元禄港町
これは生の舞台ではなく蜷川さんが亡くなって追悼の放映を録画したものを友人が送ってくれました。
元禄港歌―千年の恋の森
秋元松代作
蜷川幸雄演出
舞台美術 朝倉摂
衣装 辻村寿三郎
キャスト
市川猿之助
宮沢りえ
段田安則
高橋一生
鈴木杏
新橋耐子
他
恋しくば尋ね来て見よ 和泉なる信太(しのだ)の森のうらみ葛の葉
この歌は昔の言い伝えで、阿倍保名が 狐を助けた時怪我をして、葛の葉という女性(これがキツネの化身と言われている)が
現れて看病し,2人の間に男のが生まれる。
この童子丸が、陰陽師として知られるのちの安倍晴明だと言われていて、この事がこの作品のテーマである。
あらすじ(一部公式サイトより引用)
時は江戸、元禄のころ。
配役は播州の廻船問屋の大店・筑前屋の主人平兵衛(市川猿弥)と女将お浜(新橋耐子)
筑前屋の長男信助(段田安則)と次男坊万次郎(高橋一生)
瞽女(ごぜ、盲目の女芸人)の一団は目の見える手引きの歌春(鈴木杏) 座元の糸栄(市川猿之助)と
長女の初音(宮沢りえ)
これら登場人物の過去と現在の時間軸が交錯して絡み合う物語。
廻船問屋の長男・信助は真摯で生真面目で東京の出店で働いていて帰郷中だ。
次男坊・万次郎は遊び人でやや放蕩息子で家業に興味がない様子。どうも腹違いで、長男は実は血筋が違うようだ。
やがて三味線の音が聞こえてくる。旅から旅に明け暮れながら年に一度瞽女の一団がこの港町にやってくるのだ。
筑前屋の祝いの席に呼ばれた 瞽女の女たちが奏でた歌が「葛の葉子別れ」、猿之助さんの語り声がややかすれて聞こえたのが気になった。
瞽女の糸栄(市川猿之助)の三味線の弾き語り「葛の葉子別れ」を聴くうちに、信助は糸栄が実の母に違いないと思い始める。
この女形の猿之助さんが凄いわー!歩く姿は年とった女そのもの!
猿之助さんの女形を見るのは「十二夜」以来かな?このときはまだ亀次郎さんだったけど可笑しみのある役がぴったりで、
うまいなぁーと感嘆した覚えがある。本物の女優さんより女らしい(笑)
新橋耐子さん、久しぶりに見た! まだ文学座に在籍らしいがこんな舞台にはピッタリの存在感が素晴らしい!
余談だけれどかなりの昔、子供のころにサーカスでこの物語を見た覚えがある。
「葛の葉子別れ」は、千年の森の奥から恋しい男のため白狐となり逢いに来た女が、人里の男を恋した罰に
生まれたばかりの子と別れて再び森に帰らねばならぬという悲しい物語。
両手両足に障害を持つ女性がこの物語の主人公を演じていた。
最後のクライマックスで舞台に立てられた障子(畳一枚くらいの大きさ)に、重い障害のある右手・左手と両方の足に筆を挟み、
そして最後に口に筆をくわえて障子にサラサラと書いた歌が別れる我が子に呼びかける
「恋しくば尋ね来てみよ和泉なる信太の森のうらみ葛の葉」・・・凄く達筆だったような記憶がある。
演じた女性の障害の重さと一緒に強烈な印象が残っている。
瞽女の一団が、筑前屋へやって来たことで、お浜が解き明かす信助の出生の秘密。
夜の社でお互いの思いを確かめ合う瞽女の初音(宮沢りえ)と信助の愛。
それに、瞽女の歌春と筑前屋の次男坊万次郎(高橋一生)の許されぬ愛が絡む。
越前屋のお浜(新橋耐子)の苦悩。
実の子である万次郎への溺愛と、筑前屋の主人・平兵衛(市川猿弥)が瞽女の糸栄に生ませた信助が優秀なことへの
いたたまれぬ嫉妬。
歌春と万次郎の愛は身分が違い過ぎて、実らぬ恋だ。
そこで、越前屋のお浜が細工職人の和吉と夫婦になる話を歌春に持ち掛け、歌春も万次郎との愛は叶わぬものと
縁談を受け入れて和吉と夫婦になる。
数日後、場面は変わって、筑前屋で「彼岸会奉納の能」を練習にはげむ万次郎。
そこへ歌春と万次郎の仲を知った職人の和吉が、血相を変えて怒鳴り込んできたことで、万次郎は謹慎。
代わりに、翌日の本番の舞台では、信助が舞うことになった。
そして能「百万」を舞う信助の舞台へ、嫉妬に狂った和吉が駆け上がり、舞っているのが万次郎だと思い込んで
毒薬を投げつけ信助は目をやられる。
和吉は歌春を殺し自分も自害して果てた。
糸栄と初音とおなじ盲(めしい)となった信助は三人で千年の森へ行こうという。
信助は眼の光は失ったが、愛する人とようやく名乗りあえた生みの母と一緒に歩める人生は心満たされた幸せな人生になる事だろう。
暗めの舞台一面に赤い寒椿が広がり、美空ひばりさんの劇中挿入歌が効果的に使われていて、
美しくも哀しくて妖しい、まさに「情念」がメラメラと燃えあがるような舞台!
良いものを見せてもらった
元禄港町