ps.サリー

ハッピーエンド遠距離恋愛。

親愛なるサリーへ。

ps.親愛なるサリー。

僕は今、北極を通過しようとしています。寒くて歯がかちかち鳴るよ。
見張り番はきつくてきつくて、眠ってしまえば終わりさ。
サリー、君の済むリバプールは、それは花が綺麗な咲き頃だろうね。僕も帰りたいよ。
君が恋しい。


そんな手紙を受け取って、もう1年になる。
彼の飛行船は今どこを飛んでいるのか。私は思いを馳せる。
不時着して、案外ペンギンなんかと遊んでるのかもよ。

そうキャスリンが茶化してくれて、涙にくれた私も少しは泣き止んで笑う気になった。
彼は今も、どこかで生きている。
そう信じている。まだ無線の電源は切れていないらしい。

トントン、とドアが鳴り、「電報ですよ」と郵便局員が声を上げた。
開けた途端、ヒマワリの花束。

「今帰ったと、お伝えくださいとのことです」

私はバッグを引っ掴むと、後先見ずに走り出した。
「11時の汽車ですよ!」
郵便局員が後から叫ぶ。

駅に着き、私はカールのついた金髪を振り乱して探した。ヒールの靴で欄干に上り、人々を見渡す。

軍服を着た一団が下りてきた。新品の制服に、勲章を幾つもつけて、わあっと人々が声を上げて迎えた。

「サリー」

彼が声を上げて、私に手を振った。

華やかな凱旋。私は人々が見ている中で、彼の腕に飛び込み、その頬に口づけした。

「リバプールの花は、綺麗だろうね」
彼が言い、私は、
「ええ、ヒマワリが、満開よ」
笑って、少し泣きながらそう答えた。

ps.サリー

急に思いついたので。

ps.サリー

親愛なるサリーへ。

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更新日
登録日
2016-08-09

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