ボーイフレンド(仮)版権小説「それでも私は放課後を駆け抜ける」(全年齢対象・無料)

最終更新日:2015年8月13日

 チャイムとともに、今日最後の授業が終わった。

 今日も、慌てて鞄にノートと教科書を詰める。日直はまだ先。掃除当番も今週は当たってない。友達は、私が急ぐ理由を知っている。止められる理由はない。

 急ぐ理由? そんなの。私が行きたいから行くの。以上。終了。……っていうわけにはさすがにいかなかったけどね。

 教室を出て階段まで、少し浮かれた調子が漂う放課後の廊下を駆け抜ける。階段は二段飛ばしで軽快に。

 踊り場で回ろうとした瞬間、右手を急につかまれてバランスを崩しそうになる。

「待てよ綾乃」

 私の羽を掴む人がいる。後ろも見ずに振り払おうとしたが、がっちり掴まれた手首を振りほどけない。この声の主は。

「斗真……、何?」

 幼馴染、そして今はクラスメイトの如月斗真。昔は結構親しかったけれど、最近は……。

「何ってさぁ、お前、いつも人のこと、階段走るなだの廊下走るなだの言いやがって、お前なんだよ。スカートの下見えてるぞ」

「はぁ!? 何言ってるの、見えるわけないでしょ」

 慌てて反対側の手でスカートを押さえる。

「……冗談だよ。見てない」

 斗真が顔を赤くして横を向く。

「それより何? 手を離してくれないかな、私急いでるんだけど」

 手首が痛い。冗談かと思ったが、軽く振っても離してもらえない。それどころか、ぐいっと引かれて、斗真のほうに倒れこみそうになる。すんでのところで、体制を立て直す。

「なぁ、お前。最近何してるんだよ、放課後。前はサッカー部にも時々来てたじゃないか」

「関係ないでしょ、今ちょっと忙しいの」

 逃れようと一歩下がるが、斗真が一歩詰めてくる。

「関係あるさ、俺は……お前が見に来ないと、気になって集中できないんだよ!」

「……何を言っているのか分からないよ斗真。それより離して。私は行かなきゃいけないの」

 何か重要なことを言われている感じもするが。今はそんなこと。それよりも。

「行くって……会長のところか? 手伝いならお前じゃなくてもいいだろ。守部から聞いてるけどさ。忙しいからお前が代わりにやってるとかなんとか……」

「私が行きたいから行くの。いいじゃない。もう何度も言うけど離して!」

「お前、さぁ……おかしいぜ、最近。なんか急に遠くに行っちまったってのか」

 斗真がしぶしぶ、という感じで、私の手をほどく。少し赤くなった手首をさすりつつ、距離を取る。

「私より、おかしいの斗真でしょ。何するのよ。……って、もう行くから、じゃぁね」

 斗真を放置して、私はさっさと、今度はスカートを押さえつつ、階段を駆け上がった。斗真、何か言いたいことでもあったのだろうか。そんなに練習見に来てほしかったのだろうか。確かに大会前の重要な時期、とか聞いた気はするけれど。

 まぁいいか、急がなきゃ。

 ダッシュで階段を登りきり、右に曲がる。そのまま廊下を数歩走る。また右手をぐっと掴まれる。

「ちょっと斗真、追いかけてこないでよ!」

「フフ、私ですよ」

「西園寺先輩?」

 また腕をぐいっと引っ張られる。バランスを崩すが、今度は心置きなく先輩の胸に倒れこむ。

 そのまま先輩がふんわりと抱きしめてくれた。嗅ぎ慣れた花の香りに包み込まれる。

「危ないですよ、そんなに急いでどこに行くのですか」

「もちろん、生徒会室に……」

 生徒会室に。先輩に逢いに。

 ただこの距離はちょっと近すぎる。少しくらい身動きしても、先輩の片手でもう腰をがっちりと押さえつけられていて抜け出せない。西園寺先輩は見た目より随分と力が強いのは十分に理解しているが、毎回、まったく力を入れていないような笑顔のままで完全に捉えられてしまうのが不思議でしょうがない。

 力だけではなく、先輩の瞳と、この香りと。そして最近は、想いにも、なのかな。まだそこのあたりは良く分からないけれどね。

「でも先輩、人目につくので離していただけませんか?」

「駄目ですね。先ほど如月くんに触られたその百万倍は私にも触れさせていただけないと」

「……先輩、見られてたのですか?」

「えぇ、偶然に。……それにしても、あなたは案外罪な人ですね。あなたに翻弄されるのは私だけで十分だというのに。あれは多少彼が気の毒になりましたよ……」

「え? 何がですか? 斗真はただの幼馴染で……」

 一応説明しようとした私の唇は、先輩の人差し指ですっと塞がれた。

「ただ、私の花が、あんなに他の男の名前を何度も紡ぐとは……今日はお仕置きが必要なようですね」

 先輩の顔がすっと近づいて来る。キスされる距離、と思ったが、さすがに西園寺先輩も自重したのか、私に絡みついていた腕をすっと離し、代わりに手を取られた。

「先輩?」

「続きは生徒会室で。あなたが如何に罪深いか、しっかりと教えてあげますよ」

 先輩の言うことは時々良く分からないが、こうして西園寺先輩に手を引かれて歩けるなら、どんな罰でも受けて良いと思った。

ボーイフレンド(仮)版権小説「それでも私は放課後を駆け抜ける」(全年齢対象・無料)

 ……西園寺先輩は総選挙の順位がもう少し上でいいと思うのよね。個人的には一位、せめて四天王だし四位以内でしょ。
もともと、西園寺先輩×主人公の版権小説を書き始めたのは、昨年度(2014年度)の総選挙を見て、「あれ、なんで?」と思ったのがきっかけでした。(実は等身大タオルとかほしかった……(恥)。)
ただ、自分が好きだからといって、その魅力をほかの人に伝えるのは難しいですよね……。
今年も投票券は西園寺先輩につぎ込みますが、今年(2015年度)の中間結果がまたちょっと残念な感じだったので、てこいれとして応援シナリオ書いちゃえ、と慌てて書いてしまった話。(応援になるのか邪魔になるのかはともかく。)
決して一位~西園寺先輩の上に居るキャラが嫌いなわけではないけれど。それでも私は、西園寺先輩が好きです、というわけで。

(※如月斗真×主人公カップリングラブな人には申し訳ないですが。この主人公はまったく斗真からの想いに気が付いていない設定です。斗真視点での失恋三角関係ものも書いてみたいけど、斗真ファンのほうが多そうだしなぁ……)

ボーイフレンド(仮)版権小説「それでも私は放課後を駆け抜ける」(全年齢対象・無料)

生徒会室に足繁く通うようになった赤主人公(西崎綾乃)を心配した如月斗真(きさらぎとうま)は、放課後の階段で幼馴染を捕まえる。斗真にでも分かるくらい変わってしまった彼女は、もう自分のもとには戻ってこない。それを分かってしまっても、彼女への気持ちを止められない。ただ、彼女はそんな斗真の心を露知らず、今日も放課後を駆け抜ける。 (西園寺蓮×主人公)

  • 小説
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更新日
登録日
2016-07-19

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