ENDLESS MYTH第3話ー16
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漆黒に黄色い光が幾度か明滅を繰り返したともあと、ボウっと篝火のように黄色い球体が光源となって闇を照らした。
そこに浮かび上がったのは、5つの顔である。
己の能力である稲妻を光源として利用したイラート・ガハノフを中心に、異星人の顔が並んでいた。
「参っちまったなぁ。ここはどこなんだ?」
頭を右手で掻きながら、左手の数センチ上に稲妻の球体を浮遊させながら、少年っぽい口調が当惑を表す。
5人は自らの能力を発するまもなく、敵の能力によって、地のそこへと呑まれた。
永劫とも思える落下の中、互いにテレパシーで連絡を取り合い、中空て急ていしして、こうして集合していた。
つまり6人は今、底のない闇の中で空中に浮かんでいるのである。
青白い顔の額に、大きな蜘蛛のようなコブのあるサンテグラ・ロードは周囲に視線を飛ばす。けれども周囲に生命体の気配どころか、物理的空間の気配すらもありはしない。
「なんらかの能力によって、閉じ込められたようですね」
白い顔を4人に向けて言う。
「こわせねぇもんかな」
と、手の球体を暗闇に向けて投げようとする青年腕を、ノーブラン人のボロア・クリーフが、4つよ目玉を細め、人間ではありえない筋肉のつき方をした、鋼鉄の腕て掴んだ。
「余計な真似はするな。なにが起こっても、不思議ではない敵の空間だ。もっと慎重に動け」
説教じみた言葉に、明白な不機嫌をイラートは、露骨に表現した。
「出口を見つけるためには、行動しかねぇだろ、おっさん」
と、ボロアの筋肉に少し力が入り、イラートの表情は苦悶に歪んだ。腕が引きちぎれそうな痛みである。
「口に気をつけろ、小僧。ワシはお前の何百倍も生き、多くのことを知っている。目上のものには経緯を払え」
そう言うと、彼にとっては小枝ほどの青年の腕を手放した。
「ったく、こんなおっさんとこれからやっていくのかよ」
ぼそぼそとイラートはつぶやき、痛む腕を振った。
「彼の無茶に賛同するわけじゃないけど、あたしも行動するのには賛成よ。こうしてたって埒が明かないわ」
全身をうずが巻き、ピンク色の皮膚をした、嘴が鱗のようにあるニャソフフ人のホウ・ゴウがイラートの意見に賛同した。
しかしながら周囲がこうも暗くては、先に進むどころではなく、光源であるイラートの稲妻がなければ、互いの顔すら認識できないのだ。
先の見えない不安。これほど恐ろしい物はない。
と、その時である。彼らの張り巡らされた思念の糸に、なにか引っかかるものを、全員が認識した。
後ろを振り向き、光源でそれを照らした刹那、暗闇は、紙芝居の場面転換のように、瞬間的に空間が変異した。
そこは木の根のようなものが這い回り、足元に水が蓄積された場所となった。
木の根は腐っているのか、異臭を放ち、束になった根が、柱のように天高くから垂れ下がっていた。
どこなんだここは?
先の見えない広大な空間となったそこに、誰もがそう思った矢先、水面が突如として波打ち、5人は立っていられないくらいに地面から振動が突き上げてきた。
それは金属を鋭いもので掻きむしるような悲鳴を轟かせて現れた。
人間の肋よりも遥かに巨大な骨に包まれた、全長が数キロを超え、太さが200メートルはあろうか。
頭部は頭蓋を寄せ集めたような骨で構築されている。
蛇のような巨大な化物が彼らの前に姿を表したのである。
ENDLESS MYTH第3話ー17へ続く
ENDLESS MYTH第3話ー16