どんなに遠く離れても
その夫婦は、お互いを大嫌いだと言いあっていた。
私は君が、大っ嫌いだよ。
お別れの日、君は私に言いました。
「お前のことが、大嫌いだったよ」
私も君に言いました。
「こっちこそ、大嫌いだったわ」
それから私たちはどこにいても、「大嫌いだ」とメールを送り、電話をした。
大抵笑って、大嫌いだ大嫌いだと言いあって、気が付いたらウェディングドレスを着ていました。
「こんなに大嫌いになったのは、こいつが生まれて初めてです」
あなたがそう言って、マイクを私に渡しました。
「私もこんなに嫌いになったのは、この人が生まれて初めてです」
そうして、キスの代わりにほっぺたをぴしゃり!と叩き合いました。
おじいさんになっても、おばあさんになっても、お互いに大嫌いだと言いあいました。
そして最後の日、あなたは言いました。
「お前のことが、大嫌いだよ、憎くて憎くて、仕方がない」
だから来世も、夫婦になろう。
あなたはそう言いました。
私はまだ人に言います。
「あの人のことが、大嫌いだった」って。
そうして来世を待つのです。
私たちは、運命の赤い糸で結ばれた者同士、前世では殺し合いの仲。
きっと来世でも巡り合うでしょう。
そう信じて、待っています。
来世の君へ。
どんなに遠く離れても
なーんとなくです。