夜泣き鳥
夜の帳が下りると 柳の小枝の影に
音もなく静かに 蛍が小さな灯をともす
晒しの手拭に顔を隠して
籠を片手に伸ばす指の先から
薄緑の光を放ちながら
闇の彼方に飛んで行った
あの頃の私はただその美しさだけを
追い求めて何処までも駆けて行ったっけ
それがどうしてこんな私に・・・
いいわさ それが浮世だもの
今はあの金魚の絵の団扇を
ひと巻きの敷物に変え
人目を凌ぎ柳の影に身を隠して
ひと夜契りの誰かを待っている
蛍さん あんたはいいねえ
好きな相手と一夜を過ごし
その証を草の根に残して消えちまうんだろう
短い命だけれど まだ幸せかもよ
いつ終わるとも知れぬ命を生きながらえて
毎夜毎夜鳴きながら暮らす夜泣き鳥になっちまった
こんな私に比べりゃあさあ
夜泣き鳥