流れ星王国シリーズ 第3話 グランバーバの不思議な旅のお話
読んでもらう小さな子供たちへ、そして読んでくれる少し大きな子供たちへ、すべての大人と子供たちへ捧げたいおはなし。
どこかわからないところにいるグランバーバの不思議な旅のお話
流れ星王国シリーズ 第3話 グランバーバの不思議な旅のお話
グランバーバ女王は
きらめき きらちゃん王女と
ときめきときくん王子のおばあちゃん。
宇宙船トレーラー号に住んで旅をしています。
旅の途中で時々、きらちゃん王女に会いに来るのですが
ときくん王子が生まれる前から長〜い旅に出ていて
ときくん王子とはまだ一度も会ったことがありません。
グランバーバ女王の宇宙船トレーラー号は
とりあえずは宇宙船なので
お空に浮かんでいることが多いのですが
たまにキャンピングトレーラーっぽく
野原でのんびりキャンプしているかと思うと
ビューんとワープしてどこかの星の広場に行って
移動式トレーラーカフェなんかをやってたりもします。
そうかと思えば、おおむかしの宇宙人のお家のあとに探検に行ったりして
そこでお歌を作ったり、絵を描いたりして帰ってきます。
きらちゃん王女はグランバーバの楽しい旅のお話を聞くのが大好きです。
「ウメ星のひとたちは塩っぱいものが大好きで
コーヒーにもお塩を入れて飲むのよ」
と言って1袋が5キロもする重たいお塩を
どんどんトレーラーハウスに積み込んだり。
ある日気がつくとグランバーバのトレーラーのまわりが
見渡す限りの広〜い牧場になっていたりします。
牛さんが本物の牧草だけを食べていれば
おいしいバターのできるミルクが採れるのだそうです。
「バターコーヒーのバターは牧草だけを食べて育った牛のミルクから!
つまりはグラスフェッドバターでなくちゃ!」なんて言いながら
広〜い牧場のあちこちで放し飼いになってる牛さんたちのところを飛び回ります。
「それじゃあ、おいしいバターを持ってくるわね!」
きらちゃん王女は
「美味しいバターならパンに塗りたいなー」と考えました。
「そうだ!ママちゃん王妃様にパンを焼いてもらって待ってようーっと」
そう、その日から、きらちゃん王女はグランバーバと会っていません。
美味しいバターを待っているうち
パンが何度も焼けただけでなく
きらちゃん王女にはおとうとができました。
おとうとのときくん王子は
おっとりしているけれどとてもかしこい王子です。
おねえちゃんのきらちゃん王女は
楽しいことやひとを喜ばせることが大好きです。
二人は何か困ったときや、冒険や、なぞとき遊びをする時も
お互いの力を合わせて、二人で一生懸命考えます。
今日も何か楽しい遊びを考え出そうとしていました。
「ねえ、ときくん、グランバーバに会いに行こうか?」
「ぼく、グランバーバに会ったことない!面白いお話聞きたいな!」
「うん、そうしよう!」「そうしよう!」
二人はパンと飲み物をバッグに入れて、星空カートに乗り込みました。
エンジンをかけようとした時、ときくん王子が言いました。
「でもさ、グランバーバって、いまどこにいるの?」
お姉ちゃんのきらちゃん王女はちょっと首をかしげました。
「そうだ、グランバーバは今どこにいるんだろう?」
もう一度、カートから降りて
キッチンにいるママちゃん王妃様に聞いてみました。
「グランバーバって、今どこにいるの?」
ママちゃん王妃様は答えました。
「どこかわからないところにいるのよ。」
「どこにいるのかわからないの?」
きらちゃん王女が聞き返すと、ママちゃん王妃様は繰り返しました。
「いいえ、どこにいるのかわからないのじゃなくて
どこかわからないところにいるの
どこかわからないところというところにいるのよ。」
きらちゃん王女と ときくん王子は
ますますわからなくなりました。
どっちの方角を目指していけばいいのかさえもわかりません。
「どこかわからないところへ行くより、お城で待ってた方がいいんじゃない?」
ときくん王子が言いました。
それもそうだなあと、きらちゃん王女は思いましたが
「ううん、グランバーバがどこかわからないところへ行っているのだから
わたしたちもどこかわからないところへ行けばいいのよ」
「どこだかわからないけれど、探しに行けば会えるような気がする」
そう、きっぱりと言いました。
