花に埋もれる
花に埋もれる
「触るな、化け物」と叫び、君は僕を突き飛ばした。
カッターナイフを僕に向けて、泣いていた。
怖くないよ、大丈夫だよ。そう言っても、君は怯えて、何を言っているのかわからないとまた泣き出す。
化け物。
君には、僕が見えていないようだった。見えているけど、姿が違うのかな。
来るな。
差しのべた手から、痛みが伝わる。君も、とても痛いんだろうな。
やめて。
やめてっ、て。なにを?
「綺麗な、向日葵畑でしょう。」
ああ、確かに。とても綺麗です。
「昔、よく君と来たでしょう。」
ええ、よく覚えています。
「でも、本当に君だったのかな。」
よく、私も我慢したものだ。
「まだ、化け物は居なくならない?」
こんな化け物と、未だ一緒に居るなんて。
「僕は君に伝えようと思ってたんだ。」
触るな、化け物。
「怖くないよ、大丈夫だよ。」
化け物。
来るな。
やめて。
「ああ、もう、痛いなぁ。」
そして僕は向日葵畑に君を隠した。
せめて夢の中だけでも、幸せになろう。
そう願いを込め、埋めたのだ。
花に埋もれる