月明かりに照らされて

これはとある両親を亡くした兄弟の話。
交通事故にあったあの日から…

何も知らなかった小さな私


まだしょうがくせいのわたし
きょうはばぁばとおるすばんの日

おにいちゃんとおかあさんとおとうさんはりょこうにいった
あしたにはかえってくるの

おみやげはわたしのだいすきなひまわりのゆびわ
たのしみ

ばぁばとあしたはみんなのためにオムライスにチャレンジするの
みんなよろこんでくれるかなあ

おいしくできるかな

はやくかえってこないかな

はやくあしたにならないかな


そう、これは私がまだ小さかった頃の話
このときはまだまっている明日があんな日になるだなんて
思ってもなかった

お兄ちゃん無事で良かった



たった一人の
私の家族

私の家族

私の母は花屋の店主だった。
いつも笑顔で優しくて
私を支えてくれた

私の父はごく普通の会社員。
趣味で音楽を少し。歌もうまかった。
いつも私を励ましてくれた。

私の兄。
兄は私の唯一の希望
私の大切な家族。

おばさんは中学を卒業後、もう家には来なくなった。
あ母さんとお父さんの寝室にはあの頃から動かないカレンダー
そう。私の誕生日に丸がつきっぱなしだ。

8年前のあの日、事件は起きた。
家族はだれもかえっては来なかった。
帰ってきたのは、抜け殻のようになった兄の姿だった。
兄はほとんど記憶がなかった。
あの日のことを今の私もまだよくしらない。

小さかった私は、毎日兄の病院へと向かった。
兄は見えていなかった。
車の事故で兄は目を失った。
半身麻痺が残り生活も困難であった。

私の誕生日の月初め
家族は旅行へでかけた。
当時まだ私は小さくて、おばさんの家に預けられた

お父さんとお母さんが他界したことを知ったのは
小学校高学年のときだった。
感がよかったのか小さい私でも
もう父と母が戻ってこないことはわかっていた。
私は、勉強に励んだ。
変に言えば高校のいけなくなった兄の分までやり遂げたかった。

私は兄の通っていた高校に入学することができた。
高校に入学してもう1年がたった

今は高校二年生の夏休み


今日も私は兄のいる病院へ向かった。

太陽に照らされて

いつものように兄はねていた
お兄ちゃんきたよーっていつもどおりだった

もうすぐ夏も終わってしまう。
カレンダーの31日には丸はついていなかった。

寝たきりの兄の病室に差し込むカーテンの隙間から入り込んだ太陽の光
こうして私が毎日通うこともできなくなっていくんだろうか


そんな事を考えていたとき、
お兄ちゃんが久しぶりに動いたんだよね

もう死んだとおもってたのに
あの抜け殻みたいに動かなかった兄が
突然動くんだもん(笑)

兄が口にした言葉、いつもごめんしか言わなかった兄が

お誕生日おめでとう

だなんて。
あしただっちゅーの
兄は覚えていた
この日差しの暖かさを。
私の誕生日を。

その後はもうなんとなくしか覚えていない。
兄からもらった
ひまわりのブローチは私の宝物。

母と父が残してくれた私への贈り物。
この向日葵が私の名前。


太陽に照らされて

月明かりに照らされて

 あれから2年

きょうは父と母の命日

あれから10年がたった。
兄はリハビリ生活を終え今はなんとか家で暮らしている。

私は高校卒業後大学にも進学せず、こうして花屋をしている。
父の歌った歌を歌い、母が愛でた花を売り、そして兄が望んだ生きることをあたりまえのように
こうして過ごしている。

彼氏もろくに作ろうとしなかった私にも今彼氏ができた。

また夏が終わってしまう。
ひまわりともまたしばらくお別れ

また明日を迎えられる
それが私の幸せ
お父さんお母さん見ててね


私がこの星空に願うのは…


~月明かりに照らされて~fin.....

月明かりに照らされて

お疲れ様でした
『太陽に照らされて』に引き続き
月明かりに照らされて、とのことですが
どう感じられたでしょうか。
家族の大切さ、だれかを亡くす、失うという悲しさ、辛さ、そして誰かが傍にいるという幸せ、大事にしてください。

月明かりに照らされて

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-07-20

Copyrighted
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  1. 何も知らなかった小さな私
  2. 私の家族
  3. 太陽に照らされて
  4. 月明かりに照らされて