プラズマン第一話 『鎧の巨人』
プラズマン第一話
タイトルバック
字幕『199X年』
宇宙の闇の中に浮かび上がる巨大な光球。
追跡してくる宇宙船群。光球への攻撃が炸裂する。
双方を地球のスペースシャトルや戦闘機群が迎え撃つ。ミサイルが集中するがビクともしない光球。大気圏突入と同時に真っ赤に染まる。小型宇宙船群に撃墜されていく地球の戦闘機群。
後方の宇宙船から放たれた大口径レーザーが光球に炸裂。遂に砕ける光球。破片が四散する。
地上に降り注ぐ光球の破片群。その中心には、一際大きな光球。
倒壊するビル群。焼野原と化す大都市。大混乱の地上。
夜空を飛ぶ旅客機。パニックに陥る乗客たち。阿鼻叫喚の騒ぎの中、手を握り合う天童隆一と妻・恵。
一際大きな光球の破片が旅客機を巻き込み、東京に墜落していく。オフィス街を壊滅させ、大きくバウンドする光球…。
第一話タイトル
字幕 『20年後』
陽炎立つ炎天下の中、黙々と走る訓練生たち。
大半がグラウンドや木陰でへばっている。走っているのは数名のみ。先頭は天童玲。
白衣姿で黙々とPCに向かう玲。
格闘技訓練にて、得意の合気道で、鮮やかに男子訓練生を投げ飛ばす玲。
戦闘機シミュレーターで敵機を撃墜していく玲。
玲 「(独白)あれ…?」
画面内の擬似敵機の動きが妙に遅くなる。
再び格闘技訓練。伸びてくる男子訓練生の速度が急に落ちる。妙にのろい、スローモーションのような動き。
玲 「(独白)まただ…」
のろい手を掴み、見事に投げ飛ばす玲。
ひしめく訓練生らの前に、名前の並ぶ張り紙。その先頭には、
『首席・天童玲 992点』
訓練生A「凄いじゃない玲!」
訓練生B「あたしたち2000人の、堂々のトップだよ!」
玲 「うん、有難う」
張り紙には続きがある。『以上の者を特殊選抜部隊EG=7隊員に任命する。』
歓声とともに抱き締められ、肩を叩かれる玲だが、その表情は澄んで、落ち着いている。
墓前にて手を合わせる玲と風間雄二。
字幕 『EGS作戦本部参謀 風間雄二』
風間 「玲、わかっているとは思うが、お前の抜擢は言うなれば宣伝だ」
玲 「はい」
風間 「EGSは地球防衛軍とも呼ばれてはいるが、その存続に反対する声も多い。そんな声に対して、“親しみやすいEGS”を目的に、様々な取り組みが行われている。お前の抜擢もその一環だ。歳若い女性隊員が活躍できる組織だということを様々な人に示すことで、EGSへの風当たりを和らげようとしているんだ。かつてない優秀な成績で訓練校を卒えたとは言え、正規部隊をすっ飛ばしてのEG=7入りなど、本来ならあり得ないことだからな」
玲 「わかってます叔父様。広告塔にでも何にでもなってみせます。私が選んだ道ですから」
自宅の仏壇に置かれた、天童と恵の遺影。
テレビ画面に映し出される、在りし日の天堂隆一。
天堂 「私の開発した重力波エンジンは、兵器として使うためのものではありません。敢えて言うなら、守るための技術です。私にも昨年、娘が出来ました。この技術が、娘を、そして娘の生きていくこの世界を守るためのものであって欲しいと願っています」
風間 「美保には会っていかないのか?」
玲 「叔母様ずーっと私のEGS入隊に反対だったでしょ? 何か、顔合わせづらくて。それに会ったら何だか湿っぽくなりそうだし」
墓前にて佇む2人。
玲 「叔父様、いえ、風間参謀。これまで叔母様ともども、私の親代わりになってくれて、本当に有難うございました」
EGS基地の全容。ガーディアン=ウィングが上空を飛ぶ。
ドックでは整備中のシップが待機している。整備士長・平間善法が若き整備士――川添明、新田浩、野田順平を怒鳴りつけている。
平間 「グズグズしてんじゃねえ! テメエらのペースじゃ、発進が来年にズレこんじまうぜ!」
ナレーション「EGS。Earth=Guardian=Service。
20年前に地球に飛来した謎の人工物と、それを追って現れ、東京郊外に撃墜した宇宙からの来訪者は、地球に住む人間たちに大いなる衝撃を与えた。宇宙には人類以外に知的生命体がいる。そして宇宙は決して平和な場所ではない。そのことを地球人に思い知らせることとなったのだ」
上空に飛来する宇宙船群と、怪獣出現の回想シーン。
ナレーション「そしてそれ以来、地球はたびたび、外宇宙からの攻撃にさらされることとなった。やってくるのは主に全長40メートルから80メートルの生物。または生物に似せた機械であることもあった。襲われる地球はそれを“怪獣”と総称し、各国の防衛部隊が共同で迎え撃った」
