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きみの唇で殺して欲しかったし、それができなかったからいつまでも孤独だった。夢に見た新天地は味気なくて、きみの心をゆるしてくれなかったよね。さよならなんて何度も誰かに言ってきたのに君にだけ言えなかった。言えないまま会えなくなって君の顔、思い出せない。忘れないでって言ったのにね。ぼくのこころのはじっこから、ぼくを食べていく虫がいる。必要ないよ、さみしさなんて。からっぽになっていくから世界は丸いのかもしれない。永遠に空洞。君を、好きでごめんね。お金しかない。でも、そのお金もないから僕はずっと窮屈だ。ひとりぼっちの夜に眠れもしないで四角い月を見ている長方形の部屋。ひとりぼっち。ゆるせないのは僕のことできみにはなんの関係もなかったよね。死んでいくことだけが決まっていくこの世界で歌い方も戦い方も知らないから、いつまでも友達ができない。ばかだね。きみが勝手にひとりなだけです。さよならを教えてあげたらよかった。そしたら、ぼくはきみを間違うことなく愛せたのに。



20160616

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  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-06

Copyrighted
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