匂物語

LINEグルチャでのやりとり

A子
「わたし結構な匂いフェチなんだよねー」


親指を立てるスタンプ

C子
「えー、A子ちゃん以外ーwww」

B男
「俺の足、通風かわからんけど、このテーピングの匂い嗅いでみないか?(´-`)」

E男
「あかんwww」



匂物語



そうそうw 匂いについてはいろいろ思い出があるよねぇ…

そう、あれは高校2年生の夏。
俺の入っている帰宅部には、いつも机に向かって涼しげにシャーペンの芯を出し続けている憧れのゆき先輩がいる、憧れは憧れだけであって同じ先輩の並木先輩ラクロス部のキャプテンと付き合っている、いわゆるベストカップルってわけだ。憧れだけに手が届かない存在だ。

帰宅部にはもう1人異才を放つ女子がいる。
ほりいちはだ、普段はメガネっ子でおとなしいが帰宅部のいざ試合ってときにはメガネをコンタクトにし優秀な成績を残す意外性にみちた女子だ。
俺はいつしかその魅力にとりつかれていたのかもしれない…
しかし、俺の同じクラスでほりいちはを狙ってる奴がいる、
帰宅部のエースこーじだ。
彼は高校1年の時に横浜から転校してきた異端の不良だ、2年生にもかかわらずうちの高校でもう幅を利かせてる。
しかしあの真面目なほりいちはさんと仲が良い。どこだか少し嫉妬している自分がいるかもしれない。
そんな中、帰宅部の部活が終わり俺、こーじ、ほりいちはさんと3人で帰宅する事があった、3人は帰り道が同じなのである。
不良のこーじがいつものごとく軽い口調で言った
「ゲーセンでも寄ってかね?」
俺とほりいちはさんは同意した。
ゲーセンに着くやいなや、こーじとほりいちはさんは同じゲームに夢中だ、嗚呼…俺は静かにゲーセンを後にし近場の喫茶店に行った。
ジンジャエールを注文した。
なんだか心なしかジンジャエールがいつもより甘酸っぱい匂いがした…



時は経ち、成人を迎えてからの同級会である。
俺は行くか悩んだあげく行く事にした、店の名前は小洒落た居酒屋のアンセンブルである。雰囲気はまあまあだ、
なんとその店はあの憧れだった、ゆき先輩が経営しているらしい。まぁどーでもよい
店に入るなり声をかけてきたのが、帰宅部で同じクラスで陰の薄かったが、卒業後すぐに遠藤章造と結婚した、ちあきである。彼女もまた違った匂いの記憶を持つ女性だ、
彼女はすぐさま俺の手を握りこう言った
「汁君!!早く!みんなが乾杯を待ってるよ!」
そう、汁とは俺の名前であり、みんなからも汁と呼ばれている。
俺はその言葉に踊らされ、いつしか「あー来て良かったかも」という感情が生まれた
しかし、現実をみてみるとそうはいかなかった。

「うっはー!汁じゃん!!www.」

と高らかに声を上げるのは同級生の中でも極めて成績の良かったRAZUだ。
彼は昔から勉強もでき運動もでき、かといってチヤホヤされるタイプでもないのになぜかいつも彼女という存在がいた。

彼が俺を空いている席に座らせるとその場を仕切るかのごとく、

「じゃあ、お集まり頂きました皆様方………………………………………………………では!カンパーイ♪」

と、後々に俺の地獄が待っているとは知らず俺も乗りで乾杯した。

一応みんなビールだから俺も当たり前のごとくビールだ、苦い。
普段、就活→バイト→ゲーム→寝る、の繰り返しだから酒にはあまり免疫がない、かといって嫌いな味ではないが同級会のせいもあってかいつもより苦く感じる。
そんな中隣に座っている ぬつきが声をかけてきた
「ねぇ、汁君?久しぶりだねぇー」

お酒には多少免疫があっても、高校時代から女性だけには免疫がない俺にとっては

「おっ、おう」

と、テーブルにある宴会料理のツマミであろう唐揚げをバクバクと食いながら言った。ぬつきは昔から空気を読むのがうまい、常に冷静でいられるタイプで、俺の言葉を聞くなりすぐさま周りにいる同級生達にも同じような話をしていた…

俺が周りにも気にせず宴会料理とお酒をたらふく食べ飲みしている一瞬の間に辺りは別世界へと変わっていた

同じ学校のよしみでかなぜか、ゆき先輩(店主)と並木先輩の夫婦も混じって飲んでいる。懐かしいせいか2人とも楽しそうだ
やっぱ結婚したんかー…
そーだよなー、、、っと
俺はその様を横目でみながらサラダに手を伸ばす

一方、反対側では卒業後すぐに結婚したはずの ちあきがなにかボヤいている。片耳を向けると

「はよ〜別れたかってん……」などと独身のみんなに人生を語っている。
ついこないだ離婚したようだ。
同級生の中でもお調子者のラスクが食い入るように聞いている。ラスクの口癖は昔からなにがあっても
「コケーーーーー!!」だか、酔っ払っているせいか、ちあきのリアル体験に目を見開いて聞いている

そして俺の正面には、あの甘酸っぱい思い出の
こーじと、ほりいちはさんが座っている

わかっていたんだ、
だから来るか迷ってたんだ、
あーやっぱりな、
逃げだしたいーーー、

俺は自分の席に座った時から正面はみてない、お酒を飲むにも料理を食べるにも

ゔ、右も左も正面も、、、

誰とも話さず1人で飲んで食ってばかりしていたらかなり酔っ払った、こうもなると本当に逃げ出したい気分でいっぱいだ。
普段飲みもしないような日本酒などに手を出しヤケ酒かのごとく飲んだ


……
………

「お疲れ様〜〜♪ラストカンパーイ〜〜♪」

は!!我にかえるとやっと同級会は終わったみたいだ、お腹がいっぱいになり少し眠ってしまったようだ。酔いも軽く覚め落ち着いた自分がいた

会計後、二次会に行く人は行くで帰る人は帰る、
もちろん俺も帰る派の人間
みんなに聞こえるか聞こえないかぐらいの小声で

「またね-」

と言いつつ足を帰路へと走らせた、

ぐん!!!!!

俺は襟首を急に引っ張られて、う!!
一瞬何事かと思った

しかしその強さとはうらはらに二次会に行ったであろう思ってた、ちあきがいた
「ハァハァ…汁君!?帰るつもり?」

あまりの迫力に俺は声もだせずにいた
ちあきはかなり飲んでいるせいか、お酒の匂いと今まで俺が生きてきた中で嗅いだことのない女性の匂いがした…

少し期待している俺がいる。
なにをか?それは自分でもわからないくらい鼓動が激しくなってくる

ちあきは元人妻(バツ1)だけあって男慣れしているせいか笑顔で俺にグングン近づいてくる。
昔は陰も薄く、なにかとつけすぐ寝落ちして
女子のくせにイビキをガーガー激しくしてた
あのちあきが近づいてくる。

思わず俺はイナバウアーしてるんじゃないかと思うくらい上半身を反らせた

「し〜る君♪ ハイ♪」

え!???

ちあきが両手を背中から前に出すようになんだか小さな箱を俺に差し出した…

?!!

「ハイ♪ チョコレート♪ 余ってたから汁君にもあげる♪ あははっ」

昔から女っ気など下じきの薄さほどもない俺は
5秒固まってから気づく…

チョ、コレイ…ト…

そう、今日は2月14日バレンタインデーである

いやまてよ、俺は今就活中のバイト野郎
しかもバイト先は、かの有名ディ◯ズニーラン◯ドに卸している生粋たるな工場で働いている

毎日毎日、チョコレートのシャワーを浴びてるかの如く働いている俺にとっては
そのチョコレートの匂いが懐かしいあの匂いにまで感じた

チョコレートなんて親からしか貰ったことのない俺は、期待、高まり、鼓動、すべてが爆発するんじゃないかぐらい嬉しさに溢れていた

……

…!!いや!まてよ!余ってただと??

