未来の話

寒い雪の日に私が生まれました。髪の色も肌の色も瞳の色も何一つ変わらない普通の子です。
私の父と母も極々普通の夫婦で、裕福な暮らしではないけれど、父と母からも愛され私は温かい環境で育ちました。
大きくなるつれいろいろなことが分かり始めた幼いころ、大好きだったおじいちゃんが天国に行きました。
初めてのお葬式で、初めておばあちゃんの涙を見ました。6歳の私には何も理解することができませんでした。
ただ分かっているのはもう会えないということだけで、息ができないくらい苦しかったあの日を今でもよく覚えています。
その頃から、私の願いは私が死ぬまで父も母もみんなみんな生きてくれれば、あんな苦しい思いをすることはないし、一人になることはないからみんなさみしくない。
だから、その年の七夕に私は「私が死ぬまでみんな一緒にいれますように」と願いを書きました。
生まれたときから死ぬことはわかっています。でもやはりおいていかれるのは胸が締め付けられるような痛みに、
息ができなるようなあの感じをもう2度としたくなくても私が生きている限りきっとつながりはふえ、友達に先輩に後輩にたくさんの人の死を見ていくのでしょう。
同じような楽しさや喜びは人とわかちあえるけど、きっと似たような同じ悲しみはない。
だからあの日の父とおばあちゃんは私以上の苦しさが胸いっぱいにあったのだと思います。
もう何回かの冬が過ぎた日のこと、誰もが一度は考えたことがあるとおもうけれど人は死んだらどこに行くのだろう、
いつ死ぬかなんてはわからないけど死に対する恐怖が死にたくないって思わせる。
眠っているあの暗い何も無い感覚になって私という存在は名前だけになって私は本当にここにいたのだろうか。
忘れられるのが悲しいわけではなくて、私という存在がこの星から消えてしまうのだと考えると何とも言えない喪失感でいっぱいになった。
歴史的人物のように何かをしたいわけでも芸術家のように作品を残したいわけでもないだけど私がいたということを誰かの心の中よりもこの星に忘れてほしくない、ただ死んでいくだけじゃなくて私は私が生まれた意味をしりたい。
この時代に生まれた理由も、女である理由も。
何一つ分からないまま何年も生きている、あと少しで私は大人になる。何が子供で誰が大人なのかは分からない、「大人になることよりも大事なことがあるよ」って大人になりたくなくても時間は止まってくれないしずっと子供のままじゃいられない。子供のころに憧れたのは大人で、でもあんな大人にはなりたくなくて。
何も知らない子供のままじゃ生きていけないから。私たちは年を重ねるのだろう。
大人になることよりも大事なことって、子供の時にしかできないことをするってどういうことだろう、今の私には大人にはない時間があるけれど大人は私にはない何かがある、それが何かはわからないけれどそれがお金でも地位でもない、そんな気がします。
大人になったとき、それが何なのかわかるかどうかはわからないけれど。もう何もかも与えられる無力な幼い私ではないから。
父からの教えを、母がくれた優しさを、家族から貰った愛情が今の私を私らしく生かしてくれているから、家族から貰ったものを違う誰かに私も与えられたらあたたかい優しい未来になる気がします。私達人は誰かのことを憎み、嫌うこともあるけれどそれ以上に誰かを好きになり愛して言葉を交わし心がつながるから、私の歩む先の未来はつらいこともあるけれどきっと優しい光であふれてる。こんな明日になればいいな。

未来の話

未来の話

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-06-19

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