔と番号を、頭から捻り出す。
「おはよ…えっと…No.6?」「せいかーい!」
イエーイとハイタッチをする。ーこいつはよく分からない。
「全員揃ったな。…珍しく今日は時間に余裕があるが、説明を始める。」
いつも通りにNo.1が取り仕切り、その日の任務説明が始まる。
「…と言う事で、No.6は今日も非番だ。最後に、No.9にはNo.8とビッグバイソンの駆除に行ってもらう。細かい説明はNo.8にきけ」
こくりと頷く。
「…よし。それではいつものように、死なないよう気をつけること。以上だ。解散。」

わらわらと各自準備を始めるなか、No.8のあとを追い、一足先に任務へ出る。
No.8とバディの時は何故か必ず周りより早く任務に出る。前に気になって理由をきいたら、早く終わらせて寝たいからだと答えられた。

見慣れたガラス玉を二人の手の上で砕くと、その瞬間小さな竜巻が起こり、轟音と強風に思わず目を閉じる。
ーやっぱりこれにもまだ慣れないな…
ゴウゴウとなる風の中に木の匂いが混じる。
強風と轟音が次第におさまり、ゆっくりと目を開けると、目の前に現れた大きな巨木と、慣れた様子で森へ入っていくNo.8の背中が見えた。
「おい!置いてくなよ!」
慌てて背中を追いかけ、森に踏み込む。

ちゅんちゅんキーキーと鳥の鳴き声が朝の静かな森に響き渡り、雨上がりの雫が頭に落ちる。
「ビッグバイソンの目撃地はあの辺りだ。まずはとにかく刺激せず、素早く片付けること。追い詰められた生き物は面倒だからな」
「…それ前にも聞いたぞ」
「…来た」
批判を受け流し、現れた標的を確認する。
「…間違いないな。 ビッグバイソンだ。」
「ちょっとでかすぎだろ…」
茂みから現れたバイソンはブンブンと頭を振ると、近くの木に頭突きを食らわせる。すると、振動でギシギシと音を立てていた木がゆっくりと倒れ、一斉に鳥が飛び立った。

「…それじゃ、指示通りに動けよ。」
「…了解」
ゆっくりと動き出し、指定されたポイントへ移動する。
No.8にサインを送ると、指示通り登った木から標的へ向けて飛び降りる。
宙で体を丸めて落下に勢いをつけると、標的とぶつかる直前に足を素早く出す。落下と遠心力によって勢いの増した蹴りが、標的の頭を叩きつけ、その巨体がぐらりと揺れる。
その直後に飛び出したNo.8の大剣がぐらつく頭をかち割るーと思いきや、一歩早く混乱から立ち直ったバイソンが角をふり、がきん、と大きな音を立ててその大剣を受け止める。
同時にNo.8に目配せをし、暴れるバイソンの背中に飛び乗ると、角を掴んで体を支える。次いで素早く片手で腰のナイフを取り出し、標的の首に勢いよく刺しこむ。
吹き出した血を避けて背中から飛び降りると、標的のビッグバイソンはゆっくりと地面に倒れた。
振動が地面を揺らし、さらに鳥の大群が空を舞う。
「よし!バイソン倒したぞー!」

証拠品として折ったバイソンの角を眺めながら、森を出る。
「なあ、何でNo.8はこの仕事をしてるんだ?」
「その言葉、そっくりそのまま返す。何故そんなに若くしてこんな仕事についている?」
返された問いに、少年はゆっくりと答える。

「おれは…大切な物を全部守るために強くなるって、…友達と約束したんだ。それにこの仕事だったら自分よりも強い奴と会えるし、もっと強くなれると思ったから」

少年はそう言うと、初めの質問を返した。
「それでNo.8は?何で?」
少年の問いに男は暫く空を見つめていたが、ふっとその視線を逸らすとぼそりと言った。
「任務は終わった。帰るぞ。」
「…?何だよ…」
突然機嫌を損ねたバディに困惑しつつ、その後を追う。

