仮想恋愛

「あのね、好きな人ができたんだ」

そう。

ほんの少し照れた様子で呟いた陸はとても幸せそうで、
(思わず泣きそうになった)

青い空にふわんと浮かぶ雲
さんさんと降り注ぐ太陽はレモンイエロー
汗ばむほどの光に肌上にじわりと浮かぶ汗の滴

(あっつい…)

夏に近く暖かすぎる日
出来ることなら部屋にこもって、氷がたくさん入ったジュースでも飲みたいところなのに

けれど

(陸のアホ、バカ、なんでこんな日にデート?)

空!今日は彼女とデートなんだ!
そう嬉しそうに、漏らしていた。

(デートだと?あいつに出来るわけがないでしょ…)

嬉しそうな笑顔
いつもより弾んだ声
ほんの少しだけめかし込んだ服装

その全てに苛々が募り、気がつけば陸の後を追ってデートの待ち合わせ場所まで来てしまっていた

(人の気も知らないで)

ちらりと視線をやれば終始嬉しそうに腕時計に目をやる姿が小さく見える

いっそすっぽかされてしまえばいい

心中で本音が出てしまった

(……あ)

視線の先

ウェーブのかかった茶色の髪をした女性をみつけた瞬間
視線の向こうで彼が小さくほほ笑んだ
ふんわりとした白いワンピースを上手く着こなした女性
遠目から見ても素直にキレイだと思える人だった

(あ、何か…無理かも)

お互いに笑顔を振りまく様子で軽く手を握り合い
背を向けて歩いて行く二人の姿を見てその場にしゃがみ込んだ

(何で…ムカつく)

体がぶつかるほど寄り添って歩く姿は悔しいほど似合っていて
それが余計に腹だって悔しくて、


「あ、おかえり…?」

店のとびらを開けると同時に不意に聞きなれた声が響いた
重い視線を持ち上げれば汗だくでたこ焼きを焼いている上司の姿が目に留った

「なんか顔色悪いぞ、大丈夫か?」
もう声を出すのにもしんどくて相手には悪いが首を横に振るので精一杯だった

(日差しが強くてよかった)

吹き出す汗の中に頬に伝う涙を隠しきれたことに感謝して

仮想恋愛

テスト投稿です
続いたり続かなかったり。
前提の話だったり夢だったり様々。

仮想恋愛

自分より素敵な人を見ると嫉妬しちゃうんですよね

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-06-17

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted