クレーンと花束
宙吊りのクレーンが真夏の青空にぶら下がっている。
巨大な振り子のように、
人気無い休日の埠頭で
太陽が恐ろしい歯車の音を軋ませる。
満潮の波が赤錆びた堤防の腸を打ち鳴らし
僕達の黒い影は鉄の扉の倉庫の傍らを
彼女は白いペンキの番号を呟きながら
大股に優しい音楽のように歩く。
彼女は黄色の水玉模様のワンピース
夏の花は 蔓草のような細い腕に
透明なセロハンに束ねられて
小さな紅紫色の愛らしい頭を振っている。
胸の上で花咢が揺れる。歩く度に
白い手の中で、紅紫色の花弁が揺れる。
胸の中の優しい喜悦に歩調を合わせて、
長い黒髪と風が戯れ、僕の心を解き放つ。
クレーンと花束