どんなに遠く離れても

その夫婦は、お互いを大嫌いだと言いあっていた。

私は君が、大っ嫌いだよ。

お別れの日、君は私に言いました。

「お前のことが、大嫌いだったよ」

私も君に言いました。

「こっちこそ、大嫌いだったわ」

それから私たちはどこにいても、「大嫌いだ」とメールを送り、電話をした。
大抵笑って、大嫌いだ大嫌いだと言いあって、気が付いたらウェディングドレスを着ていました。

「こんなに大嫌いになったのは、こいつが生まれて初めてです」

あなたがそう言って、マイクを私に渡しました。

「私もこんなに嫌いになったのは、この人が生まれて初めてです」

そうして、キスの代わりにほっぺたをぴしゃり!と叩き合いました。

おじいさんになっても、おばあさんになっても、お互いに大嫌いだと言いあいました。

そして最後の日、あなたは言いました。
「お前のことが、大嫌いだよ、憎くて憎くて、仕方がない」

だから来世も、夫婦になろう。
あなたはそう言いました。

私はまだ人に言います。
「あの人のことが、大嫌いだった」って。

そうして来世を待つのです。
私たちは、運命の赤い糸で結ばれた者同士、前世では殺し合いの仲。
きっと来世でも巡り合うでしょう。

そう信じて、待っています。

来世の君へ。

どんなに遠く離れても

なーんとなくです。

どんなに遠く離れても

大嫌い者同士、お似合いの仲。

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更新日
登録日
2016-08-21

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