しあわせ家族

対面の席には若夫婦
三十代
どちらも真面目でおとなしそう
数ヶ月の赤ちゃんもいっしょ
ぷにぷにの色白手足
ちょっとタレ目で四角いお顔
この子もきっとおとなしいよい子

小生の左側には
七十代くらいの比較的お上品なご婦人たち三人
発車寸前にドカドカと雪崩れ込んできた旅行者に席をあけるため
小生も含め全員少しずつ左にずれる
右に座ったのは蛍光色のスポーツシャツを着た少年と母
父はスマホをもってなんやらブツブツいいながら車内をうろうろ
同行家族となにやら相談している
よく見るとよく日焼けして人のよさそうな顔

対面の若夫婦の左に座ったのは
雪崩れ込んできた旅行者の家族その2
左から紫のTシャツの母
その横は青の服の赤のナップサックをもった少年
さらにその横にピンクのナップサックをもったピンクのシャツの少女
兄と妹だ

電車が動き出した
と同時にプーンと唐揚げのにおい
小生の右側で少年がスーパーで買ってもらったとおもわれる
唐揚げの透明プラスチック容器の蓋をあけて
パクパク食べだした
うまそう
それをジッとおどろきとあわれな目でみている若夫婦の右に座っているご婦人
なんでこんなところで食べれるのって言わんとしている
若夫婦も半分あきれた顔をしている

唐揚げを食べていた子がこんどは牛肉弁当を開けている

かとおもうと
対面の家族その2の兄もおなじものを食べだした
妹は唐揚げをぱくついている
腹減ってたんだな
うまそうにたべる
たくさん食べろ
そして大きくなるんだ

弁当を食べあきると
残りを隣のお母さんが食べだした
そうかあ
子供を腹いっぱいにさせ
その残りで親は我慢するのか
えらいなあ
この家族その2

小生の右に座った親子もおなじ
子供の残したものを母が食べて
母は父に席を譲り
つり革をもってダンスしている
元気なお母さん
父はやっとお弁当の残りを食べだし
息子になにやら話をしている
話しっぷりからやさしそうなお父さんにみえる
息子はだまってる
なにか不満でもあるのかなあ

そうこうしているうち
家族その2の少年がリックサックから
食パンを取り出す
一切れを妹に
一切れを自分の手に
むしゃむしゃと食べる
そしてさらにもう一切れずつ

結局電車降りるまで
40分ほどずっと食べて
少年と少女たちは
お腹がいっぱいになって満足したのか席をはなれ
扉のガラス窓のそばで外をながめながら
みんなでなにやら楽しそうに話している

ふと右をみると
スマホをもった父は
そのまま首をたれて居眠り

しあわせ家族

しあわせ家族

昨日の電車の中の風景。書きたいことがしばらくなかったのでちょうどよかった。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-06

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