蛇のようにくねった線路を、
朽ち果てた城から、見下ろしている。
草むらに這う鉄の鱗が輝き、
喧騒とした街並みを列車が切り裂く。

熱い石垣にへばりつく雑草が
深き緑の池に泳ぐ年老いた亀のように
無口な時間を充溢する。

なんてこと。
もう、十分に生きたと言え。
桟橋に着いたばかりの渡が、岸から離れるまで、
誰を探すのか。

誰も、過去から岸に上がるなんて、
信じる者もいない。そこは、
草むした城郭の立て看板だけさ。

もう一度、思い出すがよい。
白壁の小径は、君の記憶の中にしかありはしない。
ならば、本当に見ていたことを書きとめるがよい。

君の言葉が理解されるならば、
今や、ペンキの剥げた白看板と、
物言わぬ池に住まう亀のみだ。
決して、決して。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-06-19

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