自衛隊や米軍の攻撃。ことごとく撃ち落とされ、壊滅させられる(回想シーン)。
ナレーション「しかしあまりに強力な敵“怪獣”の猛威は、これまでの地球の軍隊の防衛力を超えていた。各国は手を携え、地球を防衛するための超科学と超兵器とを共同で開発。ここに地球防衛部隊EGSが誕生したのである」
基地内部。正規部隊の訓練。監視に当たるレーダー要員たち。整備班の面々がガーディアン=シップの整備に向かう。
ナレーション「拠点は日本とアメリカ。戦闘部隊と非戦闘員を合わせた総隊員数は6000名にも及ぶ。いつやってくるとも知れない宇宙からの敵“怪獣”に備え、彼らは任務に就いているのだ」
田辺副長官の執務室ドアがノックされる。
ナレーション「今、そのEGSに、訓練学校をかつてない優秀な成績で卒業した一人の少女が入隊しようとしていた」
字幕 『EGS副長官 田辺進』
田辺 「入り給え」
執務室に入るアイリーン=ウォンと玲。敬礼。
アイリーン「アイリーン=ウォン。天童玲隊員を連れて参りました」
田辺 「御苦労」
玲 「天童玲です」
田辺 「君が天童博士のお嬢さんか」
玲 「父を御存知でしたか」
田辺 「知っているどころではない。航空工学の権威だった君の父上の研究がなければ、我々は今、ここでこうしてウィングやシップを飛ばすことも出来なかっただろう。その天童博士の忘れ形見である君がEGSに入隊してきたのも、何か運命めいたものを感じるよ」
玲 「恐れ入ります」
田辺 「しかし私は今回の抜擢には反対だった。飛び抜けた成績を上げたとは言え、訓練学校を卒えたばかりの君が選抜メンバーに入るというのは異例であり、そして早過ぎると私は思っている」
玲 「はい」
田辺 「そして君が、あのはぐれ者集団EG=7に入ることにも、な」
この台詞は半ばアイリーンにも向けられている。思わずアイリーンを窺う玲。肩を竦めるアイリーン。
田辺 「しかし長官肝煎りの事案であり、決定である以上、もはや君のEG=7入りを覆すことは出来ん。君が期待に沿うだけの働きをするか、じっくり確かめさせて貰うぞ」
玲を見据える田辺。アイリーンすら僅かにたじろぐ。しかし玲に臆するところはない。澄んだ目が田辺を見つめ返すだけだ。
玲 「頑張ります」
広い通廊を、踊るように歩くアイリーン。バレエのようでもあるし、太極拳の型にも見える。
字幕 『アイリーン・ウォン(王愛鈴)』
アイリーン「ねえ、玲。玲って呼んでいい?」
玲 「あ、はい、ウォン隊員」
アイリーン「私のことはアイリーンって呼んで」
玲 「わかりました、アイリーンさん」
アイリーン「玲って、あの天童博士のお嬢さんだったんだ」
玲 「皆さん、父のことを御存知なんですね」
アイリーン「玲は知らないの?」
玲 「私、父と母との思い出が全く無いんです。2人が死んだの、私が1歳の時でしたから」
アイリーン「そうなの? 私はてっきり、お父さんお母さんの仇を取るために、あなたがEGSに入ってきたのだと思ってた」
玲、どこか複雑そうな顔。
玲 「皆さんそう思ってるみたいです」
何か言おうとするアイリーンに、すれ違いざまの一般隊員たちが敬礼する。アイリーンも敬礼を返す。
隊員A「アイリーンさん、近々道場に顔出してくださいよ」
隊員B「こいつ、新入りなんです。アイリーンさんのこと、遠くから見て『キレイだな~』とか言ってるんですよ」
隊員C「よ、よ、宜しくお願いします!」
隊員A「こいつにあの蹴りを1発、叩き込んでやって下さい」
アイリーン「わかったわ、近いうち行くから。宜しくね新人君」
隊員C「は、はいっ!」
アイリーン「ちなみにこっちにも新人さんがいるけどね」
隊員たち、玲に気づく。驚きと好奇心の混じった目。玲、一礼する。歩き出す2人。
アイリーン「でも、思ったでしょ、田辺のオヤジ、随分ズケズケモノを言うやつだ、って」
玲 「そこまでは…。叔父にも、いえ、風間参謀にも釘を差されていましたから」
アイリーン「そうか、玲は風間参謀が親御さん代わりだったんだよね。でも、あれで田辺のオヤジも悪い人間じゃないんだよ。あの人の地球を想う気持ちはホンモノだって、誰もが知ってる。それより、風間参謀はウチの隊のこと、何か言ってた?」
玲 「EG=7のことですか? 特に何も…。何かあるんですか?」
アイリーン「聞いてないか。じゃあ、直接会ってもらった方が早いかもね」
自動ドアが開く。作戦司令室に入ってくるアイリーンと玲。
管制要員と通信要員の娘たち5人を周囲にハベラせ、笑わせている白人隊員が顔を向ける。観葉植物に水をやっていた黒人の巨漢、バイクのヘルメットを大事そうに磨き、バスケットボールのように指先で回していた日本人の青年も。
