ワトソン君
ワトソン君へ。
諦めちゃダメだ。
ワトソン君、君が思うより世界は広く、明るく輝いている。
君の心が暗くするのだ、何もかも。
地獄にもほの明るい光は存在し、それは続けるという単純な動作によって成り立つ。
過去にもストレンジャーは存在し、それは君だけではない。
君は一人じゃない。諦めちゃダメだ。
ミスター・シャーロックより
上記の手紙を読み、私は顔を上げた。
過去にとらわれ、もがいていたが、今私はこの世に一人ではないことが証明された。
いつの間にか夜は明けた。日差しが差し込む気配。
鳥の鳴き声に耳をすませ、荒れた部屋を眺めた。
私の心の残骸。未だ闇の中。
コンコンとドアがなり、ドアを開けると、彼が布ナプキンを口に巻き、腕まくりして立っていた。
さあ、始めようか。
彼は私に微笑みかけた。
私は弱々しく、しかし確かに決意を持って笑い返した。
おやまぁ、旦那方がお掃除してるよ。
そうご婦人方や子供に笑われながら、我々はその午後タバコをふかした。
元どおり綺麗に片付いた部屋の前で、フーッと煙を吐き出す。
どうだい、たまにはこういうのも悪くないじゃないか。彼がそう言い、そうですね、ミスターシャーロック、と私は返事した。
鏡を見ると、無精髭。
ここも綺麗にしなくてはな、とコンと鏡を指で叩いた。
ワトソン君
読みたくなって。