恩恵
病が与えてくれたもの。
毎日、私は悟っている。
朝起きると、まず夢の中の語り掛けを思い出し、「いつも知らない音楽が鳴ってるよなぁ」とその調べをなぞる。
私の夢には、いつもポップかラップか知らないが、どんなジャンルの音楽でも、必ず鳴っている。
音楽家の才能、あるんじゃないか。
そう歯を磨きながら考えた、鏡に映るぼさぼさ頭。
こう、こんこんと思想が湧くのは、私が世の中の本質を分かってきたからか、または何か、誰か導いてくれるものがあるからなのか。
後者だと危ない気もするが、ひとえによく学んでいるのだろう、そして眠るうちに、頭の中でよく整理されるのだろうと思う。
文学的に聡いとかなり私の人生で恵まれていることになるが、果たしてまだ、傑作は書けていない。
人には誰でも、信仰心と言うものが少なからずこの国で育てばあると思うが、私はそれを捨ててしまって何年になるか。
ただ、天国があればいいなとは思う。
そう思えば楽しいではないか。夢で先祖に会う理由もわかる。
しかし地獄があれば本当に地獄だ。
しかし単に天国に行けるといっても、その後のお付き合いもあるかもしれないし、案外ここより気を遣う毎日かもしれないぞ。
そんな空論を机に腰かけて考えている二十代だが、果たしてこのまま三十になっていいものか。
この世に生きる限り、相手をするのは生きているものだけであって、健康さえあればなんとでもなる。
それは私が薬を摂取しなければ途端当たり前の日常を失うからでもあり、尊さを知っているからだ。
普通にいられるだけで奇跡的なのに、私は強く意志をもって、この書くという作業を世に向かって行っている。
病的であったなら、読者などつかないだろう。
しかし毎日覗いてくれる人はいて、私はそれを半ば自信に思いながら、今も書いている。
世の漫画家が稼ぎにならずとも向かうように、私もまた日常に挑戦している。
学べることはたくさんあった。歯向かうべき対象も捉えた。後は屈せぬことだ。
命の重さも知らない癖に、いきがる畜生共の存在の疎さよ。
私の相手している病は、そんな相手。
これからももちろん、相手をまじめに勤める気はない。
働け、と言われれば寝るし、起きろ、と言われればもちろん寝る。
この喧嘩が、沢山のことを学ばせる機会を作ってくれた。
そういう意味では、ありがとう、と頭をちょっと下げておく。
とても文学的な毎日だ。
本当に勉強になる。ありがたいことである。
恩恵
実にそう思います。