パルプ小説
1. 2040年 トーキョー
母親が死んだ。
世界の一部が抜け落ちてしまったみたいな気分だ。愛する人を失う。これがどういうことか、わからない人はいないだろう?
わたしには愛する人が3人いる。そのうちの1人、母親が、今日死んでしまった。
母親のことは絶対に忘れない。わたしの心の中には、母親のためのスペースがしっかりとつくられている。死んでしまったからといって、簡単に消してしまうなんてできないし、したくもない。役所の住民登録とは違うのだ。
わたしは本気で母親を愛した。そして、愛される価値のある人だった。
さみしいけれど、このさみしさを憶えていようと思う。それがわたしにできる唯一のことだ。そして、残りの2人を、今以上に愛そう。
わたしの世界は、彼らを愛することで成り立っているのだ。
彼らを紹介しよう。わたしの誇りであり、幸せを与えてくれる存在を。わたしの人生を、意味のあるものにしてくれる人たち。
どうか面倒くさがらないでもらいたい。3人だから、長くはないから。
1人目は母親だ。彼女は、昨日死んでしまった。40代後半なのに、活動的で、年齢を感じさせなかった。
好きなことは、庭でりんごの木を育てること。りんごとチーズが大好物で、チーズ入りのメインディッシュと、りんご入りのデザートをつくることを人生の喜びとした。中でもお気に入りは、それら2つが一緒になった、りんご入りのチーズケーキだ。食べた瞬間の顔を、わたしは鮮明に覚えている。
「こういうのを奇跡っていうのね!」
息子のわたしですらどきまぎしてしまうくらい魅力的な笑顔で、彼女はいうのだった。月に1回母親がそれをつくり、愛する3人とわたしで食べた。庭になっているりんごでつくるので、それ以上のペースではつくれない。でも、月1回くらいでちょうどいい。それ以上食べてしまうと幸福すぎて、どうしていいかわからなくなるだろう。
美しかった母親には、いつも男が言い寄っていた。だが母親は、決して誰かのものになることはなかった。亡くなったわたしの父への義理立てというわけではないようだった。単に相手が不満なのだった。
「あいつら、ふにゃちんなのよ」
と母親はいった。わたしと母親は、何でも話す間柄だった。
母親はここ1週間ほどで急に体を壊し、亡くなった。死期が近づいていることが分かっていたようで、それとなく死を仄めかすようになった。
驚いたのは、自分の死ぬ時間まで知っていたことだった。
「あんたが仕事に行く前にするね」
と母親はいった。母親は死ぬ時間をコントロールできたのかもしれない。
わたしは母親の予告時間通りに母親を看取り、いつもの時間に仕事へ向かった。仕事中は、涙を見せないようにした。わたしの個人的な事情のせいで仕事に支障をきたすことを、誰も望んでいないのはわかっているから。休むなんてとんでもない。周り全員が仕事をしているのだから、大多数の行動に合わせて生きなくてはならない。現代人たるもの、当然だ。
それでも、わたしはラッキーだった。忙しい人は、死後3週間の腐った母親を家で発見するということも、ざらにあるようだからだ。母親はわたしたちに見送られ、美しいまま死んでいった。
2
2人目は、親友にしよう。
彼のことはよく知らない。
まず、名前を知らない。どこで生まれ、どこに住み、何の仕事をしているのかも知らない。連絡先も知らない。彼の理想や女性の好みも知らない。
彼について知っていること。背が高くて、ハンサムだ。身体もがっちりしているし、神秘的な真黒い髪と目を持っている。目は、わたしとよく似ている(とわたしは思っている)。その目を大きく見開きながら、わたしの話を大真面目に聞いてくれる。わたしの母親と恋人と喋るのが好きだ。そして、りんご入りチーズケーキが大好きだ。
彼は都合のいい時間を見つけると連絡し、颯爽とわたしの家を訪ねてくる。いつも古ぼけた、茶色い革張りのトランクを抱えてくる。これは人がひとり入りそうなくらい大きい。その中に、聞いたこともない外国の食べ物だとか、置物だとかをつめこんでくる。世界中を飛び回っているのだろう。
