白々しい太陽の下で

伊佐奈(しぐれ)のサークル「Sometime Drop」の宣伝用みたいなものです。

いつか立ち寄ってください。

 アスファルトも歪むような真夏日、コンビニの前で一人、チラシのようなものを持っている男の子が居た。
 平凡に人間の格好をさせたらああなるんだろうな、というような、特筆すべき特徴なんて当然のようになく、注視していないと背景と混ざりこんでしまうような存在感だった。
 男の子は「暑い」という概念すら知らないように、汗一つ垂らさず、さながらケーキ屋さんの前に置いてある人形のように微動だにしなかった。
 それはいっそのこと異常と表現しても失礼じゃないような佇まいだった。
 そんな彼の周りをコンビニを利用した人や、これから利用するであろう人達が行き交っているけれど、誰も彼の存在に気づいていないようだった。
 知らないふりとか、見ないふりとかではなくて、彼という存在を認識していないようだった。
 こんな表現をするのはあまりにも残酷かもしれないが、まだ彼が本物の人形だった方が周りの人間にも気付きようがあるかも知れない。
 どうしてかわからないけれど、なんでなのかわからないけれど、私はその彼を認識することが出来たのだ。
 しかし私に認識出来たのは、彼が人間であることと、性別が男であること、そして年齢が若い、というくらいのものだった。
 例えるならば彼は…………何も例えが浮かばない。と言ったら少しはこの異常性がわかるだろうか。
 私の表現能力を潜在的に高め全ての知識と語彙を総導入して、かろうじて例えられるならば、彼は「毎日乗っている満員電車でいつも顔を合わせている大勢の中の誰か」と言えるかもしれない。
 そう考えると、私にはどうして彼のことを認識出来るのかも、なんとなくだけれど理解できる可能性がある。
 私は彼という人間がどうしてこんな田舎のコンビニ、さらに真夏日にチラシのようなものを持ってああして立っているのかが奇妙で仕方なく、故に簡単に一言でいうならばとても「気になった」。
 私は彼に近寄り、何処を見ているのか、はたまた何も見てないのかは分からないが目の前に立って自身をアピールしてみた。
 そうすると彼は目線を動かすことなく私にチラシのようなものを差し出してきた。
 その動作はまるで機械だった。
 目の前に人が来た。自分がチラシを持っている。だから目の前の人間にそのチラシを渡す。そういうプログラムが体内に埋め込まれているかのようだった。
 私は彼が差し出してきた紙を受け取り、目を通した。

  Sometime Drop
  ビルの二階にあります。
  是非お越しください。

 白い紙に味気ない文字でそう書いてあった。
「これは、どういうこと?」
 理解が追いつかない私は彼にそう訊いてみた。
「見つけてくれるよ」
 彼は無機質にも程がある声でそう言った。

白々しい太陽の下で

かつてコミティアにて無料配布として配ったのですが、自分のミスでアクセス先を書き忘れて配れても全く意味のない行為になってしまったモノです。

白々しい太陽の下で

アスファルトも歪むような真夏日、コンビニの前で一人、チラシのようなものを持っている男の子が居た。 平凡に人間の格好をさせたらああなるんだろうな、というような、特筆すべき特徴なんて当然のようになく、注視していないと背景と混ざりこんでしまうような存在感だった。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-06

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