しかし作戦卓中央で突っ伏している男と、顔に雑誌を載せ長椅子に寝転がっている男は顔を上げない。起き上がりもしない。
呆気に取られている玲に、アイリーンが微笑む。
アイリーン「EGS最強のエリート部隊、EG=7へようこそ」
立ち上がる白人隊員。不満気な女性要員たちに構わずアイリーンに近寄る。
字幕 『マイケル(マイク)・ピーターソン』
マイケル「これはこれはアイリーン姫! どちらにお隠れあそばされていらっしゃったのですか?」
アイリーン「別に隠れてなんかいなかったわよ。玲、この優男がマイケル・ピーターソン。これでもEG=7のエースパイロット」
マイケル、玲にウィンクなどしてみせるが、すぐにアイリーンの尻を追い始める。
アイリーン「ベン、新メンバーの天童玲よ」
黒人の巨漢、ぎこちなく挨拶する。
字幕 『ウィリアム(ベン)・バトラー』
ベン 「ああ、よろしく」
マイケル「あんなデカいばかりの木偶の坊放っておきゃいいんですよ。それより姫、次の休みはどうします? 姫さえ良ければ、Sホールでオペラ観た後、食事でも」
アイリーン「次の休みなんて一体いつ来るのかしらね」
マイケル「またまた~。予定じゃ再来週の水曜が公休日ですよね。ワタクシめもその日に臨時休暇を申請する予定です」
アイリーン「じゃあ私は休暇返上かな」
マイケル「おお、相変わらず冷たい」
管制員A「ひどーい、私たちのことは誘いもしないくせに」
通信員A「そうよ、アイリーンさんばっかり」
ベン、水やりに戻る。ヘルメットを置いた青年が玲の横に立つ。
字幕 『志水建策』
建策 「ヒドいなアイリーンさん。ちゃんと俺のことも紹介して下さいよ」
アイリーン「ごめんケン、続き宜しく」
建策 「全くもう」
見上げる玲と目が合った建策、急にドギマギし始める。
建策 「し、志水建策です。EG=7の次期エースパイロット」
玲 「天童玲です。宜しくお願いします。次期…?」
相馬 「今はしがないサブパイロット、ってこった」
長椅子に寝転がっていた男がようやく身体を起こす。
字幕 『相馬圭介(ボス)』
建策 「ひでえなあボス」
相馬 「事実だろうが。女の子前に大口叩いてる暇あったら、ウデ磨け」
建策 「磨いてますよ。見てて下さい。来月にはトップガンの称号が入れ替わりますから」
相馬 「そういうのはな、ドッグファイトでマイクから一本取ってから言え。アイリーンにも負け越してるくせに」
建策 「きっついなあ。玲ちゃん、…玲ちゃんって呼んでいい? 俺のことはケンでいいよ。玲ちゃん、ウチの副隊長相馬さん。通称、ボス」
玲 「宜しくお願いします、相馬副隊長」
相馬 「ボスでいい」
相馬、ぶっきら棒に手を挙げる。
玲 「副隊長なのに、ボスなんですか?」
建策 「ウチの責任者は隊長だけど、現場指揮はほとんど副隊長がやってるんだ。だから現場でいつもボスって呼んでたのが、いつの間にかニックネームになっちゃった、って話」
相馬、着崩したよれよれの隊員服からタバコを抜こうとする。
通信員B「ボス、ここ、禁煙」
管制員B「何回言われたらわかるんですか~?」
忌々しそうに女性要員たちを見回し、それでも立ち上がり、外に出ていく相馬。やはり呆気に取られた玲に、肩を竦めてみせる建策。
建策 「凄いだろ? あれがエリート部隊EG=7の誇る切り込み隊長だ。そしてこちらが」
と、作戦卓で唸っている男の前に玲を誘う。
建策 「我らがリーダー、陸奥隊長。隊長、いい加減起きて下さい。玲ちゃんが…、天童隊員が着任しましたよ」
陸奥 「ほーい、御苦労さ~ん」
字幕 『EG=7隊長 陸奥孝一郎』
ボーっとした顔を上げる陸奥。隊員服は相馬に劣らずよれよれである。ベンが紅茶のカップを運んでくる。
ベン 「また朝までですか?」
陸奥 「うん、長官と副長官がやり合ってるのにつき合わされた。田辺副長官には会ったかい?」
玲 「は、はい」
陸奥 「眠そうな顔、してなかった?」
玲 「い、いえ」
アイリーン「至って普通でしたよ」
陸奥 「元気すぎるよあの人」
建策 「何のゴタゴタなのやら。また、ウチへの文句ですかあ?」
陸奥 「うん、まあ、色々だ」
紅茶を啜り、玲を見やる陸奥。
陸奥 「まあ、経緯はどうあれ、君は今日から我々の一員だ。特別扱いはしないから、そのつもりでね」
玲 「はい!」
陸奥 「とは言え、訓練学校から一足飛びにEG=7配属だからな。いきなり全部が全部を任せるってわけにも行かんだろうし、ここでの仕事を覚えていって貰わなくちゃならんしな。君に教育係をつけるよ。まずはアイリーンと…」
