雨色の詩

<みずうみ>

風がたったり雨がふったりして
その水面(みなも)がひそやかにゆらぐと
それがわたしの音楽になります

ピアノのうつくしい音色が
わたしの言葉を代弁してくれます

音符のたくましいフォルムが
わたしの気持ちに応えてくれます

そして音楽は空気にとけて
みずうみは夜空の月をうつします
ブラックコーヒーがわたしの顔をうつすように

* * *

<そんなふうに>

モーツァルトの音楽のように
生きてゆきたい
希望も失望もすべてをふくんでいて
それでいて軽やかに
ケッヘル136番のディヴェルティメントも
ケッヘル581番のクインテットも
希望も失望もすべてをふくんでいて
それでいて軽やかだ
私もそんなふうに
生きてゆけたらなぁ

* * *

<30歳の誕生日に>

ぼくのママは
あと30年くらいで死んじまう
ぼくの大好きなママ
ぼくいい子になるよ
ちゃんとおきて会社にいくし
ぜい金だっていやなかおせずおさめるよ
つまを今よりもっとあいして
子どものためにもがんばるよ
でもぼくの大好きなママは
あと30年くらいで死んじまう
あと30年たらずで死んじまう

* * *

< 道 >

水は肉体の源
光は精神の源
とうとうと流れる清涼な水脈
天使
灯り守
船頭
クダラナイこともたくさん経験したけど
そのなかですくったウワズミは尊い
葉っぱ
葉っぱは音符
葉っぱの音楽
雨は涙
雨の悲しみ
私か君かあるいは誰かが
サックスを吹くと
風が立つだろう
そうすると葉っぱが舞う
葉っぱは音符であるから
そこには音楽がある
音楽があると感動するから
涙がでる
涙と雨は同義であるから
大地が濡れる
すなわちそれは
朝日の力強さと
公園に咲く花の美しさと
空を流れる雲の優美さと
夕暮れ時のもの悲しさと
すれ違う他人の尊さと
そして人生の儚さと
同じことなんだ

雨色の詩

雨色の詩

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-23

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