おにぎり

 ぼくには好きな食べ物がたくさんある。
 お母さんの作るお雑煮とか甘くない卵焼きとかチョコレートケーキとかビーフストロなんとかとかすすり始めると息がきれるくらい長いうどんだとか、とにかくたくさん。
 その中でも特に好きなのはおにぎりだと思う。(少し曖昧なのは、あまりにひねりがなくて「本当にこれが1番でいいの?」と思っている自分がいるから)ふっくらとしたご飯で梅とか鮭とか時にはから揚げなんかを包んで、パリッと焼かれた海苔を巻くだけ。こんなに素朴な食べ物なのに、おにぎりには貫禄があるように思えるのはなぜだろう。実はおにぎりって食べ物界の重鎮みたいな存在なのではないだろうか。そこまでいかなくても食べ物村の村長みたいな感じがするのはぼくだけじゃないんじゃないかな。
 ちなみにぼくは、塩昆布を混ぜたおにぎりをごま油の味がする海苔で巻くのが1番好き。あと、ひじきとか鳥五目ごはんも好き。おにぎりって何とでも合っちゃうんだからすごい。おにぎりってとても付き合い上手なのだと思う。だって作り方から包容力があると思わない?
 でもおにぎりって二面性を持っているとも思う。というのは、作る人によっては心がこもった手料理にもなるし手抜き料理にもなるから。
 ぼくはこういう女の子がタイプ。隣の席のレイコさんとか。垣間見えるいつもと違う顔にドキッとしちゃう、みたいな。
 長い考え事の末、おにぎりを頬張る。具はまだ出て来ない。
 今日は何を入れたんだっけ、ともぐもぐおにぎりを食べていると、ぼくの座っているベンチの前を手を繋いだおじいちゃんとおばあちゃんがゆっくり通り過ぎた。
 寄り添っている2人が何かに似てるなと思って、また一口頬張った。
 「……すっぱ」

おにぎり

おにぎり

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-13

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