建策 「お、俺がやります!」
陸奥 「何でお前がしゃしゃり出る? 亜沙美君、頼めるか?」
通信要員の1人が振り返る。
字幕 『通信班兼管制官サブチーフ 佐藤亜沙美』
亜沙美「わかりました」
玲 「佐藤先輩?」
亜沙美「久しぶり玲!」
手を取り合って再会を喜ぶ女性2人。
亜沙美「とうとうここまで上り詰めてきたんだね。凄いよ玲」
玲 「有難うございます」
陸奥 「君らは訓練学校の先輩後輩に当たるってことだったしな」
亜沙美「寮でも1年同室でした」
玲 「先輩にはお世話になったんです」
亜沙美「嘘だよそんなの。世話になったの、アタシの方。隊長、この子、何でもやれちゃうんですよ。掃除も洗濯も。料理だけはイマイチだったけど」
玲 「それはナイショでお願いします」
亜沙美「アタシの卒業試験の時には、勉強まで手伝って貰っちゃったし」
陸奥 「どっちが教育係かわからなくなってきたな。しかし人選としちゃこの上ないだろ。頼んだぞ2人とも」
アイリーン・亜沙美「了解」
広い通廊を歩く玲、アイリーン、亜沙美。背後についてくる建策。
相変わらず踊るように歩くアイリーン。一般隊員の若手たちが、やはりすれ違いざま敬礼してくる。
アイリーン「どうだった? EG=7初勤務の印象は」
アイリーンとともに、一般隊員たちに敬礼を返す玲。
玲 「驚きました」
亜沙美「もっときちんとした組織だと思ってたでしょ」
建策 「ひでえな亜沙美ちゃん。俺たちがきちんとしてないみたいじゃないか」
亜沙美「だってそうじゃない。こんなざっくばらんな場所、EGSのどこにもないわよ。しかもそれが、EGSのエリート部隊の頂点なんだから」
玲 「私もEGSに入って、敬礼しなかったのは初めてです」
亜沙美「ほらね」
建策 「ウチの隊長、堅苦しいのが嫌いだからねえ」
亜沙美「昼間からトップ2人が寝てるエリート部隊だしね。他だって好き勝手やってるし」
女性要員たちに囲まれるマイク、紅茶を淹れているベン。
玲 「緊急事態じゃなければ、それもあり得るかな、って。そんな人たちに会うのは初めてですけど。でも、隊長もボス…、相馬副隊長も、実は寝てませんでしたよね。お2人とも、実は私が入っていった時、密かに私を窺ってました」
フラッシュバック。雑誌の下から覗いていた相馬、顔を突っ伏しながら腕の隙間から目を向けていた陸奥。
亜沙美と建策は驚き、アイリーンはへえ、という顔になる。
玲 「気が抜けない場所だってことはよくわかりました」
建策 「大した観察力だなあ玲ちゃん」
アイリーン「そうね。で、ケン、どうして君がついてきてるかな?」
建策 「え? いやあ、一刻も早く玲ちゃんにEG=7に溶け込んでほしいな~っていう、俺なりの気遣いですよ~」
アイリーン「気遣いとは別の何かに思えるんだけどな」
建策うろたえ、亜沙美笑い出す。
玲 「有難うございます志水隊員」
歩き出す女3人。建策取り残される。
建策 「え~、ケンでいいって言ったのに…」
歩き続ける3人プラス1人。アイリーンの顔が和む。
アイリーン「EGSのもう1人の名物がいた」
亜沙美「ホントだ」
山のような書類と機材を手一杯に抱え、フラフラよたよたしながら歩いてくる眼鏡の男。いかにも頼りない。通廊に居合わせた女性要員たちが笑っている。
管制員B「ドンちゃん頑張って~」
管制員C「転んで壊しちゃダメよ~」
通廊に顔を出した赤嶺修造。
赤嶺 「気をつけて運べよ。せっかく組み上げたサンプルだ」
瞬 「わかってます~」
赤嶺 「壊したら向こう3ヶ月の給料ゼロ」
瞬 「気をつけます~」
アイリーン「ウチの準隊員の伏見瞬さん」
玲 「準、隊員?」
アイリーン「あまり知られていないんだけど、EGSにはね、正規部隊の他に予備部隊があるの。普段は一般人として生活してるけど、緊急時に正規部隊の補佐をしてくれる人たち。元隊員とか防衛部隊隊員、警察官なんかが主なメンバーなんだけど、ああやって基地の中で働いてる人もいる」
玲 「じゃあ、あの人も?」
建策 「ああ、あの人はそういうのとは違う。寧ろ荒っぽいことには全く向かない人。何しろ、あれだし」
瞬、荷物を抱えたまま、美しいとも言える蛇行軌道で通廊を歩いてくる。
字幕 『伏見瞬』
アイリーン「デスクワークとか補助作業とかじゃ、この上なく優秀な人なんだけどね。だから普段は赤嶺博士の助手みたいなことやってるの」
腕を組み、瞬を見送る赤嶺。
字幕 『EGS技術開発部総責任者 赤嶺修造』
玲 「じゃあ、実はとんでもなく優秀ってことですよね」
