石鹸の件

 最近は石鹸を取り扱っている店が増えたと思う。石鹸だけを売っている専門店もあるし、ちょっと高級な物を売りにしているところも多い。出かけた先にそんな店があったりすると、入ってみたくなる。そして、色々試して、気に入ったものがあれば買ってしまうし、プレゼントとして贈ったり、頂いたりも多い。あってもそんなに困らないからプレゼントもしやすい。
 
 肌があまり強くない私は、低刺激の石鹸を愛用している。気に入っている点はというと、香りが強すぎず、肌にも優しい所だ。
 そんな愛すべき石鹸の歴史は古く、古代ローマ時代にまでさかのぼるらしい。そして、石鹸は人から人へつたわって今も進化している。昔もよく贈り物やお歳暮なんかでもらっていた。実用的でありがたかったが今ではもうそれだけではない。オシャレ女子のオシャレアイテムにまで昇格している。見た目もかわいいものや凝った作りのものが多い。たかが石鹸、されど石鹸なのである。

 一緒に住んでいるS氏という男がいる。彼は石鹸に対してあまり好意的ではない。液体であるボディーソープ派だ。もちろん人それぞれ、使用感の好みがあるので好きなものを使えばいいと思う。だがしかし、それだけでは終われない理由がある。
 
 彼が入浴するたびに私の石鹸は水浸しになっている。ふやけたゼリー状になってしまっているのだ。なんと無残な姿なのだろう。固さが取り柄なのに。見ていて悲しくなってしまう。そして、いい歳こいた男がどんな風呂の入り方をしているのかという疑問も残る。
 
 ケースごとしまえばいいのだけれど、負けたようでそれも嫌だ。そんな事を悶々と考えていたが、答えがでるわけもない。今夜あたり聞いてみようと思う。石鹸に何か怨みでもあるのかと。

石鹸の件

石鹸の件

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-06-12

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted