あちこち

どこにいても、何か考えている。

電車表を見ながら、考えた。

私は普段から外に興味がなく、人ん家の盆栽や花や下町の商店街など眺めるのが好きで、どこにも遊びに行かずにいる。

しかし、今日は病院の帰り道、初めて地下鉄に乗った。

実に簡単なコースだったのだけど、待ち時間に電車表をじっと見て、どこへ行けばどうなる、どこどこへ行ける、と学びながら、ふむふむとやっていたら、あんまり真剣に見ているものだから、「キモイ」と言われてしまった。
こちらの慣れた人たちにはわからないだろう。

その後電車が来て、ドア付近に立ち、窓に映る人たちを一人ひとり密かに観察しながら、すぐに駅に着き、降りた。
改札を出て、道を歩いていたらどうも自転車側の道路だったらしく、自転車が坂を上ろうと飛ばしてくる。

なんだ、えらい迷惑になっているな。

そう思い、急いで歩いた。
信号に着き、赤信号の下立ちながら「今日は30度超えるな」と考え、青になったので渡って、商店街に着いた。

色々と見て回ったが、服など「その油断が、命取り」という気がして、我慢した。
眺めるだけ眺める。
果物屋が、「はいお姉さん50万円、あと一つで50万円、はい買った買った!」と映画よろしく声を張っており、飛ぶように売れていた。
あー、この空気か。

この空気で、お客さんが着くのか。

一つ学んだ。
その時のシーンなど、再現したいが上手くいかぬ。ただ祭りのようだったと言っておく。

病院で若い先生が、意味ありげに顔をおかしな具合で上げては睨むように見てくるので、「これはこの人がお嬢さんなだけだろうか」と考え、まああれも治療の内だろうと納得する。

そういったことに耐えうる精神を養っていくのが私の課題であって、決して腹が立つことではない。
おかしな人とはどこにでもいる。

帰りにバスでお婆さんが寒そうにしていたので、送風機を動かして、温度を調節してあげた。
今考えれば、あれもいらないお節介だろうか。

まあ、人とは案外強いからなぁと考え、目の前のモデルのようなお姉さんを眺めて「かっこいー」と思ったりしながら、ぶらぶらと日傘をさして帰った夏の日。

余計なことは言わないように。
そう学んだ先生との診断。先生のルールの上で、私は生きている。

ともあれ、信頼されているというのは良かった。
いつもそう言ってくれる先生に、心の中で感謝する。

注射するとき、看護婦さんに貧血を起こして倒れたことを伝えたら、一度血圧を測られ、すると低血圧であるとわかった。
うーむ、用心用心。

もうすぐお昼である。

あちこち

今日のこと。

あちこち

あちらこちらで、考えた。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-02

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