アイリーン「まあね。EGSの頭脳、赤嶺博士の助手が務まるくらいだから」
亜沙美「でも、何やらせてもちょっとばかりトロいんですよね。だからみんな、瞬ちゃんじゃなくて、ドンちゃんって呼んでるの」
アイリーン「マスコットみたいな扱い受けてるわね。間違いなくEGSの名物の1人よ」
通廊の角から現れた相馬が、瞬の前で立ち止まる。
相馬 「大丈夫か瞬ちゃん。手伝おうか?」
瞬 「だい、じょうぶ、だ」
管制員C「ダメですよボス、ドンちゃん甘やかしちゃ」
管制員B「ボスはドンちゃんには優しいんだから」
4人の横を通り過ぎる瞬。玲と目が合う。
眼鏡の奥の目は美しい。
4人に相馬も加わる。そこに赤嶺も近づいてくる。
赤嶺 「君が天童くんの忘れ形見か」
玲 「はい。天童玲です。宜しくお願いします」
赤嶺 「君の父親はいい科学者だった。訓練校での君の成績も聞いている。研究職に変わりたかったらいつでも言い給え」
建策 「ちょっと博士、ウチのルーキーを着任初日から引き抜かないで下さいよ」
赤嶺 「黙ってろ小僧。優秀な人間はウィングなんぞに乗るよりラボに来るべきだ」
建策 「博士には瞬ちゃんがいるでしょ?」
赤嶺 「あれはあれで優秀だが、とにかく手が足りん。小僧、後でローリングサンダーの新型弾を取りに来い」
建策 「いい加減、名前で呼んでくれません?」
アイリーンと亜沙美にドックを案内される玲。シップを見下ろす。眼下で檄を飛ばす平間、立ち働く若手たちが見える。
アイリーン「ガーディアン・シップ。EGS最大の航空母艦。ガーディアン・ウィングも格納。臨時の基地としての機能も備えてる。大気圏外航行も可能」
玲 「凄い…」
アイリーン「この巨体を飛ばすのが3基の重力波エンジン。あなたのお父様が残してくれた遺産よ」
玲、頷く。
後ろからそれを見守る建策と相馬。
相馬 「で、何でお前がここにいる?」
建策 「アイリーンさんにも言われましたよ。決まってるじゃないですか。玲ちゃんを和ませてリラックスして貰うためですよ。そう言うボスは? やっぱり可愛い子のことは気になるんですかあ?」
相馬 「お前、ああいうの好みか」
建策 「え~? ボス、玲ちゃんが可愛く見えないんですか? 審美眼を疑うなあ」
相馬 「蹴飛ばすぞ」
建策 「話を逸らさないで下さいよ。それともアイリーンさんか亜沙美ちゃん狙い? てっきりボスは瞬ちゃん一筋かと」
相馬、建策を蹴り飛ばす。
振り返って笑い出す女性3人。
アイリーン「落ち着かないのボス?」
相馬 「うん、まあ、な」
アイリーン「ボスが落ち着かない時って、大抵何かあるのよね」
亜沙美「野獣並みの感覚ですよね」
相馬 「人をケモノみたいに言うな」
建策 「まあボスが野生動物に近いことは否定しませんけどね。でも今日は玲ちゃんの初勤務の日ですよ。そんな記念すべき日に何か起こるなんてことが…」
警報が鳴り響く。
顔を見合わせる5人。
亜沙美「起こっちゃった」
建策 「玲ちゃん、やっぱ持ってるなあ」
相馬 「変な感心してる場合か。行くぞ!」
走り出す5人。通廊も行き交う隊員たちでたちまちごった返す。
真っ赤に燃え上がりながら飛来する隕石。
管制員Aの声「飛来物はK28宙域から亜光速にて飛来。大気圏に突入後、速度を落としながら東京郊外エリア146に落下中。このまま墜落すると思われます」
住宅街の外れに落ちる隕石。住民の大パニック。
管制員Aの声「南西区域で警戒に当たる正規部隊は防衛隊と協力の上、速やかに市民の避難誘導に当たって下さい。繰り返します。市民の避難誘導に当たって下さい」
一般隊員が避難誘導に当たり、防衛隊の戦車隊群が隕石を囲む。EGSの機動装甲隊がその背後につく。
隕石が変形を開始する。
中から出現する巨大な怪獣。
管制員Bの声「怪獣出現。繰り返します。怪獣出現。警戒態勢イエローからレッドに移行。警戒態勢レッドに移行」
作戦司令室に戻ってくる5人。
亜沙美はすぐさま管制司令卓につき、管制員Aからバトンタッチを受ける。
亜沙美「機動装甲車部隊は攻撃態勢スタンバイのまま待機。次の命令を待て」
陸奥 「怪獣は動いたか?」
管制員B「まだです…、いえ、動きました。南東に向かって動き出しました!」
陸奥 「わかった。亜沙美くん、戦車と装甲車に下がりながら弾幕を張るように伝えてくれ。怪獣の前進を遅らせろ」
亜沙美「了解。防衛隊戦車部隊及び機動装甲車部隊、後退しながら弾幕を張れ。繰り返す。後退しながら弾幕を張って、目標の前進を阻め」
陸奥 「天童くん、着任日が初出動になってしまったな。君にとっては初実戦でもあるか」
玲 「はい」
陸奥 「まあ、いずれは通らなくちゃならん道ではあるけどな。緊張してる?」
玲 「大丈夫です」
陸奥 「上等。操縦経験はあるんだよな?」
玲 「機動装甲車とイーグルは。両方ともAライセンスです」
陸奥 「空陸両方Aか。大したもんだ。しかしいきなりフォックスで出撃というのも酷だな。ケン、今日はフォックスはお前に任せる。マイクをバックアップしろ」
マイク・建策 「了解!」
陸奥 「天童くんはアイリーンとドラグーンに乗れ。ボスの指揮下に入って、ベンの補佐だ。ボス、それでいいか?」
相馬 「了解」
陸奥 「よし、EG=7、出動!」
全員 「はいっ!」
走り出すマイクと建策。建策、玲にガッツポーズをみせようとし、ちょうど入ってきた瞬とぶつかりかける。箱を2つ抱えていた瞬、大いによろめく。箱から中の品物(徹甲弾)が1個、こぼれ落ちる。
その瞬間、玲の視界の中の動きがスローモーションとなる。
玲 「え…?」
全てがスローモーションの中、動きの全く鈍くならない瞬の手が、徹甲弾を掴み、ひょいと箱に戻す。同時に視界が元に戻る。飛び出していくマイクと建策。
瞬 「危ないなあ」
建策 「ゴメン瞬ちゃん!」
陸奥 「瞬ちゃん、それは?」
瞬 「ローリングサンダーの新型炸裂徹甲弾です。赤嶺博士がケン隊員に取りに来るよう言ってたんですけど」
陸奥 「それは有難う」
相馬 「そのままドラグーンに運んでくれ瞬ちゃん」
瞬 「ええ? また僕も行くの?」
相馬 「いつもの話だろ。行くぞ」
玲 「予備隊員が同行するんですか?」
アイリーン「瞬ちゃんは特別ね。見てればわかるわ」
ベンが箱の1つを受け持つ。走り出す相馬、アイリーン、玲、ベン、そして瞬。
瞬 「落とさないでね。これ、中身、ペルシダー爆薬ね。ぶつけどころが悪いと破裂しちゃうらしい。作戦司令室くらいは吹っ飛ぶって」
玲、思わず瞬を振り返る。
ベン 「相変わらず危ない武器を作りますねえ、博士は」
相馬 「一回、あの爺さんとはちゃんと話をしなくちゃならんな」
亜沙美「頑張ってね玲!」
頷きながら走り出す玲。しかし、すぐ後ろを走る瞬を気にしながら。
玲 「(独白)さっきの、あれは、何…?」
瞬の先程の動き、フラッシュバック。
玲 「人間業じゃ、ない…?」
瞬 「(独白)まさか、気づかれた、かな?」
EGS本部の屋上が開く。せり上がってくるカタパルト。
字幕 『EGS第2戦闘機 サンダーフォックス』
建策 「サンダーフォックス、出ます!」
出撃するサンダーフォックス。
本部前の中庭地下から上がってくるカタパルト。
字幕 『EGS主力戦闘機 ガーディアンウィング』
マイク「ウィング発進!」
ウィングが先行し、フォックスが追う。
道路に面した壁が開き、特殊装甲車ランドドラグーンが出動する。タイヤとキャタピラが車体に格納され、地上10メートルを高速で走るドラグーン。操縦はベン。
字幕 『EGS地上戦闘用主力装甲車 ランドドラグーン』
怪獣、家屋やビルを破壊しながら進む。弾幕を張りながら後退する装甲車と一般隊員たち。
怪獣のあちこちから機械製の触手が飛び出し、障害となるビル群をなぎ倒していく。迎撃が集中し、足を止められそうになる。頭部触角から光線が炸裂、戦車と高起動装甲車が爆発し、付近の防衛隊員・一般隊員たちが吹き飛ばされる。
スクリーンに地図。赤いエリアにDの文字。そこに向かって進む青い矢印。手持ちの武装(スピットファイア)をチェックしている相馬。
亜沙美の声「装甲車7と12やられました! 損害多数!」
相馬 「マイク、ケン、急げ!」
マイク・ケンの声「了解!」
陸奥の声「このコースは初めてだな」
相馬 「そうですね。しかし向かっているのはいつものようにD地区です」
陸奥の声「141エリアの退避が上手く行ってない。人口密集地な上に、これまで襲来を受けたことがない地域だからな」
相馬 「143で食い止めます。マイク、ケン、聞こえたな?」
マイクの声「わかりました」
建策の声「143の住民の避難は?」
陸奥の声「進んでる。もうすぐ完了だそうだ。頼んだぞ」
相馬・マイク・建策「了解!」
玲、ドラグーンの後方格納室のベンチで、ガーディアンブラスターにカートリッジを挿し込む。
アイリーン「とんだ着任初日になったわね」
玲 「覚悟はしてました。早いか遅いかだけです。我ながら凄いタイミングだとは思いましたけど」
アイリーン「言えてる」
玲 「でも、隊長とボスの本当の姿がいち早く見られて良かったです」
作戦司令室で厳しい顔で指示を飛ばす陸奥。