彼は何でも知っている。この家も、仕事も、恋人も、全部彼に紹介してもらったのだ。彼の助けなしでは、どうやって生きていけばいいのかわからないくらいだ。
そして、月1回のりんご入りチーズケーキを食べる日には必ず現れる。そんな彼がわたしは好きだ。
母が自らの死をいいだしてからは、自分の生活も省みず、毎晩来てくれた。一晩中母親の手を握りながら話しこんでいた時もあったし、寝ている母親の傍について、涙を浮かべている時もあった。そういう彼を見ていると、彼が友達でよかったとつくづく思ってしまう。
もちろん、彼がどんな暮らしをしているか気にならないといえば嘘になる。しかしその面を含めて、わたしたちは彼を、心から愛している。必要になれば、彼のほうから話してくれるだろう。それでいい。
最後は恋人だ。
恋人は、わたしの理想そのままの女性だ。まっすぐな黒髪で、きめこまやかな肌をしている。背が高くて、目は青い。服を着ているとすごく痩せて見えるが、脱ぐとそう見えない。めかしこんだ服装は好まないが、わたしをよろこばせるために色っぽい下着はたくさん買いこんでいる。ヒステリーもおこさない。何より、母親と親友との仲が抜群によい。
出会いについて話そう。ある時親友が連れてきてくれたのだ。しかも、わたしの好みそのままの女性を!
親友が、わたしに女性の好みを訊いたのが始まりだった。わたしは顔を赤くしながら、正直に話すよう努めた。
わたしは、胸は大きい方がいいとか、気立てはいい方がいいとか、そんなことを伝えた。
それでは全然だめだった。ありきたりすぎて、好みと呼べるものじゃない、と親友はいった。親友が欲した情報は、枝毛は何本まで許せるかなど、もっと詳細なものだった。そこまで深く考えてみると、特に思いつかなかった。わたしには女性の好みがないのかもしれない。
困った親友は、わたしのためにアンケートをつくってくれた。紙に書かれている選択肢から、好みのタイプを選べばよかった。こんな感じだ。
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目は、
【サイズ】 1.大きい ✓ 2.小さい
【色】 1.青 ✓ 2.緑 3.茶 4.黒
【濃度】 1.濃い 2.淡い ✓
【立体的か】1.彫りの深い ✓ 2.平らな
方がいい。
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もしそれ以上思いつくことがあった場合は、余白に記入すればよい。
こうした親友の努力により、わたしの好みのタイプは、かなりはっきりした。
そして記入から3日後、親友は実際に望み通りの恋人を連れてきてくれた。
それが、今の恋人だ。
正直な話、自分にはもったいないと思ってしまうこともある。深夜恋人を抱いた後、泣きだしそうになってしまうのだ。わたしの腕に抱かれているのが、嘘のような気がしてくる。こんな美しい女性が、自分を好きになる理由がわからない。
そういう時に、恋人はわたしをやさしく抱きしめながら、こういうのだった。
「あなたの全てが好きよ」
わたしが余白に記入した通りの答えだ。「わたしが自分に自信をなくしたときは、わたしの全てが好きだといってほしい」とアンケートの最後にわたしは書いた。こういうところひとつとっても、つくづくわたし好みの女性だなあと思ってしまう。
清覧ありがとう。これが愛する人の話だ。恐らくわたしの話の中で、最も面白い部分だ。
後はわたしの生活の話しか残っていない。退屈だから、飛ばしてもらって構わない。
3
わたしはクリーニングの仕事をしている。この国で唯一のクリーニング会社に勤め、朝から晩まで衣類を洗濯している。10年前にクリーニング産業の効率化を目指す法律が可決され、わたしの会社が独占して国中のクリーニングを担当することとなった。各家庭から洗濯機が取り上げられ、国中の洗濯物がわたしの会社に集まってくるようになった。当然雇用は減るが、代わりに地球温暖化は防止された、と政府がいっていた。
母親が死んだその日も、仕事へ向かう時間は変わらない。母親の死のせいで動揺はしていたが、結局いつも通り、朝6時に家を出て、夜3時に帰ってくる。といっても、家まで新幹線で2時間かかるので、夜1時には仕事を終わらせてもらっている。こんな職場にいれて、自分は恵まれていると思う。
仕事から帰宅する。時刻は夜3時。いつも通りだ。
だが、家には誰もいない。
恋人はまだ仕事から帰ってきていないようだ。ひとりで椅子に腰かけていると、今朝死んだ母親のことを思い出し始める。考えているうちにだんだん悲しくなってきて、わたしは静かに泣く。
なんだか無性にさみしくなってきた。恋人を抱きしめたい。
恋人はまだ帰ってこない。
母親がいなければ、この家で毎日のように顔を合わせることができるのは、恋人だけになる。今みたいに、ひとりでいることが増えるだろう。さみしくなるに違いない。
わたしは帰ってきたら恋人と一緒に飲もうと思い、白ワインを冷蔵庫に入れる。そして、レタスを切りはじめる。サラダをつくろう。母親が好きだったチーズをたっぷりかけて。恋人は小食なので、サラダとパンさえあれば、それだけでお腹がいっぱいになってしまうのだ。当然、デザートにはりんごをむこう!
サラダにチーズを振りかけている時に、ふとワインがどれくらい冷えたか気になった。
わたしは時計を見る。
それで、現在深夜4時だということに気づく。
わたしは諦めてベッドへと向かう。明日も朝6時に起きなくてはいけない。恋人はすぐに戻ってくるはずだ。深夜5時に帰ってきても、1時間は寝ることができる。
ひとりでサラダを食べる気も起きず、ラップをかけて冷蔵庫へとしまう。
静かな夜だ。
わたしは裸で眠ることにする。パジャマを着てもよかったのだが、これには理由がある。
考えてみてほしい。
そのうち恋人が戻ってくる。寝室に入ると、恋人はわたしが裸で眠っているのを発見するだろう。恋人はくすっと笑いながらも、自分も裸になって、わたしに抱きついて眠る。これによって、朝に目を開けた瞬間、わたしはすべすべした恋人の肌の感触を楽しむことができるのだ。
完璧なプランだ!
4
このプランは失敗だった。
親友が訪ねてきたのだ。
ドアをたたく音が聞こえる。
「おい、いるか!」
と声が聞こえる。あの声は、間違いない、親友だ。
わたしはベッドから出て、パジャマに着替えると、親友を迎える。親友は、いつもの大きなトランクを抱えている。こんな時間でもスーツを着ている。いつでも完璧なのだ。
「母親のこと、ご愁傷様」と親友はいう。「最後の時に、そばにいてやれなくて、ごめんな」
なんてやさしいんだろう。
「母親も、最期まで親友のこと考えていたと思う」
とわたしはいう。
親友は、言葉に詰まり、ちいさく笑う。やはり、母親の死がショックなのだろう。「その……」
と何かいおうとして、しばらく黙りこんでしまう。わたしは、また泣き始めてしまう。親友はわたしが落ち着くまで、頭をなでてくれる。
すこし落ち着くと、わたしは冷蔵庫に入っている白ワインと、サラダをすすめる。親友は「大丈夫、ありがとう」と断ると、大きく息を吸い込む。
「その……」
と、また親友が話を始める。わたしは涙を拭いて、話を聞くつもりがあることを見せるため、笑顔をつくる。
親友はそれを見て、小さく笑う。その後、戸惑いの表情を浮かべる。「こんなことはいいたくないんだ」
わたしにはなんのことだか分からない。親友はちいさく「くそ」という。
「お前の恋人が、出て行った」
そんな、とわたしは思う。信じられない。だがなんといっていいかわからなかったので、わたしは黙っている。
「うちに電話が来ていたんだ。出ていくと伝えてほしいと。それだけだ。理由も何もなかった。何か、伝言とか残ってないか?」
わたしは首を振る。全くない。母親と恋人がいないことを除けば、全てがいつもの通りだ。
「その、浮気じゃないとは思うんだ」
と親友は続ける。わたしは頷く。恋人はそんな女性ではない。余白にちゃんと記入した。浮気はしない女性が好みだと。
「もしかしたら」と親友は続ける。「今日の今日出て行ったということは、君の母親と何か関係があるのかもしれない」
親友は、意見を求めるような目でわたしを見る。
心当たり?
