勝負!

頑張るとはいいものです。

負けるも勝つも、自分次第。

君、何かに励めよ。

そう言い残して、私は玄関を出た。
今日はスーパーの特売日だ。トイレットペーパーを買わなくちゃ。
部屋にすっかりぐずぐずになっている同居人を一人残し、のこのこと日差しの強い中、せっせと出かけていく。

この暑いのに、私は自転車にも乗れない。

何かの拷問だなこりゃ、と先日起こした自転車事故を思い出しながら、これもひとえに人にけがをさせた所以だ、と反省する。
しかし、月日は巡るのであり、トイレットペーパーは切れるし、人は食べないと生きていけない。
同居人はてんで頼りにならないし、私がしっかりするしかない。

今日も無駄な食欲を押さえつけながら、なるべく間食は買わずに済ませる。
これでも二級の精神障碍者で、同居人は一級だ。
一人にしてられないから、一緒にいる。
何もやる気が起きないらしく、ゲームも飽きて久しい。いたずらに服を買っては押し付けてくるので、「いい加減にせんか!」と昨日血を見る大喧嘩となった。
それで不貞腐れて寝ている。

先月病院から退院したばかりの彼を思い、おかげでこっちは健康になるばかり、とはーあとため息をついた。
それでもこちらも辛い時があり、なんとかポジティブシンキングで乗り越えている。

少なくとも、一人きりではないのだから。

いつだって、誰だって勝負するのは自分自身とだ。
あいつは負けてばかりいる。私は手を抜き、買ったり負けたり。別にどちらでもない。

ただ、世間の思うところは色々とあるらしく、様々な目には合う。
しかし、見栄の張り合いなどどうでもいい。こちとらそんなに暇じゃない。
あんたらのご機嫌伺なんて死んでもごめんだ、と私は威嚇するようにわざと大きな音を立てるご近所に、こちらも大きな音を立てて窓を閉めたごく最近のことを思い出す。

先生曰、「それすらしないのが普通です」。

無視ですよ、無視、それに限ります、とのこと。

そこまで達観できるようになるのが私の宿題だ。
とりあえず、今日は暑い中、勝負に勝った、ご苦労さん!と私は自分で自分にご褒美のサイダーを奢った。

誰も褒めてくれないや、でもいいんだ、だって楽しいもの。
頑張るとはいいもんだと今日も一人ごちる。

「おかえり」

彼が弱弱しく布団の中から呟いた。

勝負!

割とリアルな日常編。

勝負!

遊んでばっかじゃいられない。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-24

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