ENDLESS MYTH第3話ー17

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 とぐろを巻く巨大生物は、腐った根の大木を骨で構成された尾で薙ぎ、一気に悪臭が周囲に充満した。
 鼻と口を抑え、臭気による脅威を防ごうとした。
 が、そこで動きが鈍くなった5人に、巨大な蛇の化け物が襲いかかる。
 顎を大きく開き、ワニを連想させる牙を剥き出し、骨で構成されたその肉体に、へばりつくような筋肉で顎を一気に閉じた。
 真横になって薙ぐように水面付近を、カミソリの如く刈ろうとする。
 これを跳ね上がり根の柱をどこまでも中空へと登っていった。
 けれども先は見えず、5人の足元からは大顎を広げた化け物が迫ってきた。
 地獄の入り口が尻にかじりつくかのように登ってくるのを、怪訝にみたイラートは、中空て飛行するのを停止すると、掌を化け物めがけて振り下ろした。
 瞬間、中空に稲光が轟き、化け物を覆うほどの巨大な稲妻が落ちた。
 通常の落雷は最大でも50万アンペアであるが、この時、彼が起こした凄まじい稲妻は、200万アンペアを凌駕していた。
 これは生物が黒焦げになるには十分な電流である。
 おれの能力なら、簡単に殺せる。
 そう言いたげな小僧の笑みを浮かべたイラート。
 だったが、黒煙の中から巨体は黒煙の糸を引き、イラートへ突撃してきた。
 余裕の少年の表情はまたたく間に蒼白になり、その場から疾風のように飛行して逃げていく。
 しかし化け物の滑空速度は尋常ではなく、肋に覆われた蛇は、枝に巻き付くように、根の大木を巻きながら、腐った風を切る。
 この光景が数百メートル規模で起こるのだから、壮大も極みの光景だ。
 必死に速度を上げ、逃げようと飛行する5人。
 と、その先にあった暗闇が突如として白い壁に覆われた。
 が、それを壁でないのに気づいたのは、鋼鉄の大男だ。
「なんと、でっかい手か!」
 そう、彼らの身体を全身覆ってもまだ、あまりがあるほどの、数キロにも及ぶ白い掌。
 それが2つ現出するなり、彼らをはたき落とそうとする。
 これに急ブレーキして発泡に散る5人。
 ところが両側に開いた白い掌は、凄まじい速度で両側から迫り、まるで虫を無慈悲に叩き潰すように、潰した。
 その衝撃は隕石の衝撃波の如く、腐った根の大木を複数破壊して、腐った木片を飛び散らせた。
 押しつぶされた。
【繭の盾】が散った。そう思った時に、白い掌が左右に、万力を開くように、ゆっくりと押し広げられた。
 ノーブランの怪力である。
 人類にはとうてい耐えられない重力下で文明を構築したノーブラン。
 その重力の影響から、次第に筋肉の発達と皮膚の強靭化。その可決として進化したのが現在の姿なのだ。
 怪力で白い巨大な壁を押し広げる。そして手首の返しだけで、巨大な掌を1つ放り投げると、もう片方の掌をむんずとつかむと、4人の眼に映らない速度で暗闇を移動、気づいたときには、下方から迫る蛇の巨大な化け物めがけて、掌を投げつけていた。
 手をぶつけられた蛇は、奇声を発しながら崩れていく。
 が、その掌を押しのけ、化け物は再び、上昇してくるのだった。
「しつこいのは、嫌いなのよ」
 そう叫んだホウ・ゴウが腕を回転させて、叩きつけるように掌をかざした瞬間的、周囲の大規模な空間が一瞬のうちに白く濁り、表面に霜がついた。
 化け物もこれは例外ではなく、動きを鈍らせやがて止めたのだった。
 これに間髪を入れずに、鋼鉄のげんこつが目に止まらぬ速さ、とはそのことであるかのように、瞬間に移動してくると、叩きつけて、怪力が凍りついた化け物を粉砕した。
 ニャコソフフ人の能力は、物体を組織レベルから氷結させ、絶対的な凍結を行うこと。
 ノーブラン人の男の能力は、亜光速で移動すること。
 初めて仲間の能力を目の当たりにしたイラートは、唇を尖らせ鳴らして、驚いた様子をみせるのだった。
 と、その刹那である。彼ら5人の肉体は急激な重力に縛られ、地上へと肉体が落下し始めた。
 こいつはまずい!
 そう心中でイラートが叫んだ時、5人の身体は泥の中に落下した。
 そこは草が生い茂り、土砂降りの雨の世界。
「戻ってきたようですね」
 そういったのは、イラートの肉体を擬似的に真似するバスケス・ドルッサであった。
 だがこの時、彼らの思念はすでに地上へ残った仲間の危機を察知し、バスケスの言葉尻を聞くか聞かないかのうちに、5人は転送能力の光に身を委ねていた。

ENDLESS MYTH第3話ー18へ続く

ENDLESS MYTH第3話ー17

ENDLESS MYTH第3話ー17

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-07-25

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