ここまでの自分との葛藤、約10秒弱

「またね〜〜♪」

ちあきは二次会に行くメンバーの所に待ってよー
と走り去って行った。

我にかえる俺、ふと周りを見渡す。

居酒屋のショーガラスからみえる
ゆき先輩と並木先輩の仲良く料理を片付ける光景

「がんばって!!!」

!!!?
さっきまで自分におきていた出来事で、ボーっとしていた俺は凄く驚きを感じた

声の主は、ほりいちはだ。

店の外にいた、ほりいちはとこーじは今起きた光景を見ていたようだ

ほりいちはとこーじは元々二次会に行かないつもりのようで、みんなを見送りに最後まで店の外にいたみたいだ。

こいつらはあの甘酸っぱい思い出の頃から付き合ってて、今では同棲という俺には理解不能な領域にまで達している

俺は眼をジト目にした…

「どうし…

「がんばって!!!」

ほりいちはは昔からそうである、何かにつけ

「がんばって!!!」

「やったー!!!」

「うるせー!!!」

しか言わない、メガネをコンタクトにした辺りから性格変わったん?てくらい人間性が変わった。

後々に知るが付き合っていた不良のこーじの影響が大きいらしい…

「ど、ど、どぅ、ど、どうしたの?」

と言うと、こーじの目をみて相づちするやいなや
腕をくんで帰っていく

こーじは顔だけ振り返り

「またな!!汁!」

とだけ言い放ち俺と同じ方向の帰路へと薄暗い闇の中消えていった。

店の外にはもう俺しかいない

店は閉店後の掃除をしているゆき先輩と並木先輩
仲良さそうに笑顔で話しながら掃除をしている

店のドアは掃除をしているせいか半開き、ゆき先輩独特のぶふっ!て笑い声とかすかな店のBGM

♪♪〜〜〜

空ときみとの間には、今日も冷たい雨が降る

きみが笑ってくれるなら、僕は悪にでもなる

♪♪〜〜〜

なぜか中島みゆきが身にしみる…



ゆっくりな一歩を踏み出す。
さて、帰るか。俺はもう酔いなんて完全に覚めている

時刻はまだ22時、歩いている人はチラホラ、
家に帰ってすぐ風呂浴びて寝よう!今日の事は色々と忘れよう、と思ってた矢先の事である!

店から出て家まであと半分くらいの距離である。
道端には、倒れている男性、それを介護している女性

!! こーじとほりいちはではないか!

倒れているこーじは

「痛ててててッ!足の側面激痛やんー!!ヤッベー!」

などと叫んでいる。
一方ほりいちはは、なんだか冷静である。

「痛風やろ、それ」

この冷たい一言である。

「いや!!まぢでヤッベーから」
こーじが悶える

「がんばって!!!」
ほりいちはの口癖が冷たい

俺はすぐさま駆けつけた

なにも知らない俺は言った

「こーじ!!どうした?!!大丈夫か?」

こーじが足を痛がってた、俺はとっさにこーじの膝を掴み、どこが痛いんだと問いかけた

ほりいちはが携帯片手に言う
「がんばって!!!」

なんだこいつは!!!
こんな危機的な状況にも関わらずいたって冷静だ

あまりにもこーじが痛そうなので俺は救急車を呼ぶ事にした、
もちろん呼ぶ事はほりいちはに伝えたが、携帯に夢中でうんうんとうなづくだけである。

こーじが定型文のようにほりいちはに言葉を放つ

「通風かもってだけで断定で通風の診断を受けたわけでは無いwその時の尿酸値も基準値だったしそもそも他に候補となる病が2つほどあるw、石灰性腱炎、有痛性骸形骨?とか
まぁなんにしろ激痛」

繰り返す
「通風かもってだけで断定で通風の診断を受けたわけでは無いwその時の尿酸値も基準値だったしそもそも他に候補となる病が2つほどあるw、石灰性腱炎、有痛性骸形骨?とか
まぁなんにしろ激痛」


俺はなぜだか笑いがこみ上げるも、ものすごく笑いたかったがこの状況だ
笑えない

「ていはうではない!おれはていはうではない!なぬいかのまつがひんやん」
もう、痛さのせいか何を言っているのかわからない

吹いた。 笑笑笑笑笑

こーじの言葉を聞いたほりいちはは、

「しばく!!」
ほりいちは片手に持っている携帯を天へと掲げる

遠くからサイレン音 ♪〜〜

やっとこ救急車が来たようだ

「どうしましたー?どこが痛いですかー?」
救急隊員Aが聞く

「通風かもってだけで断定で通風の診断を受けたわけでは無いwその時の尿酸値も基準値だったしそもそも他に候補となる病が2つほどあるw、石灰性腱炎、有痛性骸形骨?とか
まぁなんにしろ激痛」
こーじがまたもや定型文をコピー、ペーストするかに救急隊員に言う

ガタン!!!

