蜘蛛の子
蜘蛛の子を見つけた。
何を思ったか、次第に腕に上ってきた。
部屋に蜘蛛がいる。
最初は驚き、どうしようか考えたが、ノミなど食べてくれることを考えて、放っておいた。
一か月経っただろうか。寝転んで時代小説を読んでいたら、目の前に構えるように、その蜘蛛がいた。
何か決意したかのように、六本足で踏ん張って、じっとこちらを見据えている。
ほっといた。
テレビに目を移し、小説に戻ったら、なんとさっきの蜘蛛が腕に乗っていた。
これには面食らった。
が、一寸の虫にも五分の魂と念じ、潰さなかった。
すると、するりと蜘蛛はどこかへ行った。
何か、試されているものがあったな。
そう思う。
一週間後、病院へ行った。
椅子に座っていると、蟻か何か、手を昇ってきたので、逃がしてやろうとみると、蜘蛛の子である。
しばらく弄び、蜘蛛もこう小さいと可愛いもんだ、と思って逃がそうとしたが、ドジな蜘蛛で、なかなか腕から降りられない。
椅子の背に乗せようとしたら、間違えて潰してしまった。
これで蜘蛛の糸が垂れることは無いな。
そんなことを思い、私はなんだか戦慄した。
蜘蛛はまだ、部屋のどこかにいる。
今日も元気に、壁を這っているのを見た。
まだ救いはあるだろうか。
そんな幻想を思い、軽く頭を振った。
蜘蛛の子
実話です。