SPEC NURSE続き5

東京都の中心部にそびえたつ、
スタイリッシュなデザインの高層ビル「TOKYOミドルタウン」
の最上階にある、高級フレンチレストラン。
「本日のメインディッシュ、鮭のムニエル〜京野菜を添えて〜
でございます。」
男の前に皿を置くと、男は感嘆の声を漏らした。
「ほぅ…やはりこの店の料理は、いつ来ても期待を裏切らない。」
「ありがとうございます。では、ごゆっくり。」
女の前にも皿が置かれる。
女は、一瞬眉をひそめたが、
「…いただきます」
と自分にだけ言いきかせるように呟き、
ナイフを握った。
無駄のない手さばきでナイフとフォークをあやつり、
ムニエルを口に運ぶ。
「見事だね。君はテーブルマナーも完璧なんだな。」
男は苦笑して言った。
女は無視して黙々と食べ続けていたが、
不意にナイフとフォークを置くと、
まっすぐに男の目を見て、
「医院長、やっぱり私…ごめんなさい。無理。
ていうかダメ、絶対。」
最後のはどこかで聞いたセリフだな。男はコホン、
と小さな咳払いをして、女の方を向いた。
「黒川くん。僕はね 君には…可能性が有ると思っているんだ。
だからこうして、副医院長の勝田くんですら連れて来たことが
ない、このレストランに招待した訳だ。」

「…可能性…?」
「そうだ、君の「それはつまり、あなたの…そうだな、野望
って言うのがいいかな。その野望をあなたになんの害もなく
叶えられる…私に秘められた可能性ですね」
「言葉を選んでみようか。」
「野望という言葉しかむしろ当てはまらないと思いますが。」
しばしの沈黙の後、黒川と呼ばれた女はおもむろに
手を上げ、ウエイターにむかって、
「餃子かラーメン有りましたっけ?」
と聞いた。
店内は一気に静まりかえった。

SPEC NURSE続き5

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-06-14

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