クレーンと花束

宙吊りのクレーンが真夏の青空にぶら下がっている。
巨大な振り子のように、
人気無い休日の埠頭で
太陽が恐ろしい歯車の音を軋ませる。

満潮の波が赤錆びた堤防の腸を打ち鳴らし
僕達の黒い影は鉄の扉の倉庫の傍らを
彼女は白いペンキの番号を呟きながら
大股に優しい音楽のように歩く。

彼女は黄色の水玉模様のワンピース
夏の花は 蔓草のような細い腕に
透明なセロハンに束ねられて
小さな紅紫色の愛らしい頭を振っている。

胸の上で花咢が揺れる。歩く度に
白い手の中で、紅紫色の花弁が揺れる。
胸の中の優しい喜悦に歩調を合わせて、
長い黒髪と風が戯れ、僕の心を解き放つ。

クレーンと花束

クレーンと花束

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-06-19

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