ドラグーン助手席でライトニングキャノンに挿弾している相馬。厳しい横顔。
アイリーン「化けの皮があっさり剥がれちゃったわね2人とも」
玲 「でも珍しいですよね、地上から指揮を執るなんて。訓練学校では、コマンダーは上空から戦況の全体を眺めながら指揮するものって教わってました」
アイリーン「それは防衛隊か、さもなきゃ正規部隊の話ね。EG=7は全く別。だってボス、戦闘機に乗れないもの」
玲 「え…?」
アイリーン「ボスはね、極度の閉所恐怖症なの。戦闘機も潜航艇も無理。シップでさえ2時間乗ってるのが限界だわ」
玲 「戦闘機に、乗れない? よくそれで訓練学校卒業できましたね」
アイリーン「だからボスの成績はその年のEGS入隊者の最下位だった。でもね、他の教科は全部満点だったそうよ。ボスはね、努力だけでEGSに入り、努力だけで頭角を現し、血の滲むような努力だけで、EGSのトップメンバーに上り詰めたの。彼をここまでのし上げたのは、一体何だと思う?」
玲、首を振る。
アイリーン「憎しみ。ボスはね、20年前のあの日に、墜ちてきた隕石に家族を…、お姉さんを殺されてるの。それ以来、宇宙からの来訪者はボスにとって全部敵になった。ボスはお姉さんの仇を討つためだけに、EGS最強の戦士の1人になったのよ」
同じくベンチで、ローリングサンダーに炸裂徹甲弾を装填している瞬。アイリーンの「敵」という言葉に、手が止まる。
その姿を、玲の目が追っている。
マイク「攻撃開始!」
建策 「了解!」
ウィングとフォックスが攻撃を開始する。大口径ビームキャノンの威力は段違い。直撃に怪獣も後ずさりする。
怪獣も反撃。ウィングが光線を避け、フォックスは触手から逃げ回る。
それを遠くに眺める場所にドラグーンが停止する。タイヤとキャタピラが下り、着地。
装甲車が数台、前を固めている。防衛隊員・一般隊員たちが合流する。
相馬 「避難は完了したな?」
防衛隊員「完了してます!」
相馬 「よし、ローリングサンダーをセット。装弾手は瞬ちゃんな」
瞬 「またかい?」
相馬 「文句を言うな」
ボヤきながら既にローリングサンダーを台座にセットしている瞬。実に手際よい。組み上げたローリングサンダーをベンに譲る。
瞬 「はい、どうぞ」
ベン 「いつもどうも」
アイリーンが玲に目で「ね?」と合図。玲、納得して頷く。
相馬 「アイリーンはドラグーンキャノンを頼む。天童はベンの隣、ブラスターで援護」
アイリーン・玲「了解」
アイリーン、ドラグーン車内に戻る。ドラグーンの天井から、大口径の砲塔が現れる。
隊員A「ボス!」
隊員Aが泣きじゃくる看護師を連れてくる。
隊員A「避難が遅れた人がいます! 複数です!」
看護師「病室に、長期入院の子供たちが3人、取り残されてるんです。連絡ミスで…」
相馬 「何だと!」
前進してくる怪獣の手前に建物。玲、目を凝らす。窓の一つがスームアップ。
動けない子供2人を庇って抱く女の子(早瀬彩子)。
玲 「いました! 11階です!」
瞬 「いい目だなあ」
フォックスの攻撃。怪獣が反撃。触手が振り回され、建物――病院を直撃する。揺らぐ病院。壁にヒビが入る。悲鳴を上げる子供。それを庇う彩子。
相馬 「マイク! ケン! 攻撃の向きを変えろ! 建物に人がいる!」
ケンの声「マジっすか!」
マイクの声「了解!」
ウィングとフォックス、側面からの攻撃に切り替える。地上の戦車・装甲車部隊も。
攻撃に怯む怪獣。だが、進みは止まらない。徐々に病院に迫る。反撃の触手がまたしても病院を直撃。病院が崩れ始める。
彩子、子供たちを抱きかかえながら、怪獣を睨みつけている。
それを見つめる玲。両親の遺影がフラッシュバック。
天童の声「娘の生きていくこの世界を守るためのものであって欲しいと願っています」
相馬 「クソっ、止められないか!」
玲 「ボス、助けに行っちゃダメですか?」
スコープから目を離した相馬、驚いて玲を見る。そして病院も。
相馬 「5分。それ以上は無理だ。行けるか?」
玲 「了解です!」
走り出す玲。
相馬 「マイク、ケン! 5分だけ怪獣の足を止めろ! 天童が病院に向かった!」
瞬 「無茶するなあ、あの子」
ベン 「全くです」
瞬 「正義感の塊みたいな子だ」
ベン 「それも今日が初出動ですからね」
瞬 「間に合うと思う?」
ベン 「1人じゃ難しいと思います」
瞬 「僕もそう思う。ボス! 彼女を手伝ってくる!」
走り出す瞬。制止しようとした相馬の横で、ベンがローリングサンダーを撃ち始める。次いでドラグーンキャノンが吠える。
