耳の中の小人

耳の中に住んでもいいかと聞く。

最初はソファのクッションの中に暮らしていた。

そのみなしご達は、始めは冷蔵庫の裏に住もうと決めていたらしいが、ゴキブリとの戦いに明け暮れ、先日私がとうとう貧血で冷蔵庫を巻き添えに倒れてしまい、存在が暴露してから、それからはソファのクッションの中で暮らしていた。

しかし、父が座ったとき、何度も大きな音が鳴るのに耐えかねて、ひそひそと相談しあったうえで、私の元に直談判しに来た。

「ちょいと娘さん」
耳のとがったやつが言う。
私は寝ぼけていて、これもいつもの夢だろうと、「あいよ」と返事をした。
すると、「私たちは住むところに困ってんだが、あなたの耳の中は掃除が行き届いていそうでとても居心地がよさそうだ。住んでもいいかい?」と聞くので、私はまたおざなりに、「あいよ」と言ってしまった。

さあそれからである。
私のやること成すこと、ケチを付ける声がする。私はそれに従わず、寝てしまったりするので、奴らはやいのやいのと文句を言う。
頭が破裂しそうになったところで、私は一発、犬に耳元で吠えさせて、奴らを追い出すことに成功した。

「さあ、観念しなさい」
私が詰め寄ると、そいつらはガタガタ震えて、「この、嘘つきめ」と私を睨んだ。
「嘘は言ってない、あんたらが騙したんだろう」
そう言って、私はそいつらをフライパンに乗せてこんがりと焼き、卵にくるんで犬に食べさせてしまった。

今でも亡霊らしきものがあっちやこっちや、影だけになって荷物を運ぶしぐさをしているのを見るが、犬には何ともないらしく、ただ見やってはふんっと鼻息をもらし、「くだらない奴らめ」とでも言いたげにそっぽを向く。

小人とは、得てしていらない要素である。

耳の中の小人

久々創作です。

耳の中の小人

小人が、冷蔵庫の裏に住んでいる。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-08

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