星の川
幻のような、君との想い出。
あれは何の星?そう君が聞いた。
「あれは何の星?」
と、君が聞いたのは二年前。
今じゃサラリーマンが板について、このアパートも裏に住んでる婆さんが窓越しにめちゃくちゃ水を掛けてくることを覗けば、ばっちりな頃合いである。
天文学部の幽霊部員として名高かった僕は、君のそんな無垢な質問に、「あれはカシオペア」「あれは北斗七星」と出鱈目を吹き込み、周りから非難の目で見られた。
僕は、君の伸びやかな手足を見つつ、「こんな子が将来大物になるんだろうな」と密かに恐れ入った。
君はあまりに、綺麗だった。
今じゃ雑誌の表紙を飾る君と、出会えたことが僕の自慢で。
道を歩いていたら、帽子を被った君が、グラサン越しに僕を見て、「嘘つき」と笑ったあのことは、僕の胸にしまっておく。
いつまでも、僕の胸で輝く星の川。
君が織姫だったら、僕は牛を連れて、歩いて渡るよ。
天の川に分かたれた二人。
僕は未だどこにも行けずにいる自分を呪いながら、君のCMを見ていた。
星の川
なんとなーく。