大人の流儀

最近ざるそば屋に入りました。

たまには北風が吹くこともあります。

私は思春期より、永らく病んでいた時期が多かったのだが、最近めざましい努力により(読んだり書いたり、見て遊んだり)ようやく悟りの境地に得たというか、とりあえず自意識過剰であるということを自覚し、そんなこんなもあって外出することに抵抗を覚えなくなり、さっそく父と兄との外出に繰り出した。

27ともなると大人で、ここで書いていることなど勿論誰も知る由がないはずだが、書くことによって影響が様々あるという誇大妄想が抜けず、とりあえず褒められるようなことを書こうと画策してみようか。

ちんぴらにからかわれながら、そんなようなことを考え、「それなりの評価をいただけるという立場にもしいるとしたら、本来無名であるはずなのに、これほど褒められた立場はない」とポジティブシンキング。

あちこち商店街を覗いて、一軒のざるそば屋に立ち寄る。
少々値は張ったが、なかなか面白いしつらえの店で、きっちりして高麗焼のような皿など飾っている割には椅子が互い違いだだったり、灰皿が青磁焼きの立派なところが気に入った。
ただ、ティッシュもおいて欲しいと思った。

なぜならここは温かいものを出す店だ。
当然汗も鼻も出る。
しかし「うちの店でそんな汚いもん拭かんといてーや」みたいなツンとすました姿勢も見え、要するに自信が見えて、気持ちが良い。
冷房もちょうどいい贅沢使いだ。

さて、私たちは店員さんにそれぞれ「天丼頂戴」「きつねうどん一つください」「ゴージャス盛り一つ」と時間をかけて注文し、「時間がかかりますが良いですか」と言われ、父が「少々ならね」とうまく返した。

大人の厳しさと駆け引き。

私はこのやり取りに見た。
私なら、「はいはい構いません、私なんて」と謙遜しまくり、一時間は待たされるだろう。しかし父はそれをくぐり抜けた。
なかなか聡そうな女中さんがいなくなってから、これからのことをやんややんやと話し込む。

父は策略に策略を練って、仕事を着々と手にしているらしい。

それは松下幸之助もうなる人の喜ぶやり方で、「やっぱり仕事とは人の喜びにつながるんだねえ」と感心したら、「それが商売のコツ」と父は当たり前のように言った。
なるほど、人脈を持っている人は違う。

私もこういったところを学ばなければ。
しかし生憎、直感のほうが当たりやすい。私は男じゃないし、腹が黒いと思われても適わぬ。
このままお馬鹿でまじめに生きよう。

兄は介護士の30代が仕事に一日だけ来てばっくれた話をし、「あれは社会人じゃない」と怒っていた。「辞めるならそれなりの筋を通せってんだ、なんだあのやり方は、餓鬼か」

兄は立派な大人の男である。

さて、バイトらしき若者が、メニューを持ってきてくれた。
受け取って、頭を下げる。
さて、食べてみると、値が張るだけあって美味い。
父の海老天など、すごいでかさだ。

私も、それなりに見合うものを書かなくては、一生きつねうどん780円だぞ。

そんな気持ちで、「このお揚げぷわぷわでうまー」と食べる。
一人他の客もいたが、昨今の世の中の影響か、暇つぶしにこちらにカメラなど向けてきたり、さも邪魔をしたいというような態度を取ったり、大人げない。

そんな奴がタバコを吸うなんて、なんだかおかしい。

君はまだまだ、成人してないぞ。そう思いながら、うどんの汁は飲まずにおいた。
店を出ると、父はパチンコへ。兄はコンビニへ。私は近所のペットショップにより、ヤドカリが入荷しているのを見ていると女の子が出てきて、一緒に無心になって眺めていた。
カブトムシやクワガタなど、甘い匂いがして童心に帰れる。

家で買うのはなんとも無理だな。

そう一人ごちて、家へと帰る。
帰る途中で、やけに老けた母親と、小さな女の子が暑そうに歩いていた、「あ、こいつらはなんか言うぞ、言うぞ、ほれ言うてみい」と歩いていたら、母親が子供にささやき、「このおばはんは傘も持ってへんのか」と子供に言われた。

あーたね、言う根性もないならもう、黙っとけよ。
子供が殴られでもしたらどうする、と若干呆れ、正々堂々としていないそのやり口に反感を覚えながら、案外気にもせずに帰る。

あれも大阪らしいではないか。

そうか、私はもうおばはんなのか、と納得しながら帰る。途中綺麗にお洒落したお嬢さんとスレ違い、「眉目秀麗とはこのこと」と観察して帰る。
私は肩幅が張ってる、張ってると思っていたが、こないだ貧血で冷蔵庫を引き倒してぶっ倒れた頃、痩せた肩を見て思った。

うん、これ、骨格から張ってるね。

痩せても肩がでかかった。
そう言うと、「ロシア人みたいでいいじゃん、モデル体型モデル体型」と適当に慰められた。
「モデルになるには、あと三回くらい整形しなくてはダメだよ」
笑ってそう言うと、皆受けた。私は見の置き所を知っている。

どうにも、男っぽいんだよな。
そうたくましく思いながら、「女の腐ったのよりはマシだ」とちびちび嫌味を言われた過去の人達を思い浮かべてそう思う。

見た目がいいからって、褒められるというもんではない。
中身も伴わなければ、器の持ち腐れだ。

そのようなことを考えながら、今日出会った情けない男どもの愚言を思い返し、「ヘッ」と笑う。
女にかかってくるとは、情けない。

これが私の相手にする世間です、と私はこの文を閉じようと思う。

では。

大人の流儀

ノンフィクション。

大人の流儀

ざるそば屋にて考えた。

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-01

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