炸裂徹甲弾が怪獣の足に命中。威力は凄まじい。動きの止まったその胴体にキャノンの火線が炸裂する。ウィングとフォックスの攻撃も11階を避ける。
忌々しげに相馬もライトニングキャノンを撃ち始める。
病院階段を駆け上がる玲。震動に足を取られるが、それでも上り続ける。
10階の表示。
玲 「聞こえますか? EGSです!」
彩子 「こっちです!」
一際大きな震動。玲の側の壁が割れ、崩れ落ちていく。攻撃を食らいながらも迫る怪獣が見える。
階段も崩れ始める。ジャンプして乗り越える玲。
11階に突入する。肩で息をしながら探す玲。
部屋の1つに飛び込む。そこに彩子と2人の子供。
玲 「良かった! もう大丈夫だからね!」
彩子 「この子たちをお願いします!」
玲、子供2人を抱えるが、そこで愕然とする。車椅子、そして腕にチューブが刺さる彩子が、立って歩ける患者ではないことに気づいた。
玲 「あなたは…」
彩子 「私は無理です。歩けませんから。行って下さい」
玲 「何言ってるの! 勝手に諦めないで!」
そう言って腰をかがめ、
玲 「おぶさって!」
彩子 「無理です、3人も…」
玲 「早く! 絶対に助けるからね!」
彩子 「有難う、ございます」
玲 「天童玲よ。あなたは?」
彩子 「早瀬、彩子です」
玲 「よろしくね彩子ちゃん。さあ、行くわよ」
瞬 「いるのか?」
入り口から顔を出す瞬。
玲 「良かった。手伝って下さい! 歩けない子がいるんです!」
瞬、3人を抱える玲を見てぎょっとする。
瞬 「それは少々無茶じゃないか?」
玲 「無茶でも何でも、助けるんです! 手伝ってくれるんですかくれないんですか?」
瞬、目を見開き、そして小さく微笑む。やれやれと首を振る。
瞬 「驚いたな…」
近づこうとする瞬の前で、壁が崩れ、床が崩落する。
瞬、手を伸ばすが届かない。玲、抱えた2人とおぶった彩子ともども落下していく。子供2人はもちろん、流石に彩子も悲鳴を上げ、目を閉じる。
瞬、半ば反射的に、そして半ば意を決し、眼鏡を外し、跳ぶ。
同時に、目を閉じない玲の視界が、またしてもスローモーションを取り始める。
スローモーションで落ちる玲の前で、彼女を追って飛び降りる瞬の動きは早送りに近い。
その瞬の姿が、銀色の光に包まれる。
玲 「(独白)ウソ…」
銀色に輝く瞬の身体を軽装甲が覆う。プラズマン登場。
玲 「ううん、違う」
4人を抱き止め、瓦礫の落ちてこない場所に下ろす。
病院に触手を巻きつけた怪獣の目前に、光の柱が立つ。
怯む怪獣の真ん前に、巨大化したプラズマン出現。
怪獣、触手でプラズマンを攻撃。触手を避けながら拳を突き出すプラズマン。
怪獣、一気に後退する。
泣いている2人の子供。彩子を支えながら呆然と立ち尽くし、見上げる玲。正規部隊隊員3人が駆け寄ってくる。
隊員D「天童隊員! 大丈夫ですか!」
ドラグーンの隣、同じく呆然と見上げる相馬とベン。
アイリーンの声「鎧の巨人だわ」
相馬 「また出やがった…」
触手がプラズマンを縛る。触角から光線を放つ怪獣。
軽装甲に食らってよろめくプラズマン。触手に振り回され、隣のビルに叩きつけられる。ビルのウィンドウが粉々に砕け散る。
玲たちに降り注ぐガラスの雨。
身を挺してガラスの雨から玲たちを守るプラズマン。
見上げる玲。見下ろすプラズマン。
アイリーンの声「あの巨人、今、玲たちを庇わなかった?」
相馬 「マイク、ケン! 怪獣から攻撃しろ!」
マイク・建策「了解!」
アイリーンの声「あの様子じゃ、敵ではなさそうだけど」
相馬 「わかるかそんなこと。変な真似したら、纏めて片づける! アイリーン、ベン、撃ちまくれ!」
ウィングとフォックスの攻撃。地上からはドラグーンキャノンとローリングサンダーの火線。
よろめく怪獣、プラズマンから注意が逸れる。光線を放つ。
光線、2機をかすめ、ドラグーン近くのビルに命中。瓦礫が降り注ぐも攻撃の手は休めない相馬たち。
プラズマンの両腰から飛び立ったプラズマンカッター、触手を切断した後、空中で合体。怪獣の両手と首を切り落とす。
両手をクロスさせるプラズマン。迸るスパイラル光線。螺旋を描きながら怪獣に命中。
隣のビルに激突し、崩れ落ちる怪獣。そのまま動かなくなる。
ゆっくり立ち上がるプラズマン。
彩子をささえたまま、それを見上げる玲。背後では隊員Dが子供たちを抱えて走っていく。倒れていた1人をもう1人が抱え起こす。
玲が見上げる中、プラズマンが僅かに振り返る。
目が合う。
玲 「(独白)やっぱり、だ」
字幕 『つづく』
プラズマン第一話 『鎧の巨人』