全くない。
わたしは肩をすくめる。親友は、それを見て目を逸らす。わたしは罪悪感を覚える。親友に、こんなに気をつかわせているのだ。
わたしはため息をついて、
「いいさ。もともと、わたしにはもったいない女性だった」
という。そのまま親友を見ずにあくびをし、
「それよりも、明日も仕事なんだ。早く寝ないと」
と、眠たいふりをする。
本当は眠っている場合ではなかった。明日から、わたしはこの家にひとりで暮らさなくてはいけない。考えただけでも恐ろしい。わたしは誰にも愛されることなく、りんごを自分のためだけにむいて、自分で食べるのだ。親友の連絡先も知らないし、他に知り合いもいない。わたしは何のために生きていけばいいのだろう?
でも、わたしは感情的にはならなかった。
考えてみればわかる。そんなことを親友にいえるだろうか? この世で唯一わたしのことを心配してくれている友に? いえるわけがないのだ。
親友の負担となる前に、ベッドの中で1人泣いて寝てしまおう。明日になれば、すこしは落ち着くはずだ。
わたしは寝室に向かう。親友のほうは振り返らない。見たら、また泣いてしまいそうだからだ。
今日は本当についてない。
いや、違う。
今までがラッキーだったのだ。あんなに愛されて、その分わたしも愛することができて。
5
もちろん親友は、わたしをそのまま放っておくタイプではない。
「お前がいわないようだから、俺が代わりにいってやる」と親友がいう。「今日はお前にとって、人生最悪の日だ。お前は、泣いても怒ってもいい。当たり前だ。お前には、その権利がある」
わたしは振り返って笑顔をつくる。対照的に、親友は疲れた顔をしている。端正な顔が憂いを帯びると、すごくかわいそうに見える。
そうだ。今わたしが一番つらいのは、母親の死でも、恋人の失踪でもない。この残った友に、つらい気持ちを味あわせなくてはいけないことだ。親友は何も悪くない。なのに、どうしてわたしのために、こんなに悩まなくてはいけないのだろう。
わたしは、ひとりの完璧な人間を不幸にしている。それって、結構みじめなことだ。
「大丈夫」とわたしはいう。「こんなのへっちゃらさ」
親友の表情が曇る。
「わたしみたいな男には、お似合いだ」
親友の表情は一層険しくなる。
「だって考えてみろよ。美しすぎる恋人、活動的できれいな母親、完璧な親友。このうちどれかひとつでも、わたしにふさわしいものがあるか? 今この時だって、完璧な親友がそばにいてくれる。これだけだって、わたしにはもったいない」
親友は目を閉じ、手で顔を覆う。
「わたしはひとりでネットサーフィンをして、一日を無駄に潰しているべき人間だよ。いや、ネットだってわたしにはもったいない。こんな人間でも、家はあるし、ご飯も1日3食だし、寝る時間もくつろぐ時間もある。わたしみたいな人間にだよ? 何もかも、わたしにはもったいない」
親友の目が潤んでいる。そのまま後ろを向き、長い間振り返らない。
わたしはただ、彼の悲しむ顔を見たくなかっただけなのに。
「お前に必要なのはネットじゃない。食べ物でも、くつろぐ時間でもない」と親友はいう。声がうわずっている。「居場所だ。お前を必要としてくれる人がいて、お前が必要とする人がいる」
そうか、わたしにはもう居場所がないのだ。
6
わたしと親友は、冷蔵庫に冷やしてある白ワインを開けることにする。わたしたちは乾杯もせず、無言でグラスを口に運ぶ。ワインは冷えすぎている。
