ワーカーホリック

突如現れた、その名はウサギ。

ウサギ、山といるウサギである。

それが表れだしたのは、確か私がこの仕事を始めてから五年ほど経った頃である。

私は工場で、ウサギの毛皮を粗悪品と良品とに分け、ベルトコンベヤーに流すいわばブラックな仕事を始めて、人とも話さずただ楽であるという点からこの仕事にやりがいを感じていた。
しかし頭のとれたウサギの毛皮と言うのは生きているころと同様可愛らしく、半ば罪悪感を感じていたのも本当だ。

しかし、この仕事が人が次々辞める本当のブラックであるという意味合いを、私はこの後吟味することになる。

ある朝起きたら、目の前にぴょこんと一匹、ウサギがいた。
布団の上に載っている。横を向けば枕元にも一匹。起き上がれば部屋中に、猫屋敷よろしくウサギがわんさかといた。

「ふごぉっ!」

何事であろうか。私は捕まえてみようとしたが、それはするりとすり抜ける。
ウサギだ、ウサギの幽霊だ。私はウサギに取りつかれた。

以来、道を歩いてもウサギ、レストランに入ってもウサギ、コンビニにもウサギ、駅にもウサギ、ウサギ、ウサギ、ウサギの山である。

腹が減ってうどんを作ったら、丼にウサギが乗って見えた。食欲が萎えた。
私はあまりのウサギの多さに、奇声を発して町中を駆け巡り、稲荷神社に百円五百円と奉納し、お祓いをしてもらったが、なかなか消えぬ。

うがーと絶望してとぼとぼ頭にウサギを乗せて、ウサギの有り余った街を歩いていたところ、シャーッと何かが威嚇して躍り出てきた。
と途端にウサギがぽっ、と焼失した。一匹残らずである。

私はその正体を見た。
一匹の野良猫である。私はそのお猫様に平伏し、そっと抱き上げた。

以来私の家の中は猫屋敷になり、近所から苦情の嵐山のごとしだ。
町中の猫の世話を見ているので、あちらを見ても猫、こちらを見てもなじみの猫ばかりである。

あまり変わらない?まあそう言うな。
要は地獄であるか天国であるかである。

ワーカーホリック

なんかできました。

ワーカーホリック

私は職業病に取りつかれた。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-14

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