理想の先輩女性

 私は、90才になる友達Oさんのアッシー君。

Oさんが好きだから、少しぐらい遠方と聞いても「ヘイ、喜んで!」と一つ返事で引き受ける。


Oさんは、二人の息子も結婚して家を出、最愛のご主人も5年前に他界。

今は気楽な一人暮らし。

友人の多いOさんは、一人暮らしになったのを機会に、みんなが集う家にリフォーム。

2階の3部屋は、広いワンルームに、1階は仏間の和室以外は全てキッチンに。

キッチンには、冷蔵庫、テレビ、コタツのみ。

みんなが集まるのはこのキッチンというか台所。

流し台がすぐそこで、お茶を入れたり料理をしたりと使い勝手がイイ。

たまには料理を教わることもある。

とにかく、ここは自由で居心地がいいのだ。


Oさんの実家は貧しく、文字も読めない年から女中奉公に出されたと言う苦労人だ。

「おかげさまで、料理、洗濯掃除、裁縫だけは人並み以上かな」明るく笑う。

その後、結婚。

結婚してからも、病院の配膳婦として定年まで勤め上げた働き者だ。

定年後、やっと、のんびりと趣味の、パッチワーク、カラオケなど楽しむ時間が持てたのだ。


私が尊敬するのは、Oさんの生き方。

とにかく、相手を喜ばすことが大好きなこと、面倒見が良いこと、気前が良いこと、欲が無いこと。

感心するのは、何か月もかかって縫いあげたパッチワークの大作でも、

ポン、と人にあげてしまう潔さ。

自分の大切にしているものでも、欲しい人があれば惜しげもなくあげる。

宇宙のシステムから言えば、あげる、もらう、も同じことは知っているけど、

自分の一番大事にしているものだけは絶対手放せない、というのが普通だ。

本当の、あげる、というのは、自分の命より大切なものでも求められたら、

惜しまず、差し出すということかもしれない。

まだまだ、物に執着心をもつ私なんぞ、Oさんの足元にも及ばない。

理想の先輩女性

理想の先輩女性

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-07-17

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