親友はいつも持ってくる大きなスーツケースを開く。
「いわなきゃいけないことがある」
わたしは頷く。
「あまりいいたくないことだ」
「問題ないよ」
わたしは口元だけで笑顔をつくる。親友は頷く。
親友はスーツケースの中から、書類を取り出す。
母親の死亡届だ。
わたしは、またすこし悲しくなる。
「役所に提出しなきゃいけない」
わたしは頷く。
「でも」と親友はいう。「出さないほうがいい」
「どうして?」
「その」と親友はいう。「どういう風にいったらいいか」
わたしは笑顔をつくり、
「大丈夫」
と答える。
親友は真顔に戻り、頷く。
「お前の母親にいわれた。提出した時点で、居場所がばれる。そうすると――」
親友はそこで会話を中断する。わたしは黙って親友の目を見る。親友は口に人差し指をあて、
「静かに」
と声に出さず、口の動きで伝える。わたしは頷く。車のヘッドライトの明かりが外に見える。やがて、車の運転音が聞こえてくる。車は家の近くに停まったようだ。
親友は真顔で、
「声を出すな」
とだけいうと、わたしを裏口へと連れていく。裏口のドアを開け、
「走れ」
とわたしにいう。わたしがぽかんとしているのを見ると、親友はわたしを無理にでも押し出す。
「痛い!」
とわたしはいう。
「早く行け!」
「何、何があったの?」
「説明している時間がない。早く行け!」
親友はそういうと、わたしの尻を蹴る。正面玄関のドアがノックされる。「でも」とわたしはいう。親友は一緒にこないのだろうか。親友はわたしにウインクをすると正面玄関のほうへと歩き出す。
「俺は大丈夫だ。ただお前は、ここにいると殺される」
わたしは立ちつくしたまま動けない。チェーンソーの音がする。正面玄関の鍵を切り裂いているのだ。
「約束する。全ては元通りになるから」
正面玄関のドアが開いたようだ。足音が中に入ってくるのが聞こえる。
親友は正面玄関へと進むと、入ってきた人間に話しかける。
「ここを爆破する」
足跡は外へと走る。わたしもそれを聞き、裏口から外へ出て、裏の森へと急ぐ。
そして、家が爆発する。あまりの爆風に、わたしは吹き飛ばされそうになる。木にぶつかり、意識が朦朧とする。その場でしばらくうずくまりたかったが、わたしはゆっくりとでも、歩かなければいけなかった。
全身が痛い。一体何が起こったのだろう。わかるわけがない。誰が一体何の目的で、わたしの家を爆破し、わたしを殺さなくてはいけないのだろう? わかるわけがないのだ。
わたしにでもわかる悩みといえば、明日仕事に行くかどうかだった。行かなければ会社の皆が迷惑する。でも、金も定期券も燃えてしまった中で、300キロの距離を歩いて通うのは不可能だ。とすればヒッチハイクだろうか。いや、できない。でも無断欠勤なんて、考えただけでも鳥肌が立つ。
森の反対側に出たところで、わたしは倒れてしまう。仕事に行かなくてはいけない。こんなことは、有給休暇を使うほどの緊急事態じゃない。遅れても、何がなんでも、行かなくてはいけない。無断欠勤だけは……。
その後15時間、車通りは多いのに、停まってくれる車は1台もなかった。その日わたしは仕事に行くことはできなかった。
親友は、すべてが元通りになると約束してくれた。
親友を、信じよう。
親友を――。
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