救急隊員Bが救急車のバックドアを開け担架を運びだす

担架に乗せられるこーじ

「イテーイテイー!ぐぬぬぬぬ」
怖い

救急隊員B
「お?あれ!?こーじ…君?」

俺は状況にパニックで言葉しか入ってこない、周りを見渡せる余裕がない

こーじ
「アンさん!!!」
こーじ、安堵の表情

ん?アンさん???

あ!!!帰宅部の伝説と化した
アンブレラ先輩だ!!!

俺が帰宅部に入った時にはもう引退試合も終え、顔すら見たこともない優勝を数知れず取った事のある伝説の存在だ

もちろん帰宅部のエースだったこーじは慣れしたんでいるようで懐かしい思いもあってか痛みすら忘れている様子で楽しそうにアンブレラ先輩と話している

暗闇から2人の陰

仕事をひと段落終えた並木先輩、ゆき先輩夫婦である。

!!!!!

『どうした!こーじ!!』
並木先輩が走り寄る

『……。』
なぜだか、ゆき先輩は立ち止まっている


『じゃぁ担架に乗せ運びますね!』
B隊員と担架でこーじを乗せながら周りにいた皆に問いかける…

、。
アンブレラ先輩の顔が引きつる

目線の先には、ゆき先輩

でも昔から完璧主義なアンブレラ先輩はそのまま仕事に取り掛かり、こーじを救急車に乗せる

こーじの事は皆知っているので当然のごとくみな病院まで付き添う…

夜の病院は暗い、非常口へ向かう薄緑のあの灯りだけだ…


待ってるイスには、並木先輩、ゆき先輩、ほりいちは、俺だ、

夜の病院、灯りは非常口の灯りだけ

静けさが増す

病院に着き20分経ったか経たないかくらにの時に沈黙を破ったのはゆき先輩の一言だった


『…勇輔、ごめん』
ゆき先輩全身をうずくめる

勇輔とは並木先輩の名前である。

並木先輩は全部分かっているかのごとく

『大丈夫だよ!今は、現在は、未来は、俺といるじゃないか!』

なんとなく察する俺…ああ、ゆき先輩はアンブレラ先輩となんかあったんだな…
俺は深くも聞かない、今の幸せを維持してもらいたかった、そんな風に…

……



チュンチュン♪チュンチュン♪

『!!』
いつの間にか寝てしまい実家の自分の布団にいる

朝から鳥の声がうるさい、夏の朝のセミのうるささよりはマシだが、

昨日の同級会は俺の過去から消し去りたい思い出を二日酔いでどーでもいー事と忘れようと朝から考えてる自分

あー、バイトのチョコレート工場はしばらく休みに入るからなんかゲームでもするかー

母親の『ご飯はー!?』

の声に返事もせず、APPストアでゲームを探す

俺は昔からRPGとからアクションゲームとか好きだったから検索した、

一番上に出てきたのは、アヴァベルオンライン

んー、これはなんかなーと、思って下にスクロールすると

ヴァリアントレギオン

ん!?気になりすぐさまインストール

始めてみますか♪

この時、俺はただ暇を持て余すゲーム出来ればいっかwぐらいの気持ちでこのヴァリアントレギオンというゲームを始めてみた

まずは、エリスというなんか洋風な女の子がなぜかゲームを教えてくれる

チュートリアルを終える

始めのクエストの森の探索?だかで一緒にいってた、かりントー、ぷりまはる、レヴィ、この3人と広場というゲーム内でのチャット場で一緒になった

『さっきはありがとー』
などと皆で広場でいいあう。

そんな中、エリスが強制的にカットインしてきて

『ギルドはもうキマった?』
『私がお勧めギルドを教えてあげる♡』
などと言ってきたが広場のチャットで皆が、どうせだし一緒のギルドに入らない?

という感じになったのでエリスは無視した。

『A-COOP』!
かりントーがチャットでいう

『作りたて、初心者歓迎、だってよー、入ろうぜー』
かりントーゲキ推しw

その、A-COOPというギルドをみてみると、2人しかいないギルドであった。

ギルドのマスターは、ROSSO

と、空

の2人だ。

まぁゲーム初めてだし適当な考えの俺は

『イイヨネ、イイ汁』

とか言いそのギルドに入る事にした


そう、ここからが現実とゲームのあの悲劇を生む事とはまだ気づかずに…


匂物語、続く…

匂物語

匂物語

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-20

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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