扇風機の向き

あなたには、こんな相手が、いますか?

扇風機の向きを、変えてあげる幸せ。

思うに、私は他者との関わり合いによって幸せを得ているなと感じる瞬間が少なからずあり、それは数が多いのだけど、まず一番感じやすいのは、扇風機の向きを変えてあげるときだと思う。

眠っている相手に、風を当ててあげる。
そのことだけで、大袈裟でなく幸せを感じる。
世の中には、こんな大切なことも忘れてしまった人達が沢山いて、そういった人達は、この幸せを知らないんじゃなかろうかと思う。

要するに、他人に優しくしてあげることだから、それに長けているという点では、私は優れている。
私の母が、優れている。

母に習った手解きで、私は今日も幸せを掴む。

なんてことない日常に、エッセンスを加えるように、私は今も扇風機の向きを変える。

単純なこんな動作を、幸せだと感じられた朝。

扇風機の向き

忘れやすい日常の中に。

扇風機の向き

細やかな気配りが、人を少し幸せにする。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-10

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted