ルードリッヒ二世

私は王 地上の王 天上の王
黒き森の泉の岸辺に住む孤独な君主
私の最後の城壁は崩れた。
宝石をちりばめた私の剣には
「蒼白」の「ただれた月」が映っている。

森の中で私を傷つけたお前よ、思い返してくれ。
輝く銀河の星と、どこまでも透き通った泉と
夢見がちな私の心を、あれほどに掻き立てた琴の音と、
時間が小船のように泉をすべりゆく波紋を。

私は星神か、太陽神か、
ヘルメスか、アキレウスか、
私の瞳は、いまもなお、妖女の吐息に雲る。
ニンフの泳ぐ泉の底で、私は幻を見た。

そして私は意を決してレテの流れを渡った。
サチュロスの怒号の下を、戦りつに怯えて
雷神の閃光と風神の疾風に刃向かいながら。

ルードリッヒ二世

ルードリッヒ二世

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-06-19

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