たったひとつのもの

たったひとつのもの

広い広い宇宙が
たったひとつしかないと知ったとき
ぼくは愕然とする
この気持ちを知るいのちが
たったひとつしかないということ

確証なんて無いけれど
ぼくの孤独はいつまでも続く
どんなひとと巡り会えても
どんなことに親しみを抱いても
生まれては消える
突然はじまって、突然おわる
それすら何処にも証拠なんて無い

ひとつのぼくはいつもここに在って
ひとつのぼくはいつも
ぼくが何処にいるか分からなくなっている


広い広い宇宙が
数えきれないほどあると知ったとき
少しだけ安心する
この気持ちを知るいのちが
いつまでもどこまでも拡散するということ

証明されてもいないけれど
ぼくの孤独はいつまでも続く
どんな過去を持っていても
どんな未来が待っていても
生まれては生まれ
突然はじまって、突然はじまる
それでも苦しくなる
そのすべてはぼくでしかない

たくさんのぼくはいつもそこに在って
たくさんのぼくはいつも
ぼくでないひとを探している


情報が輪廻するだけならきっと
ぼくは必要とされない
同時多発的に発生したぼくはきっと
ぼく以外をぼくとして認めない
それはただの願いで
願いは事実に変わらないまま
ぼくは押しつぶされてゆく

きみはそこにいますか
ぼくはここにいますか
この声は、だれかに届いていますか

たったひとつのもの

たったひとつのもの

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-16

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