今地球は危険
ヒグマが出るからね。
宇宙人よ、引き返せ。
「今な、地球は飢餓期なんな」
「そーなん?」
私の無意味なつぶやきに、父がユーチューブを見ながら答えた。
私は映画の舞台が北海道なので、こないだ読んだファントムピークスというサイコスリラー物の本の内容を思い出しながら、
「だから、ヒグマとかめっちゃ出る確率高いから北海道とか長野県辺りはやばい」
と、テキトーこいた。
父はユーチューブの2ちゃんねるのプチドラマを見るのに必死だ。
無駄だけど時間を潰せる。
そういう理由で、父は2ちゃんの創作小話を愛している。
なかなか泣ける話もあり、なかなか読める。
父に泣ける話?泣ける話見てんの?と聞いたら「もうお父さんのことはほっといてーや、執着せんといて」と気色悪い冗談を言うので、いや目の前にいるからたまたま話してるだけだし私にもやることあるわ、とケータイを見ながら口答えした。
その後釣りバカファイナルを見ながら、「ああスーさん最後は死んじゃうんだ」と可哀想な最後にびっくりした。
三途の川で橋が落ちて、最近のゼネコンの手抜き工事はあきまへんな、と話しているのを見て笑った。
やぁ、こーれは良い映画を見たぞ。
そう山田洋次監督の作品に感服する。脚本とはかくあるべき。
本日180円だったというスイカを食べながら、「何、とーさん種食べれへんの」と言うと、「種は食べたらあかんやろ」と本当に思っているのか不思議な返事をした。
種ぐらい食べれんでどうやって生きてきたの。
そう聞きたくなったが、この人はこれで好かれてきたのだ、と納得がいった。
それから、こないだ公園で変なおっさん見た、と言うので、どんなん、と聞くと、リス連れとって、お父さんにメンチ切って近づいてくるから可愛い言うて欲しかったんやろな、と不思議な話をする。
誰も近寄ってへんかったやろ、と聞くと、うん、誰も近づいてへんかった、と笑った。
映画もハッピーエンドである。
傍で母が寝転んで目を閉じている。犬も寝ている。
この幸せな時間も過ぎていく。
宇宙人よ、地球は最早占拠されている。
諦めて引き返せ。
昼間兄の部屋の戸口に立ち、牛頭馬頭って歌知ってるー?と聞いたら知らん、と平和に返されたことなどしつこく思い出す今日。
今地球は危険
なんやろこりは。