見上げると、澄み渡った青い空を白い鳥たちがくるくると旋回していた。

第2話 雪の国

「さみい…凍る…」
ガタガタと震えながら、雪の山を目指して進む。

ここは雪の国。一年を通して雪が降る、白銀の世界。

「…No.7は平気なのか?」
「俺は何度か来てるからな。それに中着込んでるし。」
「…寒いって知ってるなら先に教えてくれよ…」
真っ白になった服をはたきながら、雪をかき分けて歩き続ける。

ー数時間前ー
「今日は俺と仕事だってな。よろしくな」
「…よろしく…えっと…No.7?」
そうそうと頷くと、No.7は確認をする。
「任務先は…雪の世界か。で、今回の標的はホワイトベアだな。凶暴化してるから気をつけること…で、目撃地はスノウタウンって町の南東にある雪山」
「…雪ってなんだ?」
目を点にして少年を見ると、突然納得したように手をぽんと叩いた。
「ああそうか。お前まだ雪のある世界に行った事ないのか。まあ、雪は…見れば分かる、かな」
「?」

ーそして現在。
「……ていうか、なんで雪が冷たいものだって教えてくれなかったんだよ」
No.7に文句を言いながら、雪に飛び込んで真っ白になった服をバサバサとはたく。
「聞くより見る方が早いっていうだろー」
ちらりと顔を見上げると、口がにやけているのが見てとれた。
ー性格悪いなこいつ。
「ほら、そろそろ着くぞ」
ぎろりと睨みつける少年をさておき、No.7は前を指をさす。
その先には、針のようにそびえる巨大な山がかすかな日の光を浴びて白い輝きを放っていた。

背中をそって山を見上げ、呟く。
「…てっぺんが見えない」
「標的に会うまでは登れ、と指令には出てるな」
徐々に体温を奪っていく冷たい風と雪の中、少年はため息をつく。
「…戦う前に寒さで死なないといいな…」

ーとある森の中ー
いくつかの影が森の木々の間を走り抜ける。
「全く…しつこい奴らだね」
老婆がローブを翻して立ち止まると、その瞬間周囲の木々からガサガサと音をたてて化物が飛び出し、老婆を囲む。
すると、その間をぬって一人の男が前に出る。
「…年甲斐もなく元気な事だな。そろそろ、我らの目的に協力してはくれないだろうか」
男の話を鼻であしらうと、老婆は言い放つ。
「ふん!やなこったね!私はあんたらのくだらない野望のための命なんて、持ち合わせちゃいないよ」
「…やはり話し合いは無駄か」
男がそう呟き、スッと手をあげた瞬間、周囲の化物が一斉に老婆に飛びかかる。
「ほいさ!」
同時に、老婆が掛け声と共に振り上げた杖から煙があふれ、辺りは瞬く間に真っ白な煙に覆われた。
「くっ…また逃げる気か!」
舌打ちをする男と、うろたえる化物を取り巻く煙の四方から声が響く。
「まだまだ修行が足りないねえ!さらばだ!」
老婆の笑い声が遠ざかると共に、辺りの煙は徐々に晴れていった。

日が沈み始め、影が次第に濃くなっていく森の中。拳を握って煙の晴れた空を睨みつける男の後ろで、鼻を押さえた化物たちがバタバタと暴れていた。

Mind and memory 〜edelweis〜

心に響く物語を描きたい

Mind and memory 〜edelweis〜

強くなりたい。大切なものを守るために。 とある島の研究所で育った少年、エウェリデス。 12歳になった彼は、とある組織に入る。そこでは、凶暴化した化物を力を持たない者達の代わりに退治する、という毎日を送っていた。 任務を次々にこなしていくうちに、幼馴染とかわした遠い日の約束に少しずつ近づいて行く。 しかし、彼のそんな日々は少しずつ狂い始め、いつしか針を止める。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • アクション
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-25

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  1. 登場人物の紹介
  2. 第1話 約束
  3. 第2話 雪の国