BENT

BENT

「BENT」
お盆の14日公演、主人が亡くなって2年目のお盆、もっとも出難い日にお盆の行事を息子に頼んで、
広島まで舞台を観に行ってきましたよーーもうーー(^_-)-☆

マックス=佐々木蔵之介
ホルスト=北村有起哉
グレタ=新納慎也
ルディ=中島 歩
フレディ・他=藤木孝
その他=小柳友・石井英明・三輪学・駒井健介

story(公演プログラムより)
1930年代、ドイツの首都ベルリンは、退廃を象徴する街と化している。
独裁と暴力の影は、そんな享楽の都にも忍び寄りつつあった。

不穏な空気に気づかぬかのように、マックスはクスリを捌くなど怪しげ小遣い稼ぎをしては日々をしのいでいた。
夜になれば妖艶な女装のオーナー・グレタが経営し恋人のダンサー・ルディが働くクラブに入り浸り。
泥酔しては好みの男を持ち帰る。まるで欲望と快楽が自分の生きる証とでも言うように。
その日マックスが連れ帰った男はウルフと名乗る金髪のハンサム。
翌朝目覚めて記憶がないことにうろたえるマックスに、ルディは皮肉まじりの対応をする。
3人の間にぎごちない空気が流れる中、突如激しくドアを叩くおとが。なだれ込んできたのはナチスの親衛隊。
間一髪でマックスとルディは部屋を脱出するがそれは長い逃亡生活の始まりだった。

ナチスは同性愛者を自党の政治に害をなす疫病患者として徹底的に狩ろうとしていた。
国内を転々と逃げ隠れする二人。マックスは叔父フレディに助けを求めるが果たせない。やがてルディの油断からとうとう捕まえられてしまう。

強制収容所への輸送列車の中、ルディはナチスから激しい暴行を受ける。動揺し、恋人を救おうとしたマックスを制止したのは、
同性愛者を示すピンクの星をつけさせられたホルストだった。

輸送列車の地獄を生き抜いたマックスは収容所で最下層の同性愛者のピンクではなく、ユダヤ人を示す黄色の星をつけていた。
生きようとするマックスの取引の結果だ。
マックスは自分の持てるものすべてを使い所内でも比較的安全な「石運び」仕事に就きそこへホルストを呼び寄せる。
彼らの仕事はひたすら岩を右から左へ、またその逆へと移し続けるもの。
単調な仕事と過酷な環境が肉体と精神を苛むなか、二人は少しづつ互いの距離を縮めていく。

触れることも、視線を交わすこともできない。それでも、そこに確かに「愛」はあった。

収容所での過酷な日常は二人をさらなる極限状態へと追い詰めていく。
マックスとホルスト、死を突き付けられた彼らの「選択」とは・・・。


舞台のセットは舞台中央奥に木製のドアが見えていて、その前の下手にソファ、上手に植木鉢といたってシンプル
この舞台はいわゆるゲイのお話しだ。
過去に何度かゲイの話を扱った舞台は観ているが
この[BENT]は、それを真正面から愛の物語として扱った舞台だ。
ナチス政権下のドイツでのお話し。

蔵之介さん演じるマックスのガウンをだらしなく着込んで調子悪げな風でうろうろするシーンから舞台は始まった。
そんなマックスに初っ端からキスをする恋人のルディ(中島歩)・・・(笑)
このルディって役は長谷川さんの初舞台の役じゃなかったかな?
輸送列車の中で「おいっ、メガネッ!」と呼ばれてキョトンと見返した目が秀逸だったと昔、劇評で読んだ記憶がある

マックスがお持ち帰りをしたウルフが親衛隊と関わりがあったらしく親衛隊が部屋に乗り込んでくる。
ウルフは撃ち殺されたが間一髪で難を逃れたマックスとルディ、国内を転々と逃げ回るがついに二人は捕まってしまう。
乗せられた輸送車の行く先は強制収容所。

移送車両の中でルディは眼鏡に難癖をつけられ暴行を受ける。
ルディの苦しむ声が声が聞こえて来てマックスは居たたまれないが移送車に乗り合わせたホルスト(北村有起哉)は
関わるなと忠告する。さもないと自分も殺されると制止したホルストは胸に同性愛者を示すピンクの三角の印をつけていた。
ルディを知らないと言い続けたマックスは連れてこられた瀕死のルディを殴れと命令され愛するルディを殴り殺す。

強制収容所の場面ではマックスは胸に黄色の星型の印をつけている。
これはユダヤ人の印、ユダヤ人は同性愛者より上のランクになる為扱いがましになる事から
マックスは同性愛者ではないと証明するため監視人の前で少女の屍とセックスをして見せたとホルストに語った。
生き抜くためには出来ることは何でもやるマックス。その執念は凄い!


