うんこ大王とおしっこ王子(大王街に行く編)(3)

三 大王、うどん竜と戦う

「そうだな、何から話をしようか。そうだ、うどんとの戦いだ」
「うどんと戦ったの?」僕は聞き返した。僕の住んでいる街は、うどん屋さんが多い。うどんで有名な街だ。僕は週に一回程度しか、うどんを食べないけれど、パパは、毎日、昼ごはんにうどんを食べているらしい。それにも関わらず、休みの日の昼食も、家族でうどん店に行く。
「そうじゃ。お前が週に一回は食べるうどんだ。うどんは消化するのが大変なんだぞ。特に、この街の人間は、うどんはあまり噛まずに、そのまま飲み込むから、長いままだ。それに、この街のうどんは、手でこねたり、足で踏んだりするから、腰が強いので、消化も時間がかかるんだ」
 そう言われれば、そうだ。でも、大王に言われるまで、そんなことに意識をしたことはなかった。パパは少し固めで、なおかつ、太めの麺が好きだ。だからそうした店に行く。必然的に、僕もそうしたうどんが好きになる。
「ある時だった。突然、喉からうどんが流れてきた。わしは部下たちに、消化活動をするよう命令した。部下たちは、スコップやノコギリ、ツルハシ、包丁などを持って、うどんを切り刻もうとした。すると、それを嫌がってか、うどんが急に顔を持ちあげた。うどん竜の出現だ」
「うどん竜?うどんが竜になるの?」僕は信じられず、大きな声を上げた。
「そうじゃ。うどん竜じゃ。まあ、何万本のうちの一本の確率じゃがな。麺の腰が強くて固く、そして、あまり噛まれずに飲み込まれると、そのうちに麺が変化して、うどん竜になるんじゃ。なぜ、うどん竜になるのか、わしもわからん。とにかく、そのうどん竜が首を持ち上げ、わしらを睨みつける。
このままでは消化はできない。だから、わしは部下に一斉に飛び掛かるように命令した。アイアイサーの返事とともに、部下がうどん竜に飛び掛かるが、うどん竜の皮膚が滑るのと、うどん竜が長い体をくねくねさせるので、部下たちはうどん竜の体を掴まえるどころか、跳ねとばされる始末だ。
 そこで、わしの出番じゃ。わしはうどん竜の前に進み出る。鎌首を持ちあげて、わしを見つめるうどん竜。一色即発だ。互いに睨み合う。お互い、一歩も引かない。わしは猛然とダッシュした。うどん竜をはがいじめにするためだ。だが、うどん竜はひらりと体をかわす。さすがに、うどん竜もわしに掴まれるのを恐れたみたいだ。
だが、ここであきらめるわけにはいかない。再度、身をかわした方に、わしは飛び掛かる。うどん竜が逃げる。その繰り返しが続いた。さすがのわしも息が切れ出した。うどん竜も疲れた様子だ。
 すると、頭の上から、さらにうどんが流れてきた。それも二本。その二本のうどんもうどん竜に変化した。そして、そのうどん竜がなんと合体したのだ。頭が三つ、体が一つのキングうどん竜だ。伝説のうどん竜だ。わしもこれまで見たことがなかった。さすがのわしも一人では、うどん竜三匹が一体化したキングうどん竜とは戦えない。ここは、一旦、退却しようする間もなく、キングうどん竜の頭が三つ、わしに飛び掛かって来た。一匹が正面から、もう一匹が右の方向から、もう一匹は左の方向からだ。逃げ場がない。絶体絶命だ。わしはうどん竜に体を巻かれてしまい、宙に浮いた。
 大王。大王。部下たちがわしを呼ぶものの、なすすべがない。うどん竜の体がわしを締め付ける。痛い。体が折れそうだ。ちぎれそうだ。その時だ。頭の上から、大量の水、いやうどんの出汁が津波のように流れてきた。」
 そうだ。僕は、うどんの麺を食べた後、出汁を全部、飲んでしまう癖がある。ママからは、塩分の取り過ぎになるから、やめなさいといつも注意されるけれど、やめられない。だって美味しいんだから。
「わしやキングうどん竜はうどんの出汁の津波に飲み込まれた。。その津波の勢いで、キングうどん竜のわしの体を締め付ける力が弱まった。今が、チャンスだ。わしは全身の力を振り絞って、キングうどん竜からのがれた。キングうどん竜は、出汁の津波に押し流されて、壁に体をぶつけると動かなくなった。
 今だ。わしは伝家の宝刀を抜き、キングうどんに飛び掛かると首を三本、刎ね飛ばした。全員、飛び掛かれ。わしの掛け声に、出汁の津波から逃れていた部下たちが、包丁やノコギリなど、思い思いの道具を持って、キングうどん竜に近づき、体を切り刻むと、急いで、消化の穴に放り込んだ。
「くそ。今回は」
「油断したが、次は」
「必ず、お前たちを倒すからな」
 キングうどん竜の頭は、体から切り離されたにも関わらず、最後の雄叫びをあげた。わしは、さらに、竜の首を切り刻むと、消化の穴に放り込んだ。こうして、キングうどん竜との壮絶な戦いは終わった」大王は語り終えると満足そうな笑みを浮かべた。
「まあ、そういうことだから、うどんに関わらず、何でも、よく噛んでから飲み込んでくれよ」といやに軽く言う。
 キングうどん竜の話は本当だろうか。僕のお腹の中で、うどんが竜になるなんて、信じられない。それも、三本が一体となって、キングうどん竜だなんて。まるで、マンガや映画の世界だ。僕は週一回ぐらいしかうどんは食べないけれど、パパは毎日、うどんを食べている。すると、パパのお腹の中では、毎日、うどん竜やキングうどん竜とパパのうんこ大王たちが戦っているのだろうか。その戦いのせいで、パパのお腹は破壊されないのだろうか。心配だ。僕は首をかしげるけれど、大王の自信溢れる顔を見ると、信用せざるを得ない。
「わかったよ。これからは、よく噛んでから飲み込むよ。パパにも伝えておくよ」
「ああ、そうしてくれ」大王は気分よく頷いた。
「それと、おなら姉妹のことは話をしたっけ?」大王はなおも話が足りないみたいだ。
「おなら姉妹?」同じ言葉を繰り返した。僕のお腹の中には、竜のほかに、おなら姉妹もいるのか。そんなにいろんな者、物?がいても大丈夫なんだろうか。僕は自分のお腹を見つめた。

うんこ大王とおしっこ王子(大王街に行く編)(3)

うんこ大王とおしっこ王子(大王街に行く編)(3)

三 大王、うどん竜と戦う

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-14

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