ねえ、ちょっと叱ってくれる?
「そんなことしちゃだめなんだぞ。」
君が叱る。僕のことなんて、ほとんど知らないのに。
それでも、真剣な声で言う。
僕は、「そんなことしてないよ」って誤摩化すように、へたくそに笑った。
あれから数ヶ月。
君に叱られることは無い。君と話す機会が無いから。
君から見れば、もっと叱らなきゃいけないと思うような人間に、僕はなっていると思う。
塗り薬で白くなった手首に絆創膏を貼る。少し端がよれてしまったが気にしない。
染まったティッシュをゴミ箱に捨てて、ぼすんっと布団に寝転がる。
今まで後悔なんて、したこと無かった。
けれど、君の言葉に、少しだけ、後悔した。
でも、おかげで君に叱ってもらえたという点では、よかったのかもしれないな、なんて変に前向きに考えてみる。
君の真剣な声が脳裏に響く。
叱ってるのに、どこか心配そうな、優しい声。
ああ、また、叱ってくれないかな...
ねえ、ちょっと叱ってくれる?