夢の夏休み

夏が来た、夏が来た。

あの頃、僕らの夢は、10円で買えた。

母が田舎に帰ってから、1週間ほど経った。

僕は毎日予定のない友達と集まっては、駄菓子屋で10円でお菓子を買い、「どこかにお金を出して旅行に行ってるやつは馬鹿だ。こんな美味いものが10円で買えて、こんなに楽しいのに」と言い合っては、暗に予定を作るなよ、とけん制しい合っていた。

その内一人、また一人といなくなってゆく。
「明日俺田舎に帰らんといけん」
ケンぼうがそう言いだして、なんとなくお開きになった。
僕は母を帰らせる一文をなんとか考えつき、手紙を書いた。

翌日、母から電話があった。

「タカちゃん、何よこの手紙ー!本文は人質に取ってありますって、何にもわからないじゃない」

びっくりして怒りながらも、楽しそうな母の声。
久しぶりの母に声を潤ませながら、「いつ帰る?」「来週の土曜日」と僕はやりとりして、電話を切った。

これで父と母の離婚は阻止された。

その夜、祖母の店でラジオを聴いていたら、ジリリリーン、ジリリリーン、とベルが鳴り、「さあ始まりました、今週の歌謡メドレーヒット曲、第一位はー?」と始まり、ダラララララララ、ジャカジャン、と発表するのであるが、どうにも耳についていけない。

ああ、頭の中で鳴るようになったら嫌だなぁ、嫌だなぁと思っていると、実際に止まらなくなってしまう。

今週の第一位はー?ジャカジャン!


と、ここで目が覚めた。
辺りは真っ暗。夕立が来たらしい。曇っている。
お茶を飲みに下りて、名文になるな、と飲みながら思った。
それで書いた次第である。

ありもしない、夏休みの思い出。

夢の夏休み

これで8時間眠りました。

夢の夏休み

夏休みの、とある日の思い出。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-06

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