ときくん王子はよくわからなくてちょっと困ってしまいましたが
とにかくに賛成しました。
そうして二人は、どこかわからないところへ行くことにしたのです。
二人はもう一度、パンと飲み物をバッグに入れて、星空カートに乗り込みました。
エンジンをかけて空高く駆け上り、お城の周りをぐるっと一回りして
それから勢い良く飛ばしてどんどん飛んで行きました。
ずいぶんと飛んだので、どこかわからないところに近づいた気がしましたが
そこが一体全体、どこか分からないところかどうかなんてわかりもしません。
「どこかわからないところってどこだろう?」
二人の心は、はてな?はてな?でいっぱいになりながらも
何か良い考えは浮かばないものかと一生懸命探していました。
ちょうどカートのすぐ横を鳥の群れが飛んでいきます。
きらちゃん王女は鳥たちに尋ねてみることにしました。
「ねえ、鳥さんたち、どこかわからないところってどこですか?」
「どこか分からないところを知りませんか?」
みんな一生懸命前を向いて飛んでいるだけで何も答えてくれません。
その時、群れの一羽が口を開いたかと思うと
みんながいっせいに答えました。
「じゃあ、わかるところはどこなんだい?」
「じゃあ、わかるところはどこなんだい?」
「じゃあ、わかるところはどこなんだい?」
「じゃあ、わかるところはどこなんだい?」
「じゃあ、わかるところはどこなんだい?」
「じゃあ、わかるところはどこなんだい?」
「じゃあ、わかるところはどこなんだい?」
群れがみんな、いっせいにですから、こんな具合です。
わからないところはどこなのか尋ねたら
わかるところはどこなのかを聞かれてしまいました。
一体どうしたらいいんでしょう。
二人は、鳥の群れを見送ると
空に浮かんだまま
黙り込んでしまいました。
「鳥さんたちが言ったことを考えてみようよ。
どこかわかるところってどこ?
お城とか、森とか、お友達のお家とか?」
「ミクミックスおばさんのお屋敷とか?」
「知ってるところ。行ったことあるところ。」
「知ってる人のところ。知ってるから怖くないところ。」
二人は考えます。
「昨日までに行ったところ。昨日までに知ってるところ。」
二人は尚も考えに考えます。
「知ってるから安心なところ。もう知ってるからどんどん行ける。」
「うん。迷子にもならないところだね。」
「でも、知らないけれど怖くないところもあるような気がする。」
「うん。今までだって知らないところへちょっとずつ行ったり
知らないことをちょっとずつ知ったりして
いろんなことがわかるようになってきたものね。」
「もしかすると鳥さんが言ってたことって
『誰だって毎日どこかわからないところへ行ってるはずだよ』
ってことかも知れない」
そう二人は考えました。
そう考えると、二人は
どこか分からないこんなところまで来れたことが
とても嬉しくなりました。
そして
グランバーバにはまだ会えていないけど
グランバーバの近くにいるような気がしていました。
そして、どこか分からないところにいるグランバーバの楽しさが
なんとなくわかるような気がしてきました。
どこかわからないところはたくさんあって
世界中、宇宙中、どこかわからないところだらけです。
「きっとワクワクしながら明日を楽しみにがんばれば
毎日、毎日、どこかわからないところへ進んでいけるね。」
二人とも、同じ考えで、「うんうん」とうなずき合いました。
そうして二人は星空カートをひるがえし
お城に飛んで帰りました。
帰ってみると、どこかわからないところから
グランバーバのお土産が届いていました。
包みを開けると、おいしいバターとコーヒー豆が入っていました。
二人は、ママちゃん王妃様が焼いてくれたパンにバターをたっぷり塗って
お口いっぱいにほおばりました。
「どこかわからないところから届いたバターおいしいね!」
「どこかわからないところっていいところだね!」
口々に言いました。
「どこかわからないところのコーヒーはまた格別だなあ」
パパちゃん王様がコーヒーを飲みながら言いました。
ママちゃん王妃様もにっこり笑ってコーヒーにバターを入れました。
グランバーバがいつもどこかわからないところにいるのだと思うと
何だかみんな楽しくなるのでした。
流れ星王国シリーズ 第3話 グランバーバの不思議な旅のお話