2幕
2幕以降は殆どがマックスとホルストの二人だけのシーン、白とグレイの大きな縞柄の囚人服に同じ柄の帽子被った二人がすることは・・・。

舞台の上手と下手に人間の頭くらいの石の山がある。
それを右から左へ・・・、左から右へ・・・、ただ意味もなく移すだけの意味もない単調な作業が来る日も来る日も続く。
降ろすときドスンと音がするから石はホンモノと思う。意味のない単純作業を繰り返させ頭をおかしくさせる為だという。
正面には雲が浮かぶ青空が見えているがその前に張られた幾筋もの電線。高圧電流が流れている。
マックスがホルストに言う。
何かしくじると帽子を高圧電流に向かって投げろと言われる。そしてそれを取りに行けと・・・。つまり感電死する処刑だ。
ここでは二人とも丸坊主。最初は髪があったからあれは鬘かも・・・?
マックスはホルストの為に賄賂を使ってここへ呼んだのだという。
ここなら命を奪われる危険が少ないからと。だが話し相手が欲しかっただけだろうとホルストは迷惑気だ。
二人は監視に見つからないように石を運びながら会話を続ける。夏も冬も・・・。
2幕は殆どがこの作業、段が2段あり上ったり下ったり・・・、役者さんもホンとに疲れると思うよ!

夏の暑い日、大きなサイレンが鳴り休憩時間になる。上半身裸の二人は作業を止めて前に向いて立つ。
顔を見てもいけない、話しかけてもいけない、そんな監視下に置かれている二人が前を向いたままセックスの話になり・・・。

私、このシーンのセリフを全部を覚えている訳ではないし、たとえ覚えている部分が有ったとしてもチョッと此処へは書けない(笑)
つまり二人は前を向いたまま言葉でセックスをするのだ!息をすることも憚られるような凄いシーンだった!
そしてホルストは俺たちは生きている、と喜びを爆発させる。
蔵之介さんは相変わらず素晴らしい肉体美を見せてくれるが、北村さんも蔵之介さんほどではないけど、決して見劣りがする体ではない。
それなりに鍛えていらっしゃるみたい(^^)/
舞台の中でも良い身体をしていると褒められたマックスは昼間石運びをした後、夜 筋トレをしているとホルストに語っていたよ(笑)

冬、ホルストは風邪をひいて咳をしているが相も変わらずの石運び。
ホルストはぶっきらぼうな声で言う。 俺はここが好きだ・・!岩が好きだ・・!お前が好きだ・・!と。
話は出来なくても指で左の眉をこするとお前を愛しているというサインだと。
だがマックスは俺を愛すなとホルストに言う・・・、ルディを亡くしたトラウマからまだ逃げられないでいるマックス。可哀想に・・・。

休憩時間になり並んで立つ二人、ホルストは寒い寒いと訴える。
そんなホルストにマックスは優しく語り掛ける。俺が抱いて温めている、温かくなっただろうと・・・。
マックスはそんなホルストの為に賄賂を使って風邪薬を調達するがそのことで監視人に疑われる。
風邪をひいていないマックスに咳をしているホルスト。

監視人はホルストに鉄条網に向かって帽子を投げろという。そして帽子を取りに行けと・・・。
ホルストはマックスに向かって左の眉をなでる仕草をした後、監視人に襲い掛かり射殺される。
死体をかたずけろと命令されたマックスは、舞台上手奥の電線の前で立ったままホルストをしっかりと胸に抱きかかえ、
「俺がお前を抱いている・・! もう寒い思いなんかさせない・・! 愛している・・!」と叫ぶ。
死体を下した後自分の囚人服を脱ぎホルストが着ていたピンクの三角マークのついた服に着かえ電線に向かっていった。
愛する二人、ルディとホルストが居るだろう世界へ・・・。
どんなことをしてでも生き抜くとあれほど執念を燃やしてきたマックスだったが、最後は同性愛者として愛に殉じたのだ!

もう涙・・・涙・・・

カーテンコールに出てきた蔵之介さんの目も真っ赤だったよ・・・。

自分の意思にまっすぐに生きた不器用なホルストも愛おしい!そんなホルストを素直に愛しているといえなかったマックスも愛おしい!
時々笑も起こるけど本当に息の詰まるような、身を固くして見入った舞台でした。

北村有起哉さん、良いねぇーーー!!
蔵之介さんとの息がぴったりの芝居だった。
2幕の殆どが石運びとセリフのみ・・・1時間半の時間をこれだけで持たせるってスゴイと思う
北村さんの舞台を観るのは「メタルマクベス」以来かな・・・?(後で調べたら「道元の冒険」も観てた)

私、佐々木蔵之介さんの舞台を割りに観ている方だと思うが、ハズレは少ない・・・かな?(笑)今回の「BENT」も大アタリ!でした